4月11日は25℃以上の「夏日」の地点が多くなる見込みだ。気象庁は「今夏も平年より暑くなる」と予測する中、注目されるのは昨夏、都道府県庁所在地で唯一「猛暑日ゼロ」だった地域や、100年以上「猛暑日ゼロ」の東京からも近い海の街だ。気象キャスターの佐藤圭一さんが灼熱の日本列島で国民が「命を守るためにすべきこと」とともに「意外な涼しい場所」をレポートする――。
日本気象協会のニュースリリースより

日本は3年連続で「観測史上最も暑い夏」を記録している。そして気象庁は、今年もなお「平年より暑くなる」と予測した。もはや「異常気象」という言葉が異常でなくなったこの国で、我々はどうやってこの夏を生き延びるのか。

気象キャスターとしてニュースの最前線に立ち続けてきた筆者が、夏の見通しを読み解き、「意外な涼しい場所」と「命を守るためにすべきこと」をお伝えする。

■「確率60%」気象庁が見せた“強い自信”

今年の夏は、いったいどれほど暑くなるのか。その答えは、気象庁が2月に発表した「夏の天候見通し」の中ですでに示されていた。

東日本・西日本で気温が……

・平年より高くなる確率は60%
・低くなる確率は10%
・平年並みが30%

この数字の「異常さ」に、どれだけの人が気づいているだろうか。

気象庁の長期予報は「高い40%、並30%、低い30%」のように、はっきりしない数字に収まることが多い。ところが今回は、2月の段階で高い60%、低い10%とここまで明確に差をつけてきた。これは気象庁が強い自信を持っていることの表れと読み取ることができる。

もちろん、この数字は平年より高くなる確率であって、暑さの程度を示したものではない。しかし、予測に明確な偏りが出た年は、実際の結果が極端にその方向へ振れやすい。つまり、今年もまた「記録的猛暑」に見舞われる可能性は十分にある。

■気象庁が打ち出す60%という数字の意味

ここで、去年の話をしなければならない。実は去年の夏も、気象庁は天候見通しで「気温が高くなる確率70%」という、今年以上に踏み込んだ予測を出していた。70%は通常の長期予報ではまず見かけない数字だ。

ところが、それほどの警戒をしていた気象庁ですら、会見では「記録的な猛暑になる可能性は低い」と発言していた。

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正直に言うと、私自身もこの見解に異論はなかった。

気象観測の歴史は100年以上に及ぶ。その中で、過去最高気温を3年連続で更新するなど、確率的に見てもまず起こりえない。

ところが実際は想定を軽々と超えてきた。去年の夏はこれまでの記録がかすむほどの猛暑となってしまったのだ。そして今年も、60%という強い数字が出ている。記録的猛暑が続く恐れがあることを、我々は覚悟しなければならない。

■「エルニーニョ=冷夏」なのに猛暑の見込み

今年の夏も猛暑になりそうだと伝えると「温暖化が進んでいるのだから当たり前だろう」という反応が返ってくる。そう片付けたくなる気持ちはわかるが、話はそれほど単純ではない。

温暖化とは数十年単位で平均して見えてくる傾向であって、数年単位の暑さとは別物だ。去年の夏の平均気温が平年比「+2.36℃」だったという事実は、温暖化だけでは説明がつかず、その年特有の要因が重なっている。

今年、温暖化以外の猛暑の要因として挙げられているのがエルニーニョ現象だ。エルニーニョ現象とは、赤道付近の海面水温の分布で決まるもので、世界中の天候に影響を及ぼす。日本では一般に「冷夏をもたらす」とされてきた。だが今年は、エルニーニョ現象の発生が予測されているにもかかわらず、猛暑が見込まれている。

気候変動でエルニーニョの常識が崩れたのかとも思ったが、まだそこまでは言えないようだ。今年の夏はエルニーニョが発生して間もない「初期段階」にあたる。そして実は、エルニーニョ現象の「発生直後」は、冷夏ではなく逆に猛暑になりやすいという厄介な特性を持っているのだ。記録的猛暑が始まった2023年の夏も、まさにエルニーニョ初期のタイミングだった。今年はその2023年と似た状況になりつつある。

画像=プレスリリースより

猛暑日ゼロだった唯一の県庁所在地

気象庁はこれまで、25℃以上を「夏日」、30℃以上を「真夏日」、35℃以上を「猛暑日」と分類してきた。だが去年、全国のべ30地点で40℃以上を観測する事態となり、ついに今年から「40℃以上」の新名称を制定することが決まった。

「40℃時代」を迎えようとしている今、猛暑日(35℃以上)はもはや、全国どこにいても逃れられない。去年のデータを見れば一目瞭然だ。

名古屋52日、大阪45日、東京29日。涼しいイメージの長野でさえ28日、札幌でも2日を記録した。そしてとくに過酷だったのが京都の61日。約2カ月にわたって35℃以上の猛暑となったのだ。

ところが、この灼熱の日本列島で、都道府県庁所在地として唯一「猛暑日ゼロ」だった街がある。

沖縄県・那覇だ。

「真夏に沖縄に行ったら、東京より涼しかった」

そんな体験談を聞いたことがあるかもしれない。それは嘘ではない。沖縄は年間の平均気温こそ高いが、35℃を超えるような極端な暑さにはなりにくい。四方を海に囲まれ、海風が絶えず吹き込む。起伏の小さい地形のためフェーン現象が起きづらく、ヒートアイランドの影響も限定的だ。環境省がかつて公開した「2100年の天気予報」でも、8月は北海道から九州まですべて40℃以上の気温が並ぶ中、唯一那覇だけが30℃台となっている。

「沖縄の夏は過ごしやすい」そんな常識が広まるのも、時間の問題かもしれない。

画像=プレスリリースより

■関東の“避暑の切り札”千葉・勝浦

とはいえ、関東で働くビジネスパーソンが「涼しいから」と沖縄へ移住するわけにはいかない。そこで近年、脚光を浴びているのが千葉・勝浦だ。

「過去100年間、一度も猛暑日を記録していない」という驚異的な実績がメディアで取り上げられ、移住相談者が急増しているという。

なぜ勝浦だけが涼しいのか。専門家によると、勝浦近海は水深が深く海水温が低いため、そこから吹き込む海風が天然のクーラーとして機能しているのだという。

関東で猛暑日を記録したことがない地点は、勝浦だけではない。群馬の草津や栃木の奥日光など、標高の高い地域であれば35℃を超えたことがない場所はある。ただ、冬になれば朝はマイナス10℃、日中でも氷点下という厳しい寒さが待っている。勝浦は違う。冬の平均気温は東京よりも高く、まさに関東のオアシスといえる。

だが、気象の観点で弱点がないかと聞かれれば、そうとも言い切れない。最大のリスクは「台風」だ。太平洋に直接面する勝浦は、進路次第では台風が勢力を維持したまま直撃する。頻度こそ高くないものの、このリスクを受け入れられるかどうかは考えておく必要があるだろう。

■移住できない人が夏本番前にやるべきこと

避暑地の話をしてきたが、現実問題として、仕事や家庭の事情を抱えた多くの人は、今いる場所でこの夏を乗り切るしかない。

画像=プレスリリースより。「暑熱順化ポイントマニュアル」ダウンロードページはこちら

毎年のように異常気象の最前線で原稿を読み続けてきた私が、熱中症から命を守るために最も重要なことを一つだけ伝えたい。

「エアコンの電源を入れて動作確認をすること」だ。

あまりに月並みだが、意外と見落とされている。近年、かつてない猛暑により真夏のピーク時にエアコンが突然故障する事態が全国で頻発している。

40℃近い気温の中でエアコンが止まれば、命に関わる。しかも真夏に修理を依頼しても業者は手一杯で、復旧まで何日も待たされる。

断っておくが、私は家電メーカーの回し者ではない。ただ、壊れかけのエアコンを「まだ動くから」と使い続けるのは、命だけでなく財布にとってもリスクが大きい。

私の友人は昨夏、エアコンが故障して1週間ホテル暮らしを強いられた。インバウンド需要で高騰した宿泊費は、合計20万円を超えたという。それなら、壊れる前に買い替えたほうがいい。最新のエアコンは省エネ性能が上がっており、電気代の削減効果も大きい。命も財布も守る、堅実な選択かもしれないのだ。

画像=プレスリリースより

「過去最高」「観測史上初」という言葉がニュースで繰り返される今、「これまで大丈夫だったから今年も乗り切れるだろう」という過去の経験則は、もはや通用しない。

近年の暑さは「災害級の猛暑」と呼ばれている。大雨や台風と同じように、猛暑からも涼しい環境へ「避難する」という意識を持ってほしい。

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佐藤 圭一(さとう・けいいち)
気象キャスター、リポーター
長野県岡谷市出身。学生時代、アナウンサーを志すも100社以上から不採用通知を受け取る。それでも粘り強く挑戦を続け、ローカル局でキャリアをスタート。その後、文化放送の報道記者・リポーターとして国会や首相官邸、災害現場など幅広い取材を経験。現在は気象予報士としての資格を生かし全国ネットのテレビ局やラジオ局で気象キャスターとして活動している。
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(気象キャスター、リポーター 佐藤 圭一)