(※写真はイメージです/PIXTA)

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近年急速に普及が進む「キャッシュレス決済」。外出時に財布を持たないという人も多いのではないでしょうか。キャッシュレス決済では、支払うたびにポイントが貯まる仕組みが一般的ですが、この“お得”の裏側には、企業の思惑が潜んでいるかもしれません……。12万部超えのベストセラー『節約の王道』の著者である林望氏の新刊『節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由』(朝日新聞出版)より、「ポイント還元」に隠された裏事情を紐解きます。

急速に普及が進む「キャッシュレス化」に違和感

今や、老いも若きも、男も女も、まるで強迫観念のようにキャッシュレスキャッシュレスと大いに盛り上がっているように見えます。が、果たして本当にそれが我々ユーザーのためになっているのだろうか? ということを、実は誰も考えていないのではないかと私は思うのです。

経済産業省によると、2023年のキャッシュレス決済は全体の39.3%(126.7兆円)。その内訳は、クレジットカードが83.5%、デビットカードが2.9%、電子マネーが5.1%、コード決済が8.6%なんだそうです。

お店によってはクレジットカードか電子マネーでしか支払えない、現金が使えない、そんなところもあります。そんな店のありようを見ると、まるで、「キャッシュレスにあらずんば人にあらず」とでも言いたいかのようです。

しかし、本当にこのまま、キャッシュレス化が進んでいっていいのでしょうか? 世間の流れに合わせてあなたも私もキャッシュレス……それでいいのでしょうか?

大事なことは自分の頭で考えること。お金のあれこれを人任せにしないこと。私がこれまで大事にしてきた生き方です。お金ほど大事なものはなかなかありません。だからこそ、自分の頭でしっかり考えたい。今だからこそ、そう思うのです。

“都会の都合”で置き去りにされる地方

昔ながらの現金扱いでやっている、そういう環境は今でもけっこう多いと思います。少し街から外れた場所、漁業や農業の世界、こうしたところでは、現金取引どころか、実質的に物々交換さえもまだ行われているわけです。

キャッシュレスについては、大都市だけを見てこれがすべてだと思うのは、非常に偏った話ではないか、と思います。

たとえば、自動車の問題なども同じではないでしょうか。

地方で「カーシェアリング」は通用しない

「自動車なんて持たなくても大丈夫ですよ」「カーシェアで十分」などというのが、今どきの流行りのようになっていますが、なーに、山の中に行けばカーシェアリングなどありはしません。

自動車という移動手段が必要なのは、交通が不便な場所に住んでいる人で、じつは都会の人は自動車などなくても困らないわけです。結局のところ、そういうことだけを観察してみても、都市部の人たちだけの都合で国が動いていくのが、私は大いに問題だと思っています。

キャッシュレスも、カーシェアリングも、それを推し進めたい人が都会でどんどん先走っていくと、地方との差がますます極端になっていく……そして、若い人と高齢者との環境が、ほとんどお互いに理解できないほど違ってきてしまうというのも、この十年来の一つの顕著な動きではないでしょうか。

そうしたことを考えると、キャッシュレス環境という風潮についても、「ここでもう一度冷静になって考えてみたらどうだ?」と思うわけです。

GAFAなどの大企業、そのオーナーの大金持ちなどのやり方に引っ張られて、誰も彼もがデジタル環境で物事を進めていくことに疑いを抱かないのが、間違った考えだというのが私の基本にあります。

キャッシュレスのメリットは?

キャッシュレスになったからといって、さて何か得をすることがあるのだろうか? 「いや、ポイントが貯まります」と、人は言うけれど、それ、果たして本当に得なのか。

たとえば、出前サービス。あれも、考えてみれば、お金がかかるわけです。盛んにテレビでコマーシャルをしている、ということは要するに莫大な費用をかけて宣伝してるわけですね。それでも立ち行けるということは、それなりのお金を取って儲けているからにほかなりません。

街の中華屋さんなら、2本の足で歩いて行って食べればいい。Uber Eatsなぞを頼む必要があろうか、と。

蕎麦店とか中華料理店なんかでも、昔はみな出前をやっていたけれど、別にお金は取らなかった。サービスの一環として店の人が自転車などで配達してきたものです。

そういう時代よりも、Uber Eatsがお金を取って配達してくることのほうが、ほんとうにいい世の中なのだろうか? と、冷静になって考えてみたらどうかと思うわけです。

ポイント還元」に潜むワナ

ポイントを還元します、というのも要注意です。「今この会員になると3,000ポイントおまけがつきます」といった場合、彼らはその3,000ポイントを損したままにしておきますか? そんなわけはないでしょう、商売なのですから。

3,000ポイントのおまけを出したら、その分の倍も3倍も先方は儲かるようにできているわけです。だから、「ポイントをあげます」というものは、いわば「誘い水」というか、「罠の餌」のようなものだと思って、私は一切いただかない主義です。

旅行する際に私は楽天トラベルを使っています。もちろんこれでも正規の料金よりは安く泊まれることが多いように思います。が、そうしているのは、ひとえにパソコンで簡単に予約が済ませられるからです。

ところが、その予約サイトを見ていると「1万6,000円の部屋を今なら1万2,000円で泊まれる方法があります」なんていう惹句(じゃっく)が出てきたりする。

「〇〇会員になると、入会時に4,000ポイントが付くので1万2,000円で泊まれます」というような仕掛けになっているのですが、その甘い言葉に乗って会員になったら百年目、そのサイトに囲い込まれてしまう道理で、私は、かかる「囲い込みの罠」は一切無視しています。

林 望
作家・書誌学者