こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した銀河「NGC 1705」。がか座の方向、地球から約1700万光年先にあります。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡のWFC3(広視野カメラ3)で観測した矮小不規則銀河「NGC 1705」(Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Chandar)】

NGC 1705は「矮小不規則銀河」に分類される銀河です。矮小銀河とは、天の川銀河などと比べて規模がずっと小さく、比較的少数の恒星が集まってできている銀河を指します。そのなかでも、星やガスが明確な構造を持たず不規則に散らばっているものが、矮小不規則銀河と呼ばれています。


ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、矮小不規則銀河には水素やヘリウムよりも重い元素(天文学では重元素と呼ばれます)をほとんど含んでいない傾向がみられます。星の内部での核融合反応や超新星爆発などによって重元素が生成・蓄積される前の状態を保っているNGC 1705のような銀河は、初期の宇宙に存在した古い銀河によく似ていると考えられています。


2023年以降、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測によって初期宇宙の銀河が次々と発見されていますが、それらが放つ紫外線の特徴を分析する際、現在の宇宙に存在する比較対象として「NGC 1705」が引き合いに出されることがあります。銀河がどのように形成され進化してきたのかを知る上で、NGC 1705は貴重な手がかりを与えてくれる存在なのです。


爆発的な星形成活動の痕跡が残る

全体的に不規則な形をしているNGC 1705ですが、その中心部では現在観測されている状態から2600万〜3100万年前という比較的最近の時代に、爆発的に星が形成される「スターバースト」と呼ばれる激しい活動が起きた形跡がみられます。


冒頭の画像を見ると、若く高温の青い星々はNGC 1705の中心付近に集中していて、その周囲により古く低温の赤い星々が広がっている様子がわかります。このように、新旧の星が混在していて星形成の歴史が色濃く刻まれているという特徴も、この銀河が天文学者たちの注目を集める理由のひとつです。


機器の交換でより詳細な観測が可能に

この鮮やかな画像は、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「WFC3(広視野カメラ3)」で取得したデータを使って作成されました。使用されたデータは、星々や星団に加えて、若い大質量星の放射する紫外線によって電離した水素ガスが赤色の光を放つHII(エイチツー)領域の分布を調べるために取得されたものです。


ハッブル宇宙望遠鏡がNGC 1705を観測したのは、これが初めてではありません。1999年から2000年にかけて、当時搭載されていた「WFPC2(広視野惑星カメラ2)」を使って中心部が観測されたことがあります。その後、スペースシャトルによる2009年のサービスミッションでWFPC2が新型のWFC3へと交換されたことで、以前よりもさらに詳細で豊かなNGC 1705の姿を捉えることができるようになったのです。


冒頭の画像はESAから2022年1月31日付で公開されました。


本記事は2022年2月2日公開の記事を再構成したものです。


関連画像・映像

【▲ HST(ハッブル宇宙望遠鏡)のWFPC2(広視野惑星カメラ2)で観測した矮小不規則銀河「NGC 1705」の中心部(Credit: NASA, ESA and the Hubble Heritage Team STScI/AURA)】

 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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