当然その誘いに乗る気はまったく起こらず、丁重にお断りした佐竹さんでしたが、それからも旦那さんは馴れ馴れしく声をかけてきます。

◆妻に隠れて女性に声をかける夫

「旦那さんが話しかけてくるときは必ず奥さんがいないときで、『ウェアを見に行かないか』とか『コーヒーのおいしいお店がある』とか、ジムの外で会う提案ばかりするのですよね。でも奥さんとふたりのときは絶対にほかの女性とべたべたしないし、そんな使い分けみたいなのがわかってくると余計に恐怖でした」

 思い切って親しい会員さんに打ち明けると、「ああ、あの旦那さん前からそんな感じよ。奥さんに隠れて独身の女の人に声をかけているみたい」と返されてまた驚きました。

 ほかにも、20代の子は「入会したすぐのときに旦那さんが寄ってきて、マシンの使い方を教えてあげると言いながら腕とか触られて気持ち悪かった」と言うのも聞いて、ぞっとしたそうです。

 夫のそんな振る舞いで、一部の会員さんからは相当に嫌われているのが実際だとわかり、表面しか見ていなかった自分に気がついたという佐竹さん。

「会員さんのそういう裏話とか、それまで全然したことがなくて。当たり障りない会話ばかりみんなとしていたから、裏事情みたいなものを話す機会がなかったのですよね」

◆妻の衝撃発言に耳を疑う

 知っていればタオルも受け取らなかったのに、と悔しそうな声で話す佐竹さんは、これ以上ストレスを感じたくないと思い勇気を出して奥さんに話しかけます。

「さすがに『誘われて困っています』とは言えなくて、『この間、お茶に行くって話が出て』と言いました。自分以外の、しかもジムでよく会う人とふたりでお茶とか絶対に止めるだろうと思っていたのですが、さらっと『あら、それくらい行けばいいじゃない』と返されて……」

 夫が女性会員に声をかけていることは知っており、みずから別の女性と食事に行ったエピソードを口にする奥さんの様子に、「普通じゃないですよね」と佐竹さんは声をひそめました。

◆「夫がモテるって気持ちいい」

「それで、『旦那さんはかっこいいし、ほかの人と会われていたら浮気とか心配になりませんか』って言いました。『私だったら別の人とふたりでお茶とか、無理だな』って。これなら私にその気がないことが奥さんにもわかるかなと思ったのですが」

 すると、奥さんは「夫がモテるって、気持ちいいじゃない。私はそれを見ていたいの」と笑顔を浮かべたそうで、それを見た佐竹さんは金輪際仲良くするのはやめようと会話を諦め、その場を離れます。

 それからは旦那さんに声をかけられても無視を通し、奥さんとも挨拶だけかわして近づかないようにしたら、いつの間にか誘いはやんでいました。

「怖いですよね、旦那の浮気を放置するってどんな精神なのだろうと思います。もしそれで旦那が別の女性に本気になったら、この人どうするのかなって」

◆よく見ると孤立している夫婦

「被害」がなくなり佐竹さんは以前と変わらずジム通いを続けていますが、こうして裏の事情を知ってからふたりをよく見ると、一緒に食事や飲み会を楽しむような付き合いをしている会員さんはおらず、孤立していることがわかったそうです。

「こっちだって迷惑ですよね、一方的に近寄られて。そういう被害を考えないのも、異常だなと思いました」

 ほかの会員さんとの関わり方は、度が過ぎればジムで問題視される可能性があり、「いつか注意されて恥をかきそう」と佐竹さんは小声で話していました。

<文/ひろたかおり>

【ひろたかおり】
恋愛全般・不倫・モラハラ・離婚など男女のさまざまな愛の形を取材してきたライター。男性心理も得意。女性メディアにて多数のコラムを寄稿している。著書に『不倫の清算』(主婦の友社)がある。