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カラスはなぜ黒いのでしょうか。

【写真を見る】カラスはなぜ真っ黒?「黒さを生み出すスイッチ」が切れることなく入り続けている可能性【岡山大学】

身近な存在でありながら長年はっきりと分かっていなかったこの疑問に、分子レベルから迫る新たな研究成果が発表されました。

岡山大学の研究グループ(竹内栄教授、相澤清香准教授ら)は、羽の色を決める「MC1R」という受容体に注目しました。その機能を詳しく調べた結果、黒さを生み出す“スイッチ”であるMC1Rが、カラスでは切れることなく入り続けている可能性が明らかになりました。

この研究成果は、4月6日に国際学術誌「General and Comparative Endocrinology」のオンライン版に掲載されました。

羽や体の色はどう決まるのか?

鳥の羽や動物の体の色は、主に2種類の色素のバランスで決まります。
黒っぽい色をつくる「ユーメラニン」と、赤や茶色っぽい色をつくる「フェオメラニン」です。

このバランスをコントロールしているのが、色素をつくる細胞(メラノサイト)にある「MC1R」というタンパク質です。

「MS1R」は色の切り替えスイッチ

MC1Rは、いわば体の色を切り替えるスイッチのような役割を持っています。

通常は、「α-MSH」というホルモンが働くとMC1Rがオンになり、黒い色素(ユーメラニン)が多く作られます。

一方で、「ASIP」という物質が働くとスイッチが弱まり、明るい色(フェオメラニン)が増えます。この仕組みによって、動物の体には模様や色の違いが生まれます。

強い黒色を生む遺伝子変化

これまでの研究で、MC1Rの特定の変化(遺伝子変異)が強い黒色を生むことが分かっています。

たとえばマウスやニワトリでは、たった1か所の変化によって、MC1Rが常にオンの状態(ずっとスイッチが入った状態)になります。その結果、黒い色素が作られ続け、全身が黒っぽくなります。

【図2】の左は野生型、右が MC1R の 92 番目の グルタミン酸(E)がリシン(K)に置換された E92K 変異体です。

左の野生型は、【図1】のように、α-MSH やASIPが体のそれぞれの場所に応じてMC1Rに作用することで、黄色や黒の縞模様が形成されています。

いっぽう、右の黒いひよこでは、α-MSH やASIP の存在に依存せず,MC1Rが常に活性状態になっていることでユーメラニンのみが合成され続け、黒くなっています。

カラスでは何が起きているのか

では、全身がほぼ均一に黒いカラスではどうなっているのでしょうか。

研究チームは、ハシブトガラスのMC1Rを細胞レベルで詳しく調べました。その結果、驚くべきことが分かりました。

カラスのMC1Rは、ホルモンの刺激がなくても強く働き続けており、常に黒い色素を作る状態になっていたのです。
さらに、ホルモンを加えてもほとんど変化がなかったことから、もともとほぼ最大レベルでスイッチが入っていると考えられます。

つまり、カラスでは「黒くするスイッチが常に入りっぱなし」になっている可能性が高いのです。

他の鳥との違い

他の鳥と比べると、カラスのMC1Rにはいくつもの特徴的な違い(アミノ酸の変化)があることも分かりました。

これらの変化は、タンパク質の重要な部分に広く分布しており、複数のカラス種で共通して見られます。

また、一部の変化は他の黒い鳥でも見つかっていますが、それだけではカラスのような強い働きは再現できませんでした。

このことから、カラスの黒さは「1つの変化」ではなく、「複数の変化が組み合わさることで」生まれていると考えられます。

研究の意義

この研究は、「同じ黒い色」であっても、その仕組みは生き物ごとに異なる可能性があることを示しています。

つまり、生物の進化は1つの方法に限られるのではなく、さまざまな仕組みを使って似た特徴にたどり着くことができるということです。

また、MC1Rは人間を含む多くの動物で、肌や髪の色、紫外線への反応にも関わっています。

そのため、この研究は色の仕組みだけでなく、細胞の働きやシグナル伝達の理解にも役立つと期待されます。

岡山大学の竹内教授は次のように話しています。

「30年前に、鳥の羽の色がMC1Rによって制御されることを初めて報告して以来、研究を続けてきました。定年を前に、子どものころから身近だったカラスの黒さの理由を明らかにでき、深い感慨があります。」