打つ手を失った百戦錬磨エストラーダの「心」をへし折った 那須川天心に屈した敵陣営が証言した渾身パンチの“衝撃”「骨折のような痛みを覚えた」

写真拡大 (全2枚)

脇腹の痛みに悶絶するエストラーダ。彼に深いダメージを負わせたのは那須川が磨き抜いたボディだった(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 猛烈なペースで積み重ねてきた努力が実を結んだ。

 4月11日に東京の両国国技館で行われたWBC世界バンタム級挑戦者決定戦(12回戦)で、同級2位の那須川天心(帝拳)は、同級1位で、元世界2階級制覇王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)に9回TKO勝ち。約5か月ぶりの再起戦で快哉を叫んだ。

【画像】那須川天心、両国熱狂の再起戦 エストラーダとの激闘を厳選ショットで見る

 自ら「人生の岐路」と位置付け、連敗は許されない、まさに崖っぷちのリングで、那須川は、軽量級のレジェンドを手数で圧倒。今戦に向けてコンビを組んだ「GLOVESジム」の葛西裕一会長とともに、短期間で接近戦での強いショートパンチに磨き上げ、最終的に相手の「心」をへし折る形で白星を掴み取った。

 防戦一方となっていた9回終了後に、コーナーから立ち上がれずに自らが陣営に棄権を申し入れたエストラーダ。去り際に苦悶の表情で左わき腹を抑えていた百戦錬磨の重鎮を苦しめたのは、那須川の放った渾身のボディだった。

 試合後に救急搬送されたエストラーダに代わって、記者会見に登場したプロモーターのファン・エルナンデス氏は、「試合が止まる2ラウンド前から脇腹の痛みがあった。テンシンのパンチで骨折のような痛みを覚えていたようだ。呼吸するたびに痛みを伴う症状が出ていた。棄権は彼自身の判断だった」と証言。那須川が7回に繰り出していたボディによる生々しいダメージの大きさを語った。

 もっとも、那須川陣営には“狙い”があった。試合後の会見で「あのボディは、私も練習中で何度か落とされそうになった。その私も倒されそうになった成果が出たかなと思う」と語った葛西氏は、「左ボディは本当に磨いてきたんで」とエストラーダを倒せるという自信を明かした。

 では、当人の手応えはいかほどだったのか。「なんとなく腹に入ったなという感じはった」と語る那須川は、「(エストラーダは)誤魔化し方が巧かった。狙っている感じもずっとあって、不用意には行けなかった。でも、やっぱ前の手をしっかりジャブを使って、自分の距離を作っていくっていうのはずっとできた」と回想。そして、試合が終わった瞬間の胸中を打ち明けている。

「その前のラウンドか。もう相手が『なんか打つ手がなくなってるな』っていうのは思ったし、セコンドからも、『もう行け』って言われていたので。いくところだなっていうのは思ってたところ、止まったっていうタイミングだった。自分の中では、『おお、マジか』っていうのもあったんですけど。でも、本当、技術で勝つことができた。運じゃないといいますか、自分のやってきたことでしっかり勝ったっていうのが自信になった」

 エストラーダ陣営に「これ以上続けるのは止めよう」と決断させた那須川のパフォーマンス。昨年11月の井上拓真戦から苦心し続けた神童が徹底的に磨き上げ、自身に叩き込んだ“技術”が世界王者を沈めた。

[取材・文/構成:羽澄凜太郎=ココカラネクスト編集部]