柚木麻子、小説『BUTTER』版権を新潮社から河出書房新社へ 決断した理由は「これは現時点での、私なりの最大限の意思表示」
作家の柚木麻子さんが22日、世界的ベストセラーとなった小説『BUTTER』の版権を、これまでの新潮社から今後は河出書房新社へ移すことを自身のInstagramで発表しました。
柚木さんは2008年、『フォーゲットミー、 ノットブルー』でオール讀物新人賞を受賞し、2010年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。2017年に発表した『BUTTER』は世界38か国以上で翻訳が決定し、2024年に刊行されたイギリス版(ポリー・バートン訳)は大手書店チェーン・Waterstonesが選ぶ「Book of the Year2024」や、「The British Book Awards 2025」(Debut Fiction 部門)などを受賞しています。
■柚木麻子さんのコメント【全文】
この度、拙著『BUTTER』の版権を、新潮社様から河出書房新社様へ移す決断をいたしました。ここに至るまで、双方の会社と協議を重ね、円満な合意の上での移動となっております。
新潮社様には長年にわたりお世話になり、作家として育てていただいたことに感謝しております。これまで支えてくださった各部署の皆様にも、心より御礼申し上げます。
今回の判断の背景には、昨年、作家仲間である深沢潮さんに著しい苦痛を与える記事が、彼女のデビュー元である新潮社発行の雑誌に掲載されたことがあります。その後の状況や、彼女にかかった負担、そして孤立について見聞きし、出版というシステムの在り方を深く考え直す契機の一つとなりました。
作家として、自分にできる具体的なアクションは何か。検討を重ねた結果、新潮社様における複数の版権のうち、一作を他社へ移動するという選択に至りました。これは現時点での、私なりの最大限の意思表示です。
また、『BUTTER』のオーサーズツアーで各国の出版関係者と対話するなかでも、差別や排除に対しどう立ち向かうべきか、自身の立場を厳しく問われる機会がありました。私はいつも迷い、間違えることが多い人間ですので、本件は、国内外の同業者や関係者に相談し、助言を受けながら決断したものです。
版権の移動に際しては、多大な調整が必要となり、関係者の皆様にご負担をおかけしたことをお詫び申し上げます。なお、同様の行動を他の書き手に強制する意図は一切なく、それぞれが置かれた状況下での判断が尊重されるべきだと考えております。
同時に、本作を愛してくださっている読者の皆様には、今回の移動後も変わらず作品を楽しんでいただけるよう、環境を整えてまいりますので、ご安心いただければ幸いです。
出版の世界が、読者や作り手が安心して表現に向き合い、多様な文化や価値観を受け止められる場所であることを切に願っております。
なお、本件に関しては、この声明文に記したことが全てであり、長期間の検討を経て出した結論です。そのため、個別のご質問や取材等はお受けいたしかねます。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
海外の版元の皆様、国内の書店員の皆様にもご負担をおかけすることをお詫び申し上げます。サイン等の対応が必要な際は、河出書房新社様を通じてご連絡いただけますと幸いです。
なによりも、深沢潮さんの今後の執筆活動が、健やかで安定した環境のもとで続けられることを、一人の作家、そして一人の友人として強く願っております。
