「もう テム は買わない」 関税対策で柔軟なシーインとの差が明確に

記事のポイント
トランプ政権の関税強化により、テムとシーインは2025年4月に価格を大幅に引き上げた。
会計時に輸入手数料を課すテムに対し、顧客離れや不満が広がっている。
現地在庫の増加や製造拠点の分散により、シーインは影響の緩和を図っている。
トランプ政権の関税強化により、テムとシーインは2025年4月に価格を大幅に引き上げた。
会計時に輸入手数料を課すテムに対し、顧客離れや不満が広がっている。
現地在庫の増加や製造拠点の分散により、シーインは影響の緩和を図っている。
テム (Temu)やシーイン(Shein)では、2ドル(約290円)のガジェットと5ドル(約710円)のドレスの時代は終わりを告げようとしており、初期の兆候からは、すべての顧客がその場にとどまることを望んでいるわけではないことがうかがえる。
シーインで販売されているドレスをモダンリテールがレビューしたところ、値上げ前の4月24日には22.19ドル(約3200円)だった。それが翌25日になると、同じドレスの価格は19%上昇し26.49ドル(約3800円)になった。Glossyが行った別の分析によると、シーイン製品のなかには、値上げ前と値上げ後では90%も値上がりしている商品があった。
同様に、マーケットプレイス・パルス(Marketplace Pulse)の創設者であるジュオサス・カジウケナス氏によれば、テムに24日に10.77ドル(約1550円)で出品された掃除機は、57%増の16.93ドル(約2440円)になったという。価格上昇に加え、テムはさらに一歩踏み込み、会計時に「輸入追加料金」を追加し、コスト意識の高い顧客からすでに反発を買っている。カジウケナス氏がリンクトイン(LinkedIn)で指摘した掃除機の場合、テムは21.68ドル(約3120円)の関税による追加料金を上乗せしている。
ここで大きな問題となるのは、この値上げがどの程度売上に響くかということだ。アナリストや業界専門家はモダンリテールに対し、テムは底値への依存度が高いため、買い物客の離反を招きやすいと述べている。さらに、すでに値上げされている価格に加えて、会計時に不意打ち的な追加料金を課すことは、顧客を遠ざける可能性がある。一方シーインは、ファストファッション・ブランドとより直接的に競合しており、プレッシャーに耐えられる位置にいる可能性がある。
もうテムはいらない
5月2日に施行された新しい大統領令により、米国は中国と香港から到着する800ドル(約11万5020円)未満の個人宛小包に対する免税措置を終了した。トランプ政権はまた、ほかの国からの出荷される荷物にもこの変更を拡大する計画を示唆しているが、その時期はまだ発表していない。
テムは、関税を表示価格に組み込むのではなく、会計時に輸入手数料を追加する方式のため、買い物客に違和感を与えている。「会計をクリックすると、突然価格が倍以上になる」とカジウケナス氏は言う。「ほとんどの人がカートの中身を捨ててしまう可能性が高い」。
関税に対応するため、会計時に追加料金を課すブランドや小売企業が増えているが、イーマーケター(eMarketer)の小売アナリストであるスカイ・カナベス氏は以前、モダンリテールに、「会計時に追加料金を請求されることは、消費者にとってショックであり、予期していなかった場合はカートの放棄につながる可能性がある」と述べている。
レディット(Reddit)の「テム・シングズ(TemuThings)」フォーラムでは、買い物客からすでに不満の声が上がっている。ある人の投稿には「もうテムはいらない」と書かれていた。投稿者は、30.15ドル(約4340円)の注文に44.60ドル(約6420円)の輸入追加料金を請求され、最終的にはその他の費用を含めて合計金額は76.56ドル(約1万1020円)に跳ね上がったという。
別のレディットユーザーは、27.97ドル(約4025円)の注文に対して41.24ドル(約5940円)の輸入追加料金を請求したテムの領収書のスクリーンショットを投稿した。
輸入追加料金は、米国内にある倉庫から出荷されない商品にのみ適用される。テムのWebサイトの免責事項には、「現地倉庫の商品はすべて輸入手数料無料、配送時の追加料金もかかりません」とある。
テムとは対照的に、レディットの同様のフォーラムでは、シ−インの顧客からの苦情は際立って少ない。
シ−インの競合相手の中心は、H&Mやザラ(ZARA)のようなファストファッション・ブランドで、その基本価格はもっと高い。「シーインは多くのファンを持ち、認知度の高いブランドであり、テムやアリエクスプレス(AliExpress)のようなところよりエンゲージメントが高い」とカジウケナス氏は話す。「シ−インよりもテムの方が値上げの影響を強く受けるかもしれない」。
そう考えるのはカジウケナス氏だけではない。
クロスボーダースタートアップ、ポートレス(Portless)の創設者、イジー・ローゼンツワイク氏は、「シ−インはファッション業界であり、競合他社よりもかなり安い価格で提供しているので、マージンの柔軟性が高いだろう」と語る。
実際、シ−インの買い物客は、価格を最大の関心事として挙げており、ハリス・ポール(Harris Poll)のデータでは、80%が衣料品小売企業を選ぶ際には価格がもっとも重要な要素であると回答している。シ−インの小幅な価格上昇では、彼らが立ち去る可能性は低いかもしれない。21ドルだったドレスが24ドルになったとしても、ショッピングモールの小売店に比べればまだ競争力があるからだ。
シ−インが扱う製品のなかには377%も値上がりしたものもあるが、値上げ幅はサイト全体を通じて一律ではない。ブルームバーグの分析によると、シ−インの美容・健康カテゴリの上位100商品は平均で約51%上昇した一方、もっとも人気のある婦人服の価格は8%の上昇に留まっていた。
テムに対し輸入追加料金に関するコメントを求めたが、回答は得られていない。CNBCは、少し前にテムの輸入追加料金について伝えていた。
テムとシ−インの今後
かつては米国のディスカウントショップを破壊する大きな存在と見られていたテムだが、2024年半ば以降、ファイブビロウ(Five Below)やオリーズ・バーゲン・アウトレット(Ollie’s Bargain Outlet)との顧客重複は減少している。アーネストアナリティクス(Earnest Analytics)のマーケティング部門を率いるマイケル・マルーフ氏は以前、モダンリテールの取材に対し、「これは、テムがこれらの小売企業の顧客の一部から支持されなくなっていることを示唆している」と述べている。
テムは極端なバーゲン品に依存しているため、わずかな値上げ、あるいは会計時の不愉快なサプライズでさえ、コンバージョンが損なわれる可能性がある。「価格を上げれば上げるほど、彼らはその力を失う」とカジウケナス氏は言う。
シ−インもテムも、米国内の在庫を増やし、現地製造の選択肢を模索することで、影響を軽減しようとしている。ブルームバーグによると、シ−インはまた、2025年初めにベトナムに拠点を構えるようサプライヤーに働きかけたという。
ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)、ファイブビロウなどの小売企業も、テムのつまずきの恩恵に預かる可能性がある。特にウォルマートは、テムが販売するのと同じ低価格商品の多くを、素早く出荷し容易に返品できる形で提供するために、マーケットプレイスを強化している。ヌメレーター(Numerator)の2025年2月のデータによると、米国の消費者の4分の1以上が、関税に対応して米国製の代替品に切り替えると回答している。
ただ、こうした乱気流に揉まれても、シ−インもテムも消えることはないだろう。
ローゼンツワイク氏はこう話す。「シ−インはTikTokで消費者の声を聞き、彼らが何を着たいかを理解し、その週のうちにそれを作り、作ったものすべてを販売する。シ−インは、ただ関税を回避しているから成功したわけではない。新しいスタイルを試し、素早く市場に送り出すことができるから、でもある」。
しかし、テムにとっては、その道のりはもっと険しいかもしれない。ローゼンツワイク氏が言うように、「テムは米国のショップと直接競合しているため、同じような価格バッファーはないかもしれない」。
[原文: Temu’s ‘import surcharges’ fuel outrage, leaving it more susceptible to tariff backlash than Shein]
Allison Smith(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:坂本凪沙)
