明治大学付属世田谷中の入学式に臨む生徒ら(8日、東京都世田谷区で)

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 東京都内の有名私大が私立中高の系列校を増やしている。

 少子化の中、早くから優秀な生徒を「囲い込む」ことが狙いで、中高側と大学側の思惑が一致している。有名私大への「進学パス」を得たい保護者の思いもあり、いずれの系列校も人気を集めている。(伊藤甲治郎、熱田裕雅)

「受験気にせず」

 「これまでの教育の伝統を大切にし、同時に明治大学の様々な力をお借りし、革新的な教育を行っていきたい」。今月8日、東京都世田谷区の明治大付属世田谷中学校の入学式で、谷口哲郎校長(59)が、新入生148人とその保護者を前に力強く語った。

 同校を運営する「日本学園」は1885年創立。最高裁長官や企業社長らの人材を輩出してきた伝統を持つ男子校だが、近年は人気が低迷していた。この春からは明治大系列の付属中高となり、校名を変更し、共学校となった。明大にとって42年ぶりの系列校の設置で、生徒の7割の推薦枠が用意されるという。

 この日、正門には明治大のスクールカラー「紫紺」に白抜きされた学校名の表札が掲げられていた。記念撮影をしていた新入生の女子(12)は「6年間は部活動と勉強を両立して頑張り、明大に進みたい」と話した。母親(45)は「受験を気にせずに学校生活を送れるのが、最大の魅力だ」と語った。

競い合い

 各校の頭文字から、「MARCH」と呼ばれる東京の有名私大5校は、競い合うように系列校などを増やしている。

 先んじたのは中央大で2010年度に、横浜市内の女子中高の校名を変え、大学名を冠した系列校とした。青山学院大は16年度に横浜市、19年度にさいたま市の、それぞれ私立校を系列校とした。

 立教大は25年度入学から、東京都内の系列女子中高からの推薦枠を拡大。さらに今月17日には、横浜女学院高(横浜市)などと連携協定を結び、推薦制度を設けると発表した。

 法政大は3月、東京家政学院大併設の東京家政学院中学・高校(東京都千代田区)を27年度から系列校化すると発表した。

出願者3倍

 系列校になったことで、いずれの中高とも多くの受験生を集めている。日本学園中では22年度入試の出願者数は323人だったが、この春の26年度入試では1025人と3倍に増えた。

 系列校化に合わせて、共学化したり、校舎を整備したりする学校も多い。進学塾「サピックス」によると、系列校となった学校のほとんどは偏差値が上昇している。広野雅明・教育事業本部長は「大学受験で苦労させたくないという親の安定志向が高まっており、人気に拍車を掛けている」と指摘する。

少子化危機感「手を打たないと」

 大学が系列校を増やす背景には、少子化への危機感がある。1992年に205万人だった18歳人口はその後、ほぼ毎年減少しており、2025年には110万人にまで落ち込んだ。25年の出生数は70万人で、今後も減少が続くと予想されている。

 「将来の少子化をにらむと、今のうちに手を打っておかないと生き残れない」。首都圏にある有名私大の幹部の一人は打ち明ける。系列校を増やして、中高6年間かけて高い英語力や理系の学力を身につけさせることで、優秀な人材を大学に確保したい考えだ。

 大学入試の変化も影響する。入学前年の秋から行われる総合型・学校推薦型選抜(年内入試)での合格者が増える一方で、誰もが受けられる一般入試の枠は狭まっている。その結果、大学まで進める系列校の魅力が高まっている。

 一方、受験せずに大学に入れることで生徒が中だるみしたり、進路選択が狭まったりするデメリットも考えられる。

 受験に詳しい森上教育研究所(東京)の森上展安代表は、「医師や弁護士を志す生徒が系列大を嫌い、別の高校に進学するケースもみられる。進学校、系列校両方の特性や子どもの好みをしっかり検討し、進路を考える必要がある」と指摘する。