(C)2026「炎上」製作委員会

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「炎上」(10日公開)は、5、6年前から注目されるようになった「トー横キッズ」の実態に踏み込んでいる。

カルト信者の家に育った樹理恵は毎日の体罰に耐えかね、幼い妹に後ろ髪をひかれながら家を出る。行き着いたのが家出した少年少女が集う新宿歌舞伎町の広場だった。

リストカットを繰り返す青年やどこでも小用を足してしまう少女…。どれも個性として笑い合い、受け入れる空気に吃音(きつおん)が残る樹理恵は「ここが居場所」と感じる。

だが、それは「トー横」の表層であり、ねぐらのビジネスホテルに場所を移してからはドラッグ、売春…次々に負の部分を目にすることになる。妹を助け出す資金を得るため、樹理恵も売春に手を染めていくが…。

樹理恵を演じるのは森七菜(24)。10代のあどけなさが自然に見え、図らずも染み込んでいる「信仰」が時折のぞいてみえるような好演だ。

「撮影中はじゅじゅ(樹理恵のニックネーム)として『今』を生きることしか考えていませんでした。出来上がった作品を見て、初めてじゅじゅがつらかった、という感情を受け取りました」と振り返る。入念に準備することで知られているが、改めて繊細な役作りを実感させる。

長編デビュー作「WE ARE LITTLE ZOMBIES」がサンダンス映画祭審査員特別賞となった長久充監督は、歌舞伎町ロケのリアルな描写に樹理恵の心中を移すファンタジックな映像を織り交ぜる。トー横の地獄のような裏側やそれを俯瞰(ふかん)する「天上のスイートルーム」から現代の格差社会を視覚化してみせる。

樹理恵の周りにはアーティストのアオイヤマダ、一ノ瀬ワタル、曽根俊介ら個性派がそろい、トー横のさまざまな顔を実感させる。

どこまでも救いがないようで、そこを生き抜く主人公の強さが伝わってくる。悲惨にしか見えないはずのラストに、なぜかホッとさせられた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)