府中刑務所

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売り上げは右肩上がり

 わが国の製造業(鉱業も含む)の実力を示すモノサシ「鉱工業指数」は、長らく低迷を続けている。人口減少が進んでいるのだから仕方がないともいえるが、一方でそれを尻目に、小さいながらも市場を広げている“業界”もある。塀の向こう側で作られている刑務作業製品だ。全国で開催される「矯正展」で売られる品物と聞けば分かりやすいだろう。懲役に服している受刑者が作っているものだ。

【写真を見る】330円で「ムショメシ」が食べられる! 大人気の刑務作業製品

 そもそもは、受刑者の規律ある就業態度の習得や集中力の育成が主眼なので、利益が目的ではない。しかし、タンスからアクセサリーや食品まで、品目はバラエティーに富んでいる。実際の売れ行きはどうか。

府中刑務所

 公益社団法人「矯正協会」のデータによると、2021年度が5億600万円、22年度5億9900万円、23年度7億5600万円、24年度8億1200万円。

 対前年度比20%超の増加を記録する年もあり、文字通り右肩上がりだ。また、年に1度、全国の刑務作業製品を集めて販売する「全国矯正展」は、3年連続で来場者が増えており、昨年12月、東京国際フォーラムで開かれた同展には3万7600人が訪れた。

330円の「ムショメシ」

 法務省の矯正局成人矯正課作業係に聞いてみる。

「人気の製品がありまして、例えば横須賀刑務所で作られる石鹸『ブルースティック』(3本500円)は、早くに売り切れる。また、『横浜刑務所で作ったパスタ』(330円)も人気です。刑務所の食事はおいしくないとの言われ方をすることもありますが、これは実際に所内で出す食事にも使われています」(担当者)

 受刑者でないと食べられない「ムショメシ」の材料も売られているのだ。

大阪ならではの「段通」

 作業製品は刑務所によって特徴があり、その土地ならではの伝統工芸品もある。例えば、大阪刑務所では厚手のカーペットのような「段通(だんつう)」が作られている。江戸時代には海外に輸出されていた高級な敷物だ。

「もともと、大阪府堺市では『堺段通』として知られており、府の無形文化財となっていました。しかし、継承者がおらず、技術が途絶えかけていたのです。それを知った大阪刑務所が技術を引き継いで、所内で作れるようになったのです」(前出の担当者)

 作り方をマスターするには、相当な時間が必要だというから、長期の受刑者が制作を担うことになる。

 なぜ、刑務作業製品が人気なのだろうか。

「丁寧に作った製品を少し安く、が大きな理由でしょう。また、函館少年刑務所で作っている前掛け、小袋など繊維製品のマル獄シリーズなどは、ブランド品に劣らぬ品質を誇るものもあるのです」(同)

 言うまでもないが全て国産品。日本の「ものづくり」のスピリットが刑務所に残っていたというわけか。

「週刊新潮」2026年1月29日号 掲載