この記事をまとめると

■軽BEVに続々と新車が登場し注目を浴びている

■軽自動車はリセールの高さが売りのひとつだが軽BEVはリセールがイマイチだ

■4年の保有期間が必要なほか充電設備の用意も必要なので敷居が高いことも課題だ

軽BEVがいよいよ本格的に注目され始めた

 ジャパンモビリティショー2025(以下JMS2025)では、中国BYDオートが世界初公開した、日本の軽自動車規格となるBEV、ラッコが話題を呼んだ。軽乗用車規格BEVではすでに日産サクラとホンダN-ONE e:が発売されており、同じくJMS2025にスズキが出品した軽乗用車規格BEVとなるコンセプトカー、ビジョン e-Skyベースの市販モデルが2026年度内に量産開始予定となっている。

 世の中的に、軽自動車規格BEVが注目を浴びてきているのだが、キャラクターや性能は別として、じつは大きな課題が横たわっている。それは、再販価値がICE(内燃機関)の軽自動車ほど高くはないということである。

 軽自動車は「下駄がわりのクルマ」などともいわれているので、再販価値を期待しない人も多いかもしれない。しかし、いわゆるリッターカーと呼ばれる、軽自動車に一番近い登録車ともいわれるカテゴリーのハッチバック車に比べれば、再販価値が長期的に残るのである。

 2011年に初代ホンダN-BOXがデビューしているが、デビュー年である2011年式では標準的なコンディションならば、15年が経過しようとしているいまでも70万円前後で中古車として販売されている。人気の高いN-BOXだからというわけでもなく、軽自動車全般で価値が長く好条件で残る傾向が強い。

 社会人として現役を引退した節目などで、愛車をコンパクトな車種にするダウンサイズする呼ばれる人のなかには、新車ディーラーで残価設定ローンを組んで軽自動車を購入する人も目立つ。再販価値が長く残る軽自動車なので、残価設定ローンにおける設定残価率もいい傾向にあるのがその背景にある。中古車市場でも軽自動車の人気は高いので、5年払いでの支払い途中にて下取り査定額などで残債整理して、初回車検ぐらいのタイミングでN-BOXからにN-BOXに……など、短期間で乗り換えを繰り返す人も少なくないようだ。

軽BEVが爆発的に普及する可能性はまだ低い

 ただ、同じ軽自動車でもBEVとなると少々話が異なってくるようだ。

 2024年秋に日産サクラの中古車が目立って増えてきた。サクラは2022年デビューなので、補助金交付を受けていると名義変更はまだできない。つまり、売却することはできないのだ。話を聞く限りでは、補助金による縛りがなくなる4年後になると再販価値の下落が目立つためになかなか乗り換え促進活動もできないと販売現場が判断し、当然補助金は未経過分返還しなければならないのだが、理解あるサクラユーザーを対象に、4年を待たずにデイズやルークス、あるいはノートなどICE車への乗り換えをすすめているという。

 2025年10月に正式発売となったN-ONE e:は、すでに在庫をもっているディーラーも現れており、仮に工場へ発注しても1〜2カ月で出荷可能な状況となっているようである。

 このような様子を見る限りでは、サクラもN-ONE e:も、ICE軽自動車のような再販価値を高めに長く持続するというのは、現状では厳しいように見える。登録車サイズのBEVですら押しなべて再販価値が同クラスICE車より低いことは否めず、ドイツ系高級車ブランドなどでは中古車を買って乗ったほうが買い得感は高いと、中古車をすすめられるほど。

 軽自動車は薄利多売が大原則なので、このまま軽自動車規格も含めてBEVが増えていくなか、政府の補助金の予算枠が伸び悩めば、「BEVを購入したけれど、予算消化をしてしまい補助金を受けられない」ということも珍しくなくなるのではないかともいわれている(現政権は消極的にも見えるので)。

 また、前述したダウンサイザーは、興味を示して軽自動車規格BEVへの乗り換えも期待できるが、軽自動車のメインユーザーとなる年配層や現役子育て層にどこまでメリットをアピールできるかが不透明となる。電気代が安い、給油の手間が省ける(軽自動車はタンク容量が小さいので給油頻度も多い)といった日常使用のメリットはあるものの、充電設備の増設や、そもそも車両価格の割高感が目立ってしまっているのが実情だ。また、残価率の高さで残価設定ローンに活路を見出すこともなかなか難しい。

 ICE軽自動車をラインアップしているブランドは、「BEVがダメならICEへ」という販売促進活動ができてしまうので、まずは軽自動車自体初参入となるBYDのお手並み拝見となるが、政府や地方自治体のバックアップをどこまで引き出すことができるかも、今後の普及を大きく左右していきそうである。