「おもてなし」は本当に必要?日本に訪れる超富裕層が「求めているもの」

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世界で増え続ける「超富裕層」は、何を求めて日本にやってくるのか。インバウンド対策では「おもてなし」と称して訪日客を手厚いサービスで歓待しているが、それは果たして彼/彼女らが望んでいるものなのか?『超富裕層におもてなしはいらない 世界の一流が日本に訪れる本当の理由』(講談社+α新書)の著者で金融コンサルタントの高橋克英氏に解説してもらった。

【前編記事】「世界的なカネ余り」で億万長者が爆増…超富裕層が「お金」よりも大事にしているもの〉より続く。

旅先でも「失敗したくない」

さらに重要なのは、バカンスに適していることに加え投資対象としての価値があるか否か。彼らは不動産価格の上昇によるキャピタルゲインを期待し、リゾート先でも物件を探している。サザビーズのような海外高級不動産売買サイトには、東京や京都と並んでニセコの物件が多数掲載されています。

ニセコは国際的な流通市場がある一方、米アスペンや仏クールシュベルなどの世界的リゾート地に比べ、まだ割安。だから富裕層はここを訪れ、伸びしろがあることをその目で確認し、次の投資やビジネスを検討するのです。

『超富裕層に〜』では、次なるニセコの候補として、白馬や宮古島などを挙げました。これらに共通しているのは、海外富裕層向けのコンテンツやインフラが整いつつある点です。高級外資系ホテルは徹底した市場分析と合理的な経営判断に基づいて出店します。成功しているリゾート地を研究すれば、なぜそこにマネーが集まるかがわかるでしょう。

こう言うと、訪日する富裕層は「ただのブランド好きじゃないか」と思われるかもしれませんが、実はブランドにこそ、富裕層を惹きつける秘密が詰まっているのです。

先に述べたとおり、彼らはお金よりも時間を優先し、仲間との体験を大切にします。結果、本当のお金持ちは派手さとは無縁の、きわめて合理的な思考で人生を選びます。言ってしまえば彼らは旅先でも「失敗したくない」のです。

私たちも、はじめての海外の地で見慣れたマクドナルドやスタバがあるとホッとした気持ちになりますが、彼らにとっては「高級ブランド」こそが安心材料。現地体験も魅力ですが、多くの富裕層は「慣れたもの」を選ぶ傾向があります。「ここに泊まれば安心」「失敗しない」という信頼感を何よりも優先するのです。

観光業は世界情勢にも左右される水物だ。莫大なマネーを消費と投資の両面で継続的に落とすのは、やはり富裕層である。高橋氏は、「おもてなし」はあくまで「心意気」であって、「売り物」ではないと言う。

日本の観光業は信頼感よりも「丁寧さ」や「特別な歓待」を売りにする傾向があります。しかし、そもそも外国人富裕層は「おもてなし」の文化の中で生きていません。日本の旅館や飲食店のサービスを受けて「丁寧な接客だ」とは感じるでしょうが、それ自体に特別な価値を見出していない。むしろ、過度な笑顔や丁寧さは「なぜここまで親切なのか」と疑われることもあります。豊富な人生経験から、ニコニコすり寄って来られると「ダマしに来たのではないか」と警戒するのです。

実は「放っておいてほしい」

おもてなしは「至れり尽くせり」とも言い換えられます。日本の高級旅館やホテルは、細やかな配慮を売りにしていますが、海外の富裕層からすれば行き届きすぎたサービスは窮屈に感じることもあるようです。彼らは自由を重視し、自分で選択することに価値を置いていますから。

彼らが旅先に求めるもののひとつは、実は「何もしない贅沢」です。ホテルやヴィラの一室で、雄大な自然を眺めながら、家族や仲間とゆっくり過ごす……。そのために、無駄なストレスがない環境を欲しがります。スムーズなアクセスや高いグレードの設備は大前提のうえで、あとは「放っておいてほしい」。結果として、日本の伝統的な旅館ではなく、富裕層の対応に長けた外資系ホテルやレストランを選ぶのです。

「おもてなし」は日本の大切な文化ですが、それが海外の富裕層にも響くとは限らない。それよりも、グローバルスタンダードなサービスやインフラ整備につとめるほうが、彼らにとっての魅力や信頼度は高まることに、日本は気づかなければなりません。

ギブ・アンド・テイクの世界に生きる富裕層に、過度にへりくだる必要はありません。彼らはサービス提供者とも対等な関係を求めます。「おもてなし」と称して不用意にサービスを提供したり、安売りしたりすることはやめたほうがいいと私は考えています。

日本が「観光立国」を目指すのであれば、海外富裕層をよく理解することは必要不可欠です。総花的なインバウンド頼りの「地方創生」では、一過性のもので終わってしまう可能性が高いです。

あらゆるビジネス領域において、富裕層の性格を摑み、彼らに消費と投資を続けてもらうようなサイクルを作る。それが、この国が生き残るカギなのではないでしょうか。

「週刊現代」2026年4月27日号より

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