生きた植物や骨に直接電子回路を印刷できる3Dプリンティング技術が開発される

3Dプリンターはこれまでにない汎用(はんよう)性を備えた建築物や機械部品、電子機器などを製作できるツールですが、温度に敏感な物体上で材料を加熱することが難しいという問題がありました。新たにアメリカのライス大学の研究チームが、マイクロ波をリアルタイムで調整することで、インクとして3Dプリントしたナノ材料やポリマーを加熱する技術を開発しました。
Three-dimensional printing of nanomaterials-based electronics with a metamaterial-inspired near-field electromagnetic structure | Science Advances
Rice researchers redefine what we can build by 3D printing electronics with focused microwaves | Rice News | News and Media Relations | Rice University
https://news.rice.edu/news/2026/rice-researchers-redefine-what-we-can-build-3d-printing-electronics-focused-microwaves
Microwaves allow 3D printing of circuits on surfaces without damage
https://newatlas.com/electronics/meta-nfc-focused-microwaves-circuits/
3Dプリンターで電子回路を印刷する技術は以前からありましたが、インク材料として積層する導電性ナノ粒子に熱を与えて焼結し、導電性を持たせるというプロセスは10年以上にわたるボトルネックに陥っていたとのこと。
焼結プロセスの際に炉を使ったりレーザーを照射したりするやり方は、電子回路の基板となる材料にも膨大な熱が加わります。そのため、生きた植物や外科用インプラントなどの熱に弱い基板には使用できませんでした。
そこでライス大学の機械工学者であるヨン・リン・コン准教授らの研究チームは、メタマテリアルに着想を得た「Meta-NFS」というデバイスを開発しました。Meta-NFSは、マイクロ波エネルギーを髪の毛の直径ほどである200マイクロメートル未満の領域に集中させ、3Dプリンターで新たに積層した材料のみを160℃に加熱し、周辺の基板となる材料は低温のままに保つことが可能です。
以下の図は「Print nozzle(3Dプリンターのノズル)」から押し出された材料が「Meta-NFS」で焼結されるプロセスを示したもの。Meta-NFSは積層した材料内部から加熱することで機能し、マイクロ波をリアルタイムで調整することで連続した3Dプリント過程におけるナノ粒子の結晶構造を変え、異なる電気的・機械的特性をプログラムすることもできるとのこと。

Meta-NFSでは以下のように、200マイクロメートル未満の領域のみを加熱することが可能。

Meta-NFSによる温度変化を示した以下の画像を見ると、インク材料のみがピンポイントで加熱されており、下の基板にはほとんど影響していないことがわかります。

研究チームは実際にMeta-NFSを用いて、生きた植物の葉の上に導電性の微細構造を3Dプリントしています。

また、ウシの大腿(たい)骨の上に、非常に小さなゆがみを検出してデータを送信するワイヤレスセンサーを3Dプリントすることもできたと報告しています。

コン氏は、「印刷材料を選択的に加熱できる能力により、温度に敏感な材料に囲まれていてもインクの機能特性を空間的にプログラムすることが可能になります。これによりデスクトップサイズの3Dプリンター内で、生体高分子や生体組織を含む幅広い基板上に、複雑な設備や手間のかかる手作業を必要とせずに自由形状の電子機器を統合することができます」と述べました。
