24年前に失われたスーファミソフトの「幻のサテラビュー版」が発見され奇跡の復活を遂げる
かつてPlayStationで1996年に発売されたアクションゲーム「クーリースカンク」は、当初スーパーファミコン向けに開発されていました。しかし、諸事情でスーパーファミコン版は発売されず、データも開発会社から削除されてしまったため、幻のソフトとなっていました。そんなスーパーファミコン版クーリースカンクの体験版がサテラビューで配信されていたことが判明。ソフトの解析によってスーパーファミコン版が復活したと報じられています。
https://www.gamingalexandria.com/wp/2020/01/19/cooly-skunk-snes-unreleased/
奇跡の復活を遂げたスーパーファミコン版クーリースカンクがどんなゲームなのか、以下のムービーを見るとよくわかります。
Cooly Skunk (SNES, Unreleased) - YouTube
2019年11月に、秋葉原のレトロゲームショップ「スーパーポテト」に、「クーリースカンクが入っています」と書かれたBS-Xの8Mカートリッジが5万4980円で販売されていたのを、レトロゲームのアーキビストであるMrTalida氏が発見しました。
BSX cart currently at the Super Potato in Akiba. Bonkers price tag on it, though. pic.twitter.com/8igD87abKG— MrTalida (@MrTalida) November 16, 2019
BS-Xは、スーパーファミコン専用周辺機器「サテラビュー」のロムカートリッジです。サテラビューは放送衛星を利用したデータ通信で、ゲームや追加データ、ラジオ番組などのコンテンツを配信できるというサービスで、フラッシュメモリを内蔵したBS-Xカートリッジに保存して遊ぶことが可能でした。
クーリースカンクはPlayStation向けに、VISITというゲームメーカーから発売されたゲーム。しかし、クーリースカンクは当初、スーパーファミコン向けに開発されていたソフトであり、製品版こそ発売されなかったものの、その体験版がサテラビューで配信されていたことが、BS-Xカートリッジの発見によって判明。レトロゲーム愛好コミュニティ「Hidden Palace」はメンバーでお金を出し合って、この幻のサテラビュー版を収録した貴重なカートリッジを購入しました。
スーパーファミコン版はPlayStation版とほぼ同じ内容になっているものの、やや見下ろしになって3Dのような奥行きを演出しているPlayStation版と異なり、完全な2Dアクションとして描かれています。また、背景やキャラクターモデルにもPlayStation版と大きな違いがありました。
その後、収録されていたクーリースカンクの体験版の解析が行われ、デモの制限を解除することでエンドクレジットまでゲーム全部をプレイできるようになることが発覚しました。海外ゲームニュースメディアのGaming Alexandriaは「ゲームのタイトル画面に表示される『1996年』という日付とゲームの完成度から判断すると、おそらくVISITでスーパーファミコン版の開発が中止される直前に配信されたのだろう」と推測しています。
Here's a modification to the recently released SNES game Cooly Skunk that stops the game from resetting after beating the third world!
Check it out here:https://t.co/kE4OzsdlvZ pic.twitter.com/6xKMfS5p4r— MasterF0x (@Master_F0x) January 19, 2020
PlayStationで発売されていたクーリースカンクのスーパーファミコン版がなぜ開発されていたのかについては、ゲーム開発企業の浮世亭の代表取締役で、クーリースカンクのディレクターを務めた成瀬憲史氏が海外サイトのインタビューに答えています。
Kenshi Naruse (interview) - Hidden Palace
https://hiddenpalace.org/Kenshi_Naruse_(interview)
「クーリースカンク」は、ファミコン版「テトリス」や「ヨッシーのクッキー」を開発したBPSのマスコットキャラクターを作るプロジェクトから生まれたゲームです。当時のゲーム雑誌には「メタモルキッドぐーみん」という名前で発売される予定という情報が掲載されていました。
このゲームの開発をBPSから依頼されたのが、浮世亭でした。成瀬氏は、BPSから「子ども向けのアクションゲームを」というリクエストがあったと証言しており、EPIC/SONYから発売された迦楼羅王(カルラオウ)を低年齢向けにするというコンセプトで開発を進めていたと述べています。しかし、BPSの方向転換でプロジェクト自体は途中で終了してしまいました。
ゲーム自体はほとんど完成していたところ、VISITから「ゲームのエンジン部分を使って別のゲームを作れないか」というオーダーがあったと成瀬氏。当時は既に日本ではソニーからPlayStationが発売されていましたが、アメリカ市場ではまだSNES(海外版スーパーファミコン)が強かったため、海外向けソフトとして開発が再始動しました。
この時にスカンクのキャラクターとおならで攻撃するという特徴が追加され、クーリースカンク(英題:Panky Skunk)は完成に近づきます。当時開催された展示見本市「任天堂スペースワールド」では既にプロモーション用の着ぐるみが作られていたことも確認されています。
しかし、再びタイミング悪く、完成間近になってアメリカでもPlayStationがヒット。これを受けてSNES市場が急激に縮小し、アメリカのバイヤーからは開発中止のオーダーがあったとのこと。2度のプロジェクト中止を受けてもなお、スーパーファミコンとPlayStationの研究を行うという名目で、浮世亭ではSFC向けゲームのクーリースカンクをPlayStationに移植するという作業を続行。その上で、成瀬氏は再度PlayStation版を制作してみないかとVISITに連絡を取り、PlayStation版の開発が正式にスタート。3度目の正直で、クーリースカンクはPlayStation版の発売に至ったそうです。
成瀬氏によると、浮世亭には2000年以前のデータは一切残っていないとのこと。つまり、本来ならば一切世に出ることがなかったであろうスーパーファミコン版のデータが、偶然発見されたサテラビューカートリッジのデモ版から復活を遂げたというわけです。
なお、クーリースカンクの解析の成果はGitHubで公開されています。