「いつも裸の女性が出てくる映画」がなぜ子供からも愛される“国民的作品”に⋯菅原文太のイメージを激変させた『超人気シリーズ』の正体
〈「菅原文太が宇宙人と交信」「倉本聰作品にもUFOが」だから“映画と時代”は切り離せない⋯1978年の邦画に「宇宙人が出まくる」理由〉から続く
「毎回、裸の女性が出てくる」
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そんな破天荒な内容にもかかわらず、なぜトラック野郎は子どもたちにも愛されたのか。菅原文太のイメージを一変させたこの大ヒット作の裏には、時代と興行の“したたかな計算”があった。ライターの桜井顔一氏の新刊『日本特撮 人気作品の裏設定』(鉄人社)からひもとく。(全2回の2回目/最初から読む)

ヴァン・ヘイレンと菅原文太 ©getty
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菅原文太のハマり役・桃次郎
さてさてそんな『トラック野郎』、公開当初は単発の穴埋め番組として製作され会社もさほど期待していなかったが、75年に『トラック野郎 御意見無用』(75年8月30日)が公開されるとたちまちのうちに大ヒット、公開直後にシリーズ化が決定した。
監督の鈴木則文と脚本の澤井信一郎は、長距離トラックの助手席に乗せてもらって旅に同行しながら取材を敢行。装飾ギンギンのデコトラも全て実際の車体が使われ、全国のモノホンのトラック野郎からも支持された。
第2作『トラック野郎 爆走一番星』(75年12月27日公開)ですでに『男はつらいよ』の興行収入をトラックが追い越し、その後は東映の目玉商品となる。第5作『トラック野郎 度胸一番星』(77年8月6日公開)では同じく全国のトラック野郎どもに大人気だった歌手・八代亜紀も「紅弁天」丸を運転するトラッカー役で登場し実際にトラックを運転。
桃次郎のライバル役ジョーズには千葉真一が扮し、まさに『仁義なき戦い 広島死闘篇』(73年)を思わせるような文太VS千葉ちゃんの粉まみれの大暴れが実現した。
第10作で突然のシリーズ終焉
すっかり桃次郎役にハマってしまった文太だったが、その頃東映京都では文太を主演に想定した『仁義なき戦い』シリーズ「北陸編」の企画が着々と動いていた。
しかし、桃次郎にハンドルを切ってしまっている文太は「北陸編」の主演にはまったく乗らず、上層部の頼みにも黒い煙をまいて逃げてしまう。諦めた日下部五朗プロデューサーと深作欣二監督は、松方弘樹主演で『北陸代理戦争』(77年)と改題。『仁義なき戦い』新シリーズもご破算となるなど会社としては色々あったようだ。
『トラック野郎』は子どものファンも多く、第4作『トラック野郎 天下御免』(76年12月25日公開)では、オープニングでデコトラのプラモデルを走らせる子ども達が本物のデコトラに手を振るシーンもあり、当時は一番星号のミニカーまで発売され、児童誌の裏表紙等に広告が乗るほどの人気っぷりであった。
しかし寅さんのお上品な喜劇に比べると、桃さんは(今で言う)ソープランドの常連で、毎回裸のねえちゃんは出てくるわ、大家族のジョナサン一家の子どもたちを銭湯ではなくソープの風呂に入れたりとやったらいかんことやりたい放題。
しかもストリップはあるわ、トイレで行きずりの女とハメようとするわ下品極まりなく、子ども連れの観客は毎回別の意味でハラハラしていた。やがて際どいエロは減少し、第9作『トラック野郎 熱風5000キロ』(79年8月4日公開)では、ジャッキー・チェンの出世作『ドランクモンキー 酔拳』との同時上映が実現。世にいうカンフーブームへと発展し、子ども達は新しいファンを引き連れ以前にも増して東映の劇場へ足を運んでいったのである。
そんな『トラック野郎』だったが、これだけヒットしていたにもかかわらず、第10作『トラック野郎 故郷特急便』(79年12月22日公開)を持ってシリーズは前触れもなく終焉となる。
交通違反シーンの連続に警視庁からクレームが入ったやら、東映が戦記物の超大作にシフトチェンジしたなど憶測は出回ったが、明確な理由は則文監督ですら伝わっておらず、文太も真相を語らないまま墓場まで持って行ったため一般的には謎のままだ。辞めざるを得ない大人の事情が絡んでいたのだろう。東映はその後、黒沢年男主演で『ダンプ渡り鳥』(81年4月29日公開)を製作。ふたたびマドンナ役に原田美枝子を起用するも『トラック野郎』ほどのヒットには至らず一作で終了している。
一方の文太は、よほどトラッカー役がハマりすぎたのか、『故郷特急便』の公開前には大映映画『黄金の犬』(山根成之監督、79年6月2日公開)では通りがかりのダンプカー運転手役として1シーン出演。星印のついたジャンパーを着た桃次郎そのままのような男臭いキャラを演じている。
日本のメディアにおけるUFOブーム
『未知との遭遇』が公開された78年には、『スーパーマン』や『スター・ウォーズ』といった米国製のSF作品が続々公開され、そのたびに社会現象になった。
この現象に日本の特撮界が黙っているわけがないはずだが、当時東映は『宇宙からのメッセージ銀河大戦』を、円谷プロは日本テレビと組んで『西遊記』をそれぞれ製作しており、直接UFOに関連した特撮は、東京12チャンネル(テレビ東京)で放送された『UFO大戦争 戦え!レッドタイガー』(78年4月8日〜12月28日)ぐらいであった。
サンバイザー付きのヘルメットをかぶったようなヒーローレッドタイガーが活躍するこのドラマ、後楽園ゆうえんちが企画し、これまで東映の特撮番組で殺陣やスーツアクターを担当していた大野剣友会が原作、創英舎という超マイナーな謎の会社が制作という異色のSF番組であったが、レッドタイガーの怒りが頂点に達すると着ていた白のコスチュームが赤色に変化するというさしてどよめきもわかないような地味な設定と、放送局ともどもマイナーすぎて全国区の人気にまで火がつかなかった。
また、ブーム便乗のバラエティドラマとして、TBSが『UFOセブン大冒険』(78年4月6日〜9月28日)を放送。アイドル歌手の榊原郁恵がUFOの故障により78年の世界へ現れた未来人というこれまたやんちゃな設定で、UFOセブンなる少年少女たちとともに、郁恵ちゃんの姉役のピンク・レディーの待つ未来の世界へ帰るまでの奮闘を描く冒険ファンタジーだ。
当時大人気だった郁恵ちゃんの魅力と「UFO」という曲が振付けとともに大ヒットしたピンク・レディーの人気が爆発し、UFOセブンの一員になって一緒に旅をしたいという全国のちびっこ視聴者で溢れかえる人気番組であった。その後、郁恵ちゃんと並ぶ当時のアイドル大場久美子を交えた『マジカル7大冒険!』(78〜79年)、『少女探偵スーパーW』(79年)、郁恵ちゃんと井上順をメインにした『ミラクルTV大出動』(79〜80年)など長期シリーズ化され、『スーパーW』ではあの手塚治虫先生(本人)がベレー帽を盗まれるという事件が発生、ハチマキ姿の手塚先生が登場するなどのお宝回も誕生した。
このシリーズの流れを組んだと思われるSFアクションドラマ『ピンキーパンチ大逆転』(1982年4月1日〜9月30日)は、アイドルの松本伊代と柏原芳恵を主演に、女だけが住むロリータ星から地球へやってきた宇宙人女子2人が難事件に挑むストーリーで、超能力を持ったスーパーギャルに変身し毎回アクションに挑んだ。
ホネホネの伊代ちゃんとムチムチの芳恵ちゃん
キョンキョンや中森明菜といった当時大人気のアイドルや、先輩郁恵ちゃんも前後篇にゲスト出演している他、TBS放送なのに、スペシャルゲストとしてタケちゃんマン(ビートたけし)も出演(8月19日放送)。
翌週はフジテレビ『オレたちひょうきん族』に伊代&芳恵が出演するなど局の枠を超えたお遊び感覚の番組で、ホネホネの伊代ちゃんとムチムチの芳恵ちゃんのコスプレ見たさにわりと中年視聴者にもウケたようだ。
(桜井 顔一/Webオリジナル(外部転載))
