NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年5月5日付で、既知の「褐色矮星」の数をほぼ倍増させる3000個以上の新たな褐色矮星候補を発見したとする、アメリカ海軍天文台のAdam Schneiderさんを筆頭とする研究チームの成果を紹介しています。


NASAによると、この成果はNASAが主導する市民科学プロジェクト「Backyard Worlds: Planet 9」に参加する、約20万人もの市民ボランティアの貢献がもたらしたものです。


暗くて見つけにくい「褐色矮星」

褐色矮星は、恒星と惑星の中間的な性質を持つ天体です。サイズは木星のような巨大ガス惑星ほどの大きさですが、質量は惑星よりも大きくて、なおかつ恒星のように中心部で安定した水素の核融合反応を起こすには至らない範囲(木星の13倍〜80倍くらい)です。


褐色矮星は決して珍しい存在ではなく、NASAによれば、太陽の周辺では恒星3〜4個に対して1個の割合で存在していると考えられています。しかし、自ら強く光り輝く恒星とは違い、特に孤立して存在する褐色矮星は非常に暗いため、見つけるのが極めて難しいという特徴があります。


それでも、褐色矮星の数を正確に把握することは重要です。天文学者が天体の形成過程を理解し、私たちの住む天の川銀河の質量分布や近傍宇宙の地図を作成する取り組みに関わるからです。


【▲ 褐色矮星の想像図(Credit: William Pendrill)】

人の目で画像を見比べる「市民科学」の底力

今回の成果は、過去10年間にわたって行われたこのプロジェクト「Backyard Worlds: Planet 9」の集大成と言えるものです。


具体的には、市民科学プラットフォーム「Zooniverse」を通じて提供された画像を市民ボランティアたちがパラパラ漫画のように見比べ、背景の星々に対して移動している天体を人の目で探し出すという、効果的ながら地道な手法がとられました。


NASAによると、探索で用いられたのはNASAの広域赤外線探査衛星「WISE(Wide-field Infrared Survey Explorer)」やその再始動ミッションである「NEOWISE-R(Near-Earth-Object WISE Reactivation)」が、16年間という長期間にわたって撮影した画像データです。一部のボランティアは、探索用の分析ツールやソフトウェアを独自に開発するほどの熱意を見せたといいます。


ちなみに、学術誌「The Astronomical Journal」に掲載されたという今回の論文には著者として75名が名を連ねていますが、そのうち61名が市民ボランティアです。また、ボランティアとして参加したことがきっかけで、天文学者としてのキャリアを歩み始めた人も2名含まれているといいます。


未知の天体を探す旅は続く

研究チームによれば、今回報告された3000個以上の天体の中には、初期の天の川銀河の名残と考えられる珍しいもの(extreme T subdwarf=極端なT型準矮星)や、オーロラが発生している可能性がある褐色矮星など、特異な性質を持つものも多数含まれています。


孤立した褐色矮星「W1935」でオーロラが発生している可能性 理由は謎(2024年1月21日)
【▲ オーロラがあるかもしれない褐色矮星「W1935」の想像図(Credit: Artwork: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI))】

褐色矮星候補が数多く見つかったことで、今後はJames Webb(ジェームズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡やESA(ヨーロッパ宇宙機関)のEuclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡、NASAが2026年に打ち上げる予定のNancy Grace Roman(ナンシー・グレース・ローマン)宇宙望遠鏡などを用いた追加観測により、これらの謎多き天体への理解がさらに深まることが期待されます。


NASAによれば、同プロジェクトにはWISEなどが観測した20億以上のデータソースがまだ分析を待っており、現在も探索が続けられているということです。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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