「なぜ夫だったのか」「私は相手を殺さない」、山上被告に対峙した妻・昭恵さんの胸中…安倍氏銃撃4年
2022年7月に奈良市で演説中に銃撃されて死亡した安倍晋三・元首相(当時67歳)の妻・昭恵さん(64)が事件から4年となるのを前に、読売新聞の取材に応じた。
昨年12月、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)の公判に出廷し、被告の説明を直接聞いたが、「夫がどうして殺されたのか、今もわからない。被告に会って聞きたい」と語った。(奈良支局 小松夕夏)
「悩みを聞く人いたら」
昭恵さんは、奈良地裁で昨年10月〜今年1月に計16回開かれた山上被告の裁判員裁判で被害者参加制度を利用。12月3日の第13回公判には、「自分の目と耳で確認したい」と自ら出廷した。
初めて対峙(たいじ)した被告について、「何度も見た事件当時の映像より髪が伸びて、やつれていた。被告人質問でも、検察に反論しようという意思が感じられなかった」と振り返った。
公判では、母親による世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への総額1億円の献金で、家庭が崩壊した被告の不遇な生い立ちが明らかになった。
昭恵さんは「生い立ちを犯罪の理由にしてはいけない。家庭環境が悪いから殺人をしてもいいという風潮には絶対になってほしくない」と訴えた。一方で、「追い詰められた時に悩みを聞いてあげられる人が周りにいたら、変わったかもしれない」とも述べた。政治家の妻として、社会的弱者への支援が課題だと感じたという。
「謝罪してほしいとは思わない」
被告は法廷で、安倍氏を狙った理由について「教団と政治の関わりの中心」と述べた。だが、昭恵さんは「教団幹部ではなく、なぜ夫だったのか。なぜ関係のない夫を殺したのか。腑(ふ)に落ちない」と納得できていない。
SNSを中心に極刑を求める声も多いが、「(公判前から)死刑にしないでと思っていた。刑務所で自分の罪と向き合い、反省していってもらいたい」と求め、「償えはしないんだけどね……」とこぼした。
被告から謝罪の手紙が届いたことはない。法廷でも直接謝ってくることはなかった。「もう謝罪してほしいとは思わない。主人が戻ってくるわけでもない。でも、裁判が終わったら、刑務所へ会いに行き、夫を狙った理由を聞きたい」と淡々と語った。
「実体験を語っていく」
安倍氏に対しては、「妻としてはもちろん生きていてほしかったけど、長い間、総理大臣を務め、国葬までしていただき、幸せな人生だった」と思いをはせた。「この4年間、いろんなところから、主人の話をしてほしい、主人の代わりに来てほしいとお願いされた」と言い、「けっこう忙しかった」とほほ笑んだ。
事件前から取り組む更生支援では、被害者遺族として、刑務所などで講演活動を続けている。殺人を犯した受刑者と文通しているほか、加害者家族とも知り合い、その苦しみも知ったという。
自らの経験を語る時、「恨みの感情」を持たないよう意識している。恨みは暴力の連鎖につながるからだ。「人には生きてきた役割や運命がある」と言い、遺族だから伝えられることがあると思っている。「私は夫を殺されたけど、私は相手を殺しに行かない。その実体験を語っていく」
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安倍氏は22年7月8日午前11時30分頃、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の応援演説中に銃撃され死亡。山上被告が現行犯逮捕され、23年1月、殺人罪などで起訴された。
山上被告は25年10月に奈良地裁で始まった裁判員裁判で起訴事実を認め、今年1月、求刑通り無期懲役の判決を受けた。弁護人が大阪高裁に控訴しており、公判期日は決まっていない。
東京と奈良で「安倍晋三 回顧展」
安倍氏の遺品などを集めた「安倍晋三 回顧展」が7月、東京と奈良で開かれる。昭恵さんは「安倍晋三の生き方をみてもらい、国や外交、平和を考えるきっかけになれば」と語った。
昭恵さんも関わる一般社団法人「後来(こうらい)ノ種子プロジェクト」主催。銃撃時に握っていたマイクや、身につけていた拉致被害者の救出を願う「ブルーリボン」バッジ、小学生時代の日記など計約100点が展示される。
開催場所は東京都江東区の「東京ビッグサイト」(4〜12日)と、奈良市の「奈良県コンベンションセンター」(17〜19日)。
