ブルージェイズとのマイナー契約を勝ち取った金城朋弥【写真:JWL提供】

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Bジェイズとマイナー契約した金城朋弥 昨年11〜12月に参加したJWL、鷲崎一誠代表が回顧

 驚きのニュースが日本球界を駆け巡った。4月8日、23歳の無名投手・金城朋弥が米大リーグ(MLB)のトロント・ブルージェイズとマイナー契約を結んだことが発表されたのだ。NPBのドラフト会議では2度の指名漏れを経験し、大学卒業後は国内の独立リーグでプレーしていた。MLBスカウトの目に留まった最初のきっかけは、昨年11〜12月に故郷の沖縄で開かれた、トライアウトを兼ねた「ジャパンウィンターリーグ2025」(JWL)のトライアウトリーグに参加したことだった。約1か月という短い期間で、何が人生の転機となったのか。JWLの鷲崎一誠代表に当時のエピソードを聞いた。

 沖縄本島中部にあるコザしんきんスタジアム。突如現れた本格派右腕を前に、スカウト陣がざわついた。スピードガンを構えたり、動画撮影を始めたり。ゆったりとしたフォームから155キロ前後の力強い直球を連発する一人の逸材が、球場の空気を一変させた。

 鷲崎代表は、JWLで金城が登板した時の様子をそう振り返る。

 昨年のJWLにはブルージェイズを含むMLB6球団、NPB8球団のスカウトが参加していたが、目利きのプロが腰を浮かすような反応はそう多くは見られないという。「レベルの高いチームのスカウトが、トライアウトリーグで『うおっ』と感じる選手はなかなかいません。彼らの反応や動きを見て、僕も『これは何かあるかもしれないな』と思いましたね」と回顧する。

 沖縄県豊見城市出身の金城。山川穂高(ソフトバンク)らの母校である沖縄県立中部商業高校を卒業後、日本文理大学へ。2度にわたりプロ志望届を提出したが、ドラフト指名を勝ち取ることはできなかった。その後は四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに所属。直球は最速161キロとされ、球種はカーブやシンカー、スプリットなどを操る。

 先述のスカウト陣の反応とは異なり、鷲崎代表はJWLに合流したばかりの金城の投球を見た時の感想を「正直、この選手は絶対にメジャーに行くなという印象はなかった」と率直に振り返る。直球の伸びは目を見張るものがあったが、コントロールには難があった。ただ、練習に対するストイックさ、自ら契約を勝ち取ることへの意志は人一倍強かったという。

「同じくJWLに参加していた、元広島のドラフト1位投手の岡田明丈とずっと一緒に練習をしていました。年齢が10歳くらい上の実績のある先輩をつかまえて、さまざまなことを吸収したと思います。期間中、ボールの精度も徐々に上がっていきました。受け身な選手も多い中、僕やコーチ陣に対しても『どうすれば契約をもらえますか?』と前のめりになって質問をしていました。そういったひたむきな姿勢が契約に結び付いたのだと思います」

 JWLを終えた金城は、年明けからドミニカ共和国のリーグにも参戦。そこでブルージェイズからオファーを受け、自力で契約を勝ち取った。

 鷲崎代表は「スカウトが一度見ただけの選手を一本釣りするということはほぼありません。彼らにとっては、情報を蓄積することが重要なんです。金城はJWLとドミニカのリーグの両方でアピールできたからこそ、契約を勝ち取れたんだと思います」とみる。

金城が高めたJWLの価値、周囲の刺激に

 律儀な性格の金城。契約のリリースが出る1週間ほど前に鷲崎代表やJWLのコーチ陣へ個別に連絡し、「最終チェックに通れば契約になりそうです」と伝えていた。

 鷲崎代表はリリース後にも本人から直接吉報を受けた。「沖縄がざわついてるよ」「みんな応援してる」と話すと、「マジすか。うれしいです」と弾んだ声で応じた金城。「僕が活躍することでJWLの価値を上げ、周りの選手たちに勇気を与えられるように頑張ります」と決意を語ったという。

 トライアウトリーグの立ち上げから4年が経過したJWL。第2回からは、実践経験を積むことを目的とした「アドバンスリーグ」を加えた2リーグ編成となり、第3回からNPB球団も選手派遣を始めた。この年に参加した米国出身野手のロビー・テネロビッツは契約には至らなかったが、その後に西武のキャンプにテスト生として招待を受けた。

 第4回の昨年は、岡田が韓国プロ野球のフューチャーズリーグ(2軍)に新規参入した蔚山ホエールズと契約したり、チェコのボリス・ヴェチェルカ投手がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の代表チームに招集されたりするなど、参加選手のレベルが目に見えて向上している。リーグの存在感が国内外で高まってきている証左だろう。

 鷲崎代表は第4回を終えたタイミングで、「あと3年くらいで確実にMLBと契約する選手が出てくる」とリーグの発展に手応えを感じていたという。その矢先の金城の契約締結。「私たちは1年目からMLBのスカウトが来ていることを謳っていましたが、今回本当に参加選手が契約を勝ち取りました。他の選手からは『刺激になった』などの反応が見られます。私も本当にうれしい気持ちでした」と喜びを語る。

「陽の目を見ない場所に光を」という確固たる理念のもと、野球界における世界の登竜門としての役割を確立しつつあるJWL。金城が切り開いた新たな可能性は、リーグの価値をさらに押し上げたことは間違いない。今後、同様なルートでMLBに挑戦する選手が現れる可能性は十分にある。

(長嶺 真輝 / Maki Nagamine)