【現地発】痛恨ミスのドンナルンマ…それでも「ブッフォンの後継者」たりうる理由とは?
勝てる試合を取りこぼした直接の原因は、前半12分という早い時間帯に与えた信じられないオウンゴールだった。自陣右サイドで敵のハイプレスを受けて窮地に陥ったCBガブリエル・パレッタが苦し紛れに戻した強いバックパスを、左足で止めようとしたGKジャンルイジ・ドンナルンマがまさかのトラップミス。ボールはその左足にかすりもせず、そのままミラン・ゴールに飛び込んだ。
失点に繋がるようなGKの大きなミスを、イタリアでは「パペラ(あひる)」と呼ぶ。これは100年以上も前のイタリア代表GKがミスから失点した時、当時の代表監督が「あいつはあひるみたいに不格好だった」とコメントしたのが起源。今回のドンナルンマのミスも、典型的な「パペラ」だった。
バックパスをする場合には、GKがミスをしてもオウンゴールに繋がらないようにゴールの枠を外したところに送るのがセオリーだ。その意味でこの失点は、ゴールに向かって、しかも強いパスを送ったパレッタの責任も小さくない。ドンナルンマがボールに触らなかったため、記録上はパレッタのオウンゴールになってもいる。
しかしもちろん、最も大きな責任が簡単なトラップを空振りするという「パペラ」を演じたドンナルンマにあることは明らかだ。
勝利が義務づけられた試合で開始早々にゴールをプレゼントするというこのアクシデントが、セリエAにデビューしてまだ2年目で18歳になったばかりのGKにどれだけのショックをもたらしえるかは、容易に想像がつく。
良く言われることだが、GKにとって最も重要な資質は、体格(身長の高さや手の長さ)でもフィジカル能力(瞬発力、反応性、アジリティー)でもなく、犯したミスをすぐに忘れて気持ちを切り替えるリセット能力だという。
ひとつのミスにくよくよこだわっていると、次の守備機会に冷静沈着に対応できなくなる。そこでさらにミスを犯すというのは、最悪の展開だ。ミスを犯しても平然とし、自らの内面も外から見える振る舞いも変えず、何事もなかったようにプレーを続ける図太さは、偉大なGKになるうえで絶対に欠かせない資質なのだ。
今年2月にやっと18歳になったばかりであるにもかかわらず、ドンナルンマがミランの正GKとして絶対的な信頼を集め、イタリア代表においてすら先のオランダ戦(親善試合)で先発出場するなど、すでに誰もが認めるジャンルイジ・ブッフォンの後継者としての地位を確立している最大の理由も、まさにそこにある。
196センチ・90キロという体格、爆発的なパワーと反応性、そしてすぐれたアジリティーを備えたフィジカル能力の高さは、たしかに折り紙付きだ。セービングやデフレクティング、パンチング、ステップワークといった基本技術も高いレベルにある。
しかし、ポジショニング、読み、飛び出しの判断やタイミングといった戦術的な側面に関しては、まだまだ向上の余地があるというのが現在の評価だ。
にもかかわらず、ドンナルンマがマスコミだけでなくイタリア代表のテクニカルスタッフを含めた専門家の間でも絶対的な信頼を獲得しているのは、ミスに対する耐性の強さ、逆にスーパーセーブを決めた時にも感情を過度に昂ぶらせたりすることなく、落ち着きと冷静さを保ってプレーできる傑出したメンタルの強さとパーソナリティーがあるから。事実、このペスカーラ戦でも、失点直後を除けば動揺の表情すら見せることなく集中して戦い、数少ない守備機会を落ち着いてこなした。
