MaaS普及の解決策は?答えはコンテンツビジネスにあり!
自動運転技術で運転から解放されると、車は第二のリビングになるとされており、自動車部品メーカーが車内での快適性を追求している。一方、車は所有からシェアへと移行するといわれる。パーソナルな空間であるリビングを、他人とシェアするには他人に使われる抵抗感を払拭する必要がある。そのための開発が進んでいる。
旭化成や三菱ケミカルなど素材各社は車内での快適性を打ち出している。旭化成は展示会用のコンセプトモデルで、天井ディスプレーや人工芝の床、指向性スピーカーなどを配置し、くつろげる車内空間を演出した。指向性スピーカーで座席に座るそれぞれの人に別々の音声を届けられる。相乗りしていても違うコンテンツを楽しめる。
旭化成マーケティング&イノベーション本部の小西美穂リーダーは「知らない人とパーソナルな空間をシェアする際に、まず気になるのはにおい。嗅覚センサーが必要になる」と説明する。旭化成は物質・材料研究機構やNECなどとアライアンスを組み嗅覚センサーを開発している。機械学習でにおいの種類や強さを判別し、車内クリーニングの判断材料にする。
トヨタ紡織はカメラやマイク、圧電センサーなどで搭乗者の喜怒哀楽を計る座席システムを提案する。声と脈波で感情を推定し、不快な感情を検知したら照明や香り、振動などで緩和を働きかける。
圧電センサーは車体の振動と身体の拍動の周波数が一部重なる。カメラは顔を背けられると計測が難しい。そこで声音を含め、3要素を組み合わせることで推定精度を高めた。
さらにカーブなどによる不意な加速度を軽減するため、回転式の座席を検討している。座席に対して横方向の力には踏ん張りがきかないため、快適性をそぐことになる。バスが急停車すると高齢者が骨折することもある。そこでルートから加速度方向を先読みして、ディスプレーや座席全体を回転させ、力を背もたれで受け止める。
各社が車内のリビング化を目指すのは、自動運転やシェアが浸透しなくても高級車に提案できるということもある。トヨタ紡織空間企画開発室の柳田良則室長は「まずタクシーで実用化される。自動運転は政策動向を見守る必要がある」と説明する。
「所有車ならラグジュアリーとして、シェアならビジネスプラットフォームとして空間をデザインすることになる」と指摘するのはメディアアーティストの落合陽一筑波大学准教授だ。トヨタ自動車とソフトバンクなどの共同出資会社モネ・テクノロジーズ(東京都港区)は移動コンビニやトイレ、病院シャトルなどの六つの車両モデルを提案する。モネの宮川潤一社長は「モックを示し、水洗対応や火の扱いなど課題を一つひとつつぶしていく」という。リビングの先のビジネスプラットフォームを見据える。
「Vチューバー」を隣に観光
移動や輸送のために設計されてきた車両は車内のスペースが広くない。人を乗せて接客するほどの空間はなく、スマートフォンなどの端末でコンテンツを視聴するのが限界だった。だが最近、仮想のキャラクターが動画配信する「Vチューバー」など遠隔接客の技術基盤も整いつつある。狭くても離れていても心を通わす体験ができる世界が近づいている。
