地上波は眼中になし…「TBSドラマ」が一強になった背景

写真拡大 (全5枚)

いま、民放ドラマのトップをひた走るテレビ局と言えば「TBS」と誰もが答えるだろう。

近年の作品を振り返るだけでも、日曜劇場(日曜午後9時)では『半沢直樹』『VIVANT』といった社会現象級の盛り上がりを見せる作品が生まれただけでなく、『テセウスの船』『ドラゴン桜』『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』といった幅広いジャンルのドラマも高視聴率をマークし、圧倒的な存在を放っている。

もちろん、日曜劇場だけではない。火曜午後10時枠は数多くの女性視聴者に支持されており、『逃げるは恥だが役に立つ』『義母と娘のブルース』『恋はつづくよどこまでも』『私の家政夫ナギサさん』『じゃあ、あんたが作ってみろよ』のような胸キュン要素や家族愛を掛け合わせたパッケージがすっかり定着した。

テレビ離れが深刻な現代、なぜTBSドラマは勝ち続けるのか?

前編記事「『VIVANT』最新作の2クール連続放送でさらに加速か…「TBSドラマ」が一強のワケ」に続き、業界関係者の声を聞く。

日曜劇場を変えた『JIN-仁-』『半沢直樹』

「TBSドラマが頂点に立っていることを考えるうえで、日曜劇場の変化は外せないでしょう」

TBSドラマの強みを語ってくれたのは、15年近くドラマライターとして活躍するB氏だ。

「週明け直前の日曜夜ということで、かつてはホームドラマやピュアなラブストーリーといったライトでハッピーなイメージの作品が多かった。そんななか、胸が痛むような重厚なテーマや勧善懲悪路線のドラマを増やし大きく舵を切った。

転換点としては『JIN-仁-』や『半沢直樹』の影響が大きいと思います。『JIN-仁-』で生死に向き合った重い題材でも大衆の熱狂を作れることが分かり、さらに『半沢直樹』では悪を悪としてきちんと打ち返す快感を現代の視聴者に再提示した。この2作のヒットを参考に、現在の路線に変更したことが、TBSドラマの格を上げたのは間違いないでしょう」

B氏は続ける。

「リアルタイム視聴者はのんびりと夜を過ごしたいのではなく、“スッキリしたい”という欲望や“重いテーマにも向き合いたい”という興味関心を持っていることに気づけたのは、現在の多くのドラマに影響を与えていますよ。もちろん、テーマや題材だけでなく、福澤克雄監督をはじめとしたスタッフが徹底的にカメラワークや演出にこだわり抜いた映像を作っていることも外せないと思います」

働く女性の違和感を盛り込んだ火曜10枠

さらにB氏は、火曜10枠の功績を語る。

「火曜10時枠も重大なエポックメイキングだと思います。従来の恋愛要素だけでなく、仕事や結婚、家族、ジェンダー、格差といった今の女性が抱える違和感をテーマに入れ込んだ作品をヒットさせたこともTBSドラマの強さを語るうえでは外せない。

その代表作は『逃げるは恥だが役に立つ』でしょう。家事の大変さ、雇用の不安定さ、結婚観のズレといった現実的な問題を、説教臭くならない絶妙なバランスで物語に織り込んだのは実にお見事でした。ラブコメに薄く社会性を混ぜるのではなく、“社会性のあるラブコメ”というジャンルを作り出したことで、この枠はどんどん発展していっていますよね」

また、TBSドラマの仕事を請け負うことも多い、ドラマ制作会社スタッフ・C氏からはこんな意見も挙がった。

「TBSはプロデューサーの方々が優秀だと思います。時代を見越した企画立案をする力はもちろん、全体を統括する能力に優れている人が多い。

特にすごいのは、新井順子さん。彼女は、関連会社のTBSスパークルに所属しながら、『Nのために』『アンナチュラル』『MIU404』『最愛』、映画『ラストマイル』といったヒット作を数多く手がけている。新井さんは作家性の強い脚本家のやりたいことや思いを汲み取りながら、ヒットを生むような仕掛けや演出を作るのがうまいんです」

若手プロデューサーも積極的に起用

C氏はプロデューサーの起用についても絶賛する。

「TBSは若手プロデューサーにも比較的チャンスを与えてくれている局だと思います。火曜10時枠や深夜枠、配信企画などを通じて、早い段階でハンドルを握らせる文化があるので、若いプロデューサーがメキメキと頭角を現している。その点、フジテレビは若手になかなかチャンスが巡ってきていない印象を受けます。こういった育成機会が多いことも、ドラマが面白くあり続ける理由なのではないか」

では、なぜ他局はこれを簡単にマネできないのか。キー局でディレクターをするD氏は嘆く。

「日本テレビは原作者との関係をどう築くかという問題で、局として非常に慎重にならざるを得ない状況にあると聞いている。フジテレビは再建途上で、たまに話題作が生まれるとすぐにその続編にすがる風潮がある。テレビ朝日は中高年層に向けた安定路線に完全シフトしており、局全体に攻める気概が感じられない。

もちろん局ごとに事情はあることは重々承知しています。でも、あれだけ盤石のTBSが『TBS NEXT WRITERS CHALLENG』(通称、ライチャレ)という即戦力作家を探すコンクールを実施するなど、まだまだ新しいことにチャレンジしている姿を見ると“これじゃ勝てないな”と思うのが本音です」

TBS一強の牙城を崩すのは?

盤石の人気枠と優秀なプロデューサーを抱えつつ、新しい取り組みにも果敢にチャレンジするTBS。7月からは放送開始される話題作『VIVANT』が大ヒットすれば、他局はますます差を付けられてしまうだろう。

向かうところ敵なしのTBSに待ったをかけるのは、莫大な予算を抱えるNetflixやAmazonプライム・ビデオをはじめとする配信プラットフォームだけなのか……?

刺激を受けた他のキー局の反撃を見たいところだ。

【あわせて読む】いよいよ「テレビは終わり」なのか…業界関係者が明かす「今春のテレビ改編」で起きている異常事態

【あわせて読む】いよいよ「テレビは終わり」なのか…業界関係者が明かす「今春のテレビ改編」で起きている異常事態