カリブ海に展開中の米空母ジェラルド・R・フォードのフライトデッキを歩く海兵隊員=1月15日/Seaman Paige Brown/USS Gerald R. Ford/US Navy

(CNN)米海軍の最大にして最強の空母、ジェラルド・R・フォードの艦内で、先月半ばに火災が発生した。

空母フォードは当時、約2週間前から始まった対イラン軍事作戦の一環として地中海東部に展開していた。洗濯室から火が出て、鎮火と片付け、再燃防止の処理に30時間かかり、乗組員約600人の寝台が損傷して使えなくなった。幸い重傷者は出なかったが、洗濯もできなくなった。

フォードは今週、ベトナム戦争以降で最も長期にわたる空母展開の記録を更新する。その乗組員たちを襲う試練は、今に始まったことではない。同艦は1月のマドゥロ・ベネズエラ大統領の拘束から対イラン攻撃の航空機射出まで、トランプ米大統領による介入主義外交の先頭に立ってきた。

トランプ氏は2024年大統領選で米国による過去の軍事介入を批判していたが、政権2期目の発足から1年のうちに軍事作戦は急増し、その中でフォードが中心的役割を果たしてきた。

昨年6月にバージニア州から出港し、まず計画通りに地中海からノルウェーへ向かったが、マドゥロ氏拘束作戦でカリブ海へ呼び戻された。その後、中東情勢の緊迫化を受けて支援に急行。途中、トイレ修理のため一時的に停止していた。

火災の2日後には艦載機の出撃再開が可能になり、修理のためギリシャへ向かった。さらにクロアチアへ移動し、トランプ氏がイランに予告した先週のインフラ攻撃に間に合うよう復帰した。

軍はこれまでに2回、同艦の派遣を正式に延長し、乗組員の家族らが心配を募らせている。

娘がフォードに乗務しているアミニ・オシアス氏は、CNNとのインタビューで「常に先が見えない状態だ」「夜もほとんど寝られない」と訴えた。

オシアス氏は今月、米軍戦闘機がイラン軍に撃墜されたことで、戦争の危険さを改めて痛感したという。「娘が空軍に入っていたら、あの日に撃ち落とされたかもしれない」

オシアス氏の娘は航空電気技師だという。十代の頃は海洋生物学に興味を持っていたが、世界最強レベルの艦船の乗組員となった。同氏はその過程を誇らしげに語る一方で、そもそも米国は今、軍事行動をとるべきなのだろうかと葛藤(かっとう)している。

「これは本当に私たちが戦うべきこと、子どもたちを送り出すべきことなのか」と、同氏は自問する。「親としての最終的な義務は、娘を守ることなのに」

約4500人の乗組員と数十機の戦術航空機を乗せたフォードの試練を見るにつけ、過去1年にわたる海軍アセットへの負担が将来にかけての軍務をどう位置付けることになるかという大局的な疑問が生じる。そこには、太平洋での米中戦争が含まれる可能性もある。

トイレの故障と洗濯室の火災はフォード特有の問題だが、長期派遣の空母は概してトラブルの種を抱えることが多い。部品が消耗するうえ、海上での修理は一時的な応急処置にすぎないからだ。航空機を着艦させるのに使う制動ケーブルがほつれ、船上システムに海水が浸入するなど、こまごまとした不具合が出始める。

海軍内部の議論に詳しい関係者らによれば、フォードのように出撃回数が多いと、事故の危険性はさらに高まる。

総工費130億ドル(約2兆円)をかけて建造された同艦は、米軍の原子力空母11隻の中で最も新しく、最先端の技術を搭載。海軍が持つ力の強さを、そして限界を示す象徴となっている。

海軍で26年間の経験を持つ元潜水艦士官のブレント・サドラー氏は「フォードがなければ、米軍は作戦上のプレゼンスを維持するだけでなく、敵に対して空母の優位性を保つことも難しかっただろう」との見方を示す。

家族への重圧

軍の現旧当局者は、フォードがイランとベネズエラの作戦に不可欠な役割を果たしたと強調する。

サドラー氏によれば、フォードに搭載された電磁式カタパルトのシステムは、小型のドローン(無人機)から大型航空機まであらゆる艦載機を射出することができ、司令官に幅広い選択肢を提供している。フォード以外の空母10隻にはない能力だ。

対イラン軍事作戦では同時に、米軍がフォードとその乗組員にどれほど依存しているかがあらわになった。

ベネズエラ沖に展開したフォードからは、トランプ氏がマドゥロ氏拘束作戦を承認してから短時間の枠内に、比較的少数の出撃が実行された。中東に移動した後は、イラン領空に入り航空機から爆撃するという戦法に沿って、同じパイロットたちがより頻繁(ひんぱん)に出撃した。

トランプ氏は7日、イランとの停戦合意を発表した。事情に詳しい関係者によると、発表前の時点でフォード司令部から乗組員に、来月には帰国できるとの知らせがあった。任務完了が視野に入ったとはいえ、長期展開による影響は後を引きがちだ。

北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官を務めた米退役海軍大将、ジェームズ・スタブリディス氏は「海軍の分析によれば、1回の空母派遣が6カ月を超えると、人材確保と士気の問題が加速する」と指摘した。フォードの展開は記録的な長期に及んでいるため、乗組員のストレスが懸念される。

ただし、フォードにはストレス軽減を任務とするユニークな乗組員がいる。

その名は「セージ」大佐。海軍が2023年、セラピー犬として実験的に導入してから、フォードにずっと乗務しているメスのラブラドール・レトリバーだ。軍や法執行機関にセラピー犬を紹介するNPO「マッツ・ウィズ・ア・ミッション」の報道担当者、タラ・フィッシャー氏によると、セージは「不安の兆候を見逃さず、ストレスを軽減し、有害な行動を制止する」よう訓練されている。

海軍内部の事情に詳しい複数の関係者によると、乗組員の「バーンアウト(燃え尽き症候群)」は海軍全体に共通する問題だ。航空部門に従事するパイロットや整備士らの離職が目立っているという。

CNNが入手したヘグセス米国防長官からの通知によると、同氏は先月、海軍戦闘攻撃飛行隊の離職率を改めて調査するよう指示を出した。海軍は優秀な人材を確保するため、航空士と飛行士に年間数万ドルのボーナスも支給している。

第二艦隊の司令官を務めたアンドリュー・ウッディー・ルイス海軍退役中将は「現時点の定着率は決して良くない」と述べ、展開期間や操縦資格の取得にかかる期間が不明確なまま長引く状況は神経をすり減らすと指摘。「家族にも本人にもストレスがかかる」と強調した。

同氏や海軍の元幹部らによれば、フォード司令部はバーンアウトの問題や家族のストレスに注意深く対応することが期待される。

ルイス氏自身、過去に6カ月以上の空母展開を11回経験した。「空母への乗務は祝福でもあり、呪いでもある」と語る。空母は多くの「戦略上、極めて重要な任務」に使われる一方、乗組員は否応なく出動し、延長されれば「何がどうなっているのか、さっぱり分からない期間が延々と続く」という呪いが待っているからだという。