「男が日傘なんて」はもう古い…今夏も必須のメンズ日傘、実は50〜60代こそ積極派だった
容赦なく照りつける太陽、アスファルトから立ち上る熱気――。気象庁が今年から、最高気温40度以上の日を「酷暑日」と命名したが、今や日本の夏は、一歩間違えれば“命の危険”をはらむ災害級の暑さと化した。
そんな中、街中で着実に存在感を増しているのが、日傘を差して歩く男性たちの姿だ。「日傘男子」と聞くと、美意識の高いZ世代のトレンドかと思いがちだが、実際のところはどうなのか。男性たちの本音を探るべく、デイリー新潮では、30歳以上の男性200人を対象に、メンズの日傘事情に関するアンケートを実施。そこから浮かび上がってきたのは、意外な実態だった。
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ノー派の言い分とその裏にある心理
そもそも、どれくらいの割合の男性が、日傘を活用しているのだろうか。アンケートでは、「使っていない」という男性が84.3%と、全体の8割を超えて圧倒的多数を占めた。ただ、「使っている」と答えた男性も15.7%とおよそ6人に1人にのぼり、メンズの日傘が確実に浸透し始めていることが見てとれる。

まず、「ノー」派の言い分として最も多かったのは、「持ち歩くのが面倒」「邪魔」という声で、理由の35.5%を占めた。
「荷物になるので持ち歩かない」(55歳・千葉県)
「傘をさすのが面倒。片手がふさがる」(75歳・兵庫県)
「持ち歩くカバンに入らない」(68歳・東京都)
雨傘であれば、濡れたくないという明確な動機があるが、晴れている日にわざわざ荷物を増やすことには心理的な抵抗感が強いようだ。
次に多かったのは、「そもそも必要ない」、「車や帽子で十分」という意見(26.5%)だった。
「移動は自家用車を利用しているから」(49歳・岩手県)
「帽子でカバーしているから」(68歳・広島県)
「傘をさすより日陰を探す」(51歳・神奈川県)
そして3番目に多かったのが、「恥ずかしい」「周囲の目が気になる」などの理由だ(15.7%)。
「男がさしているイメージがなく、変な目で見られそう」(40歳・神奈川県)
「男は日に焼けるほうが男らしいし、見栄えもいいと思う」(77歳・埼玉県)
「日焼け止め程度で十分。自分から見ると神経質でみっともない」(43歳・福岡県)
少々の暑さには動じず、肌を焼いて精悍であることこそ男らしい――。こうした性別による思い込みや過去の美徳が、彼らを日傘から遠ざけている現実が浮き彫りになった。
日傘男子の主役は50〜60代のミドル層
一方の「イエス」派の意見を見てみると、近年の過酷な日本の夏の影響が、やはり大きいようだ。
日傘を使う理由で最多だったのは、「暑さや熱中症予防」で、イエス派の半数近く(48.4%)にあたる15人が挙げた。
「熱中症のリスクを減らせると思うから」(61歳・埼玉県)
「あまりの暑さに帽子もかぶれないから、雨傘を(晴雨兼用)日傘にした」(61歳・東京都)
「出社前に汗をかきたくないから」(43歳・大阪府)
次に多かったのが、紫外線対策や肌への意識を挙げる声(25.8%)だ。
「日焼けしたらシミになるから」(57歳・岐阜県)
「紫外線アレルギーがあるから」(68歳・広島県)
ちなみに、日傘を使っていると回答したうち、最も利用率が高かったのは50代、次いで30代、60代の順。50〜60代がなんとイエス派全体の8割を占めるとは、少々意外な結果だろうか。日傘は若者限定のトレンドかと思いきや、今回の回答者に限ってみれば、むしろ定年前後のミドル・シニア層のほうが積極的に取り入れているという実態がわかった。
一方で、70代以上での利用者は、たったの2人と少ない。年齢を重ねるほど健康リスクは高まるはずなのに……背景にはやはり「男が日傘なんて恥ずかしい」という意識が、この世代にはまだ色濃く残っていると考えられる。
恥ずかしがっているのは自分だけ
アンケートからは「男の日傘=恥ずかしい」という思い込みが、すでに過去のものになりかけていることも読み取れた。現在、日傘を使っていないと答えた多数派の自由回答を見ると、その大半が「自分は持ち歩くのが面倒だから使わないけれど、他人が使うのは自由だし、いいと思う」という寛容なスタンスだった。
「男でも使いたければそうすればいい。他人に批評されるものではない」(64歳・秋田県)
「性別にかかわらず、必要なら使えばよい」(69歳・宮城県)
「男の日傘は恥ずかしい」と頑なに否定的な拒絶派は、アンケート上ではごくひと握り。周囲の目を気にして炎天下でやせ我慢をしていても、実は恥ずかしがっているのは自分だけで、周囲はそこまで関心を持っていないことが明らかに。
過酷すぎる夏。見た目よりも命が最優先!
とはいえ、私たちの想像を超えるスピードで激化する急激な気候変動という抗えない現実を前にすれば、今年の夏も日傘の需要は高くなりそうだ。
「一昔前であれば数十年に一度のレベルだった、気温40度以上の猛暑。それが2020年以降は毎年のように国内で観測されるようになり、昨年はひと夏で、延べ30地点で40度以上を記録。かつて経験したことのない殺人的な暑さです。今年も“平年より暑くなる確率”が70%以上……と高い見込みです」
と教えてくれたのは気象予報士で防災士の佐藤圭一さんだ。
温暖化だけではない? 猛暑が加速する意外な原因
日本は昨年まで3年連続で記録的猛暑を記録している。その原因として専門家たちの間で語られるのは、よく聞く「地球温暖化」だけではなく、「大気がキレイになったこと」だというのは意外だ。
「日本を含めた世界各国で、ハイブリッド車の普及やクリーンな燃料へ転換が進んだことで、大気汚染の改善が進み、これまで排気ガスなどによって空気中に浮遊していた微粒子が減少しているのです。遮るものがなくなった太陽光がダイレクトに地上に降り注ぐことになり、結果として日射量や紫外線量が増加しているといわれています」(同前)
こうした熱中症の危険を伴う厳しい暑さを前にすれば、プライドを捨てて生存戦略に舵を切るのはある意味必然といえる。今回の調査で高い利用率を示した50代・60代のミドル層にとっては、体裁よりも、加齢に伴う体力の衰えや健康への危機感、移動の快適さといった日傘のメリットのほうが完全に勝っているのだ。
しかし、データをさらに読み解くと、まだ日傘を利用していない「ノー派」の中にも、これからのメンズ日傘市場の広がりを予感させる、意識の変化が起きていることがわかった――。
記事後編【ここ1年で急増した「男の日傘」、きっかけは大阪万博? 「もはや“シェルター”です」傘ソムリエが説く推奨カラー】では、メンズたちのリアルな意識の変化の裏側に迫るとともに、プロが教える失敗しない日傘の選びの極意を紹介する。
取材・文/荒木睦美
デイリー新潮編集部
