ところがクックパッドのビジネスモデルは有料会員なのだ。会員は月額300円なので年額3600円。

つまり例え1円のクッキング本を10冊をバラまいても、有料会員が5555人増加するならば、1年~2年ほどでペイしてしまうのだ!

従来の紙の出版であれば、こういった無謀なチャレンジは一時的なキャンペーンの域をでなかった。兵站(複製コスト)の問題があったからだ。

だが、電子書籍は一度作れば永遠に存在し続ける。一度作った超定額書籍は、半永久的に広告ツールとして機能し続ける。 おそらくはAmazonの料理カテゴリのトップを半永久的に占領しながら。(実際には、DL帯域コスト負担があるので、販売価格は100円以下にはできないだろうが、試算のカーブが変わるだけで結果は同じだ)。

・たとえばPixivが、お絵描きの教本を100円で発売しだしたら?
・たとえば保険会社が、健康や医療についての本を100円で発売したら?
・たとえばAKBが、コンプリートで握手券モデルで48冊の100円の本を販売しだしたら?

クズ本だったらば問題ない。だが彼らが、一定品質以上の本を、永久につかえる広告としてバラマキはじめたらどうなるか?
これが電子書籍時代における、出版社の最大のライバルになりうる。

●脅威は出版の枠組みの外からやってくる
出版社は価格決定権を保持することに固執しているが、電子書籍の最大のリスクはそこではない。

結局のところ、出版社の最大の敵は、同業者でもAmazonでも違法コピーでもない。

真に恐れるべきは、失うものもなく、利益も必要なく、面白いコンテンツを作れるプレイヤーが出版業界の外には存在する・・・ということだ。そして彼らには出版の慣習も、仁義も、同調圧力も意味を持たない。彼らこそが電子出版の最大の驚異だ。

売り上げを必要としない彼らが、書籍としての利益を無視したダンピングで、ランキング上位に参入するようになったら・・・はたして出版社は価格の維持をし続けることはできるのだろうか? 価格決定権は、みなが足並みを揃えなければ意味をなさない。

上位100の本の数十パーセントが100円の本になっても、それでも出版社は価格を防衛しきれるのだろうか?

スマホのアプリ/ゲーム業界では切り売りは力を失い、囲い込み課金が主流となった。音楽業界も販売からコンサートや興行へと模索を始めている。 映像も今や定額課金だ。電子化によって生産複製流通コストが0に近づくなか、出版社だけが例外的に価格維持を可能とするロジックを、僕は見つける事ができない。