この記事をまとめると

■首都高は1964年の東京オリンピック開催に合わせて強引に作られた箇所がある

■渋滞が多い原因のひとつに狭い円に交通が集中する「放射環状型」という構造がある

■もし今から作り直したり改修したりするのであれば地下を利用するのが得策といえそうだ

首都高はなぜこんなにも複雑?

 現在の首都高が「ツギハギだらけの欠陥道路」に見えるのは、1964年開催の東京オリンピックに間に合わせるため、用地買収が不要な「川の上」や「公有地」を縫うように走らせた経緯があるからだ。

 だがもしもいま、1964年以前の世界にタイムスリップした誰かが東京都知事か、もしくは首都圏の道路づくりを統括する最高責任者に就任し、「渋滞や事故が起きにくい首都高」を新たに設計すると夢想するのであれば、その完成形はおおむね下記のようなものになるだろう。

 まず現在の首都高は、都心環状線(C1)という狭い円にすべての交通が集中する「放射環状型」であることが、問題の大きな要因になっている。これを夢想のうえでは、特定の中心を持たない「多重環状型」に置き換える。つまりC1(都心環状線)とC2(中央環状線)、外環道を最初からセットで建設し、都心部を通り抜けるだけのクルマを、物理的に都心部へ近づけない設計とするわけだ。

 そして特定の路線(たとえば現在の小菅・堀切JCT付近など)に交通が集中しないよう、並行するバイパス路線を最初から網目状に配置する「グリッド(格子)型」にすることも、提言されなければならないだろう。

 さらに、現在の首都高における主な渋滞発生要因のひとつになっている「右側合流」や、短い区間での激しい車線変更(織り込み)も、あらかじめ排除しておかなければならない。

 そのためには、まずはすべての合流と分岐を左側に統一し、追い越し車線の流れを止めずに済むようにする。そしてふたつの路線を交差させる際には、ひとつの地点にすべての負荷をかけるのではなく、合流・分岐地点を数キロにわたって分散させる「タンデム型ジャンクション」にすることも効果的であるはずだ。

 そしてさらに、もしも今から首都高を設計するのであれば、大深度地下(地下40m以深)をメインルートにしたいものである。大深度地下を戦略的に活用すれば、最短に近い直線的ルートを設定できるのみならず、一定の速度を維持しやすいフラットな路面を作ることができる。それにより「サグ渋滞」の発生を防止するのである。

 そのほか、もしも現代のデジタル技術を使って首都高をゼロベースで設計するのであれば、交通量に応じて中央分離帯を動かし、車線数を変動させデダイナミック・レーンの設置や、AIが管理する物流トラック専用レーンの設置なども視野に入ってくるはず。

昔と比べるとじつはかなり改修されている

 だが今は「もしも1964年以前の世界にタイムスリップしたら……」という前提で検討しているため、それらの採用はほぼ不可能。となれば、故障車や事故が起きた際に1車線を潰さずに済むよう、十分な幅の「緊急停車ゾーン」を、全線にわたって一定間隔で配置しておくことが、とりあえずの解となるだろうか。

 とはいえ実際はタイムスリップなどできないことなど自明の理であり、現在の首都高速は、現実のものとしてすでに存在してしまっている。それを破壊したうえでゼロベースから作り直すことは不可能であり、住民の立ち退きなども、そう簡単にできるものでは決してない。

 現在ある首都高速を活かしつつ、なおかつ住民の立ち退き等を最小限に抑えたうえで抜本的な改修を行うとしたら──難しいが、おおむね下記のようなプランとなるだろうか。

●「右側分岐」から「左側分岐」への大改造

 右側へ分岐していく構造をもつジャンクションでは、高架のさらに上を通す「フライング・ランプ」を設置し、左側へ誘導。これにより、追い越し車線を走る直進車のブレーキング発生を最大限抑止する。

●ピンポイントでの地下化

 箱崎JCTや江戸橋JCTのように短い距離で車線が複雑に交差し、ある方向の車両がほかの方向の交通流を横切るような走行が生じる区間(織り込み区間)は、首都高の大きなガンになっている。しかしながら、近隣住民に立ち退いてもらってJCTを作り直すというのも、なかなかできることではない。

 であるならば既存の高架の下、あるいは並行する道路の地下に「スルー専用のバイパス単線トンネル」を1本だけ掘るのはどうだろうか。

 たとえば江戸橋JCTであれば、C1の神田橋付近から江戸橋JCTの手前付近で地下に潜り、日本橋付近の地下を通って、6号向島線の箱崎JCT手前の高架に合流するアンダーパス型バイパスを構築する。この場合は、現在進められている首都高日本橋地下化プロジェクトのトンネル構造を活用・拡張する形で設計すれば、コストと工期の圧縮も期待できるだろう。

 また各所にあるサグに対しては、路面の「かさ上げ」による勾配修正を行いたいところだ。高架橋の柱を補強したうえで路面の厚みを変えることで、現状の急な勾配変化を、なだらかものへと修正するのである。

 そのほかでは、道路を建物構造の一部として組み込んでいる「虎ノ門ヒルズ」のような方式での道路上空利用権の活用と、2001年に施行された大深度法に基づき、地上の地権者に影響を与えない地下40m以深を活用し、既存ルートのバイパスを地下に逃がす大深度地下の優先利用あたりも、首都高抜本改修の大きなカギとなってくるだろう。

 とはいえこれらすべては夢想に過ぎず、大深度地下の優先利用に関しても、外環道東京区間のトンネル工事において東京都調布市で発生した陥没事故の影響で、事実上頓挫している。それゆえ首都高の抜本的な改修は、少なくとも筆者が現役のドライバーである今後20年間ぐらいは、残念ながら実現されないのだろう。

 しかしながら、近年行われたさまざまな改修や新設等により、首都高は30年ほど前と比べれば格段に「走りやすい都市高速」へと変貌している。あとは、それでもまだ各所に残っているガンをちびちびと、しかし確実に除去していければ、ここで夢想したような大規模改修は、とくに行う必要もないのかもしれない。