【桜花賞】スターアニスが圧巻V!心身ともに成長した2歳女王が完全無欠の走りで桜の女王に

桜花賞をスターアニスが優勝(c)SANKEI
「ドンッ!!バンッ!!」――桜花賞のゲート入り時、大きな衝撃音が流れた。7枠13番に入っていたリリージョワがゲート内で暴れたようで、ゲートを壊してしまったのだ。
どこかバツが悪そうにゲート裏に戻ったリリージョワの馬体検査が始まると、既にゲートに入っていた馬たちはいったん外へ出される。
競走馬にとって一度レースへの集中を高めていた状態からまた解放されてしまうのは決して好ましいことではなく、場合によってはこれが敗因となるケースもあるが......
すでに7枠15番のゲートに入っていたスターアニスはいたって素直にゲートから出て、再び輪乗りに混ざっていった。
その姿はまるで「レースにアクシデントは付き物だもの。仕方ないわ」と言わんばかりに。この様子を見た瞬間、筆者はスターアニスの勝利を確信した。
昨冬の阪神JFを強い勝ち方で制し、2歳女王に輝いたにもかかわらず、桜花賞におけるスターアニスの評価は決して高いものではなかった。
阪神JFからの直行を危惧する声やメンバーレベルが上がったことによる不安視など、最終的には単勝2.9倍の1番人気の支持を受けたが、レースの直前まではクイーンCを制した良血馬ドリームコアと3.0倍前後で拮抗。返し馬までは2番人気に甘んじるほどだった。
4ヵ月ぶりの実戦となるこのレース。久しぶりにパドックに姿を現したスターアニスはすっかり成長を遂げていた。
馬体重自体はプラス2キロと大きく変わったわけではないが、前肢、後肢の筋肉がボリュームアップしてスピード感溢れる走りを見せてくれると予感させるほどだった。
爆発的なスピードを生み出す強靭な馬体、そしてレース直前のアクシデントにも動じぬ強い心――これぞ女王にふさわしい。
リリージョワの馬体検査が済み、外枠発走が発表されると再び出走馬はゲートの中へと誘導を受ける。
二度目のゲート入りでもスターアニスは嫌がるしぐさを見せることなくすんなりとゲートイン。そして19番目のゲートに回されたリリージョワもゲートに入り、ようやくレースが始まった。
外枠発走で戸惑ったのか、逃げると思われたリリージョワが後方からのレースとなる意外な展開の中、ハナを争ったのはロンギングセリーヌとルールザウェイヴ、プレセピオの伏兵の馬たち。
人気に推されたドリームコアとクリストフ・ルメールは真ん中よりやや後ろ、そしてアランカールと武豊は早くも最後方に落ち着いた。
人気馬がいつもの位置を取りに行く中、スターアニスはなかなか落ち着かない。
ゲートの出がこれまでで一番よかったせいか、馬が行く気になってしまい普段より前に付けそうになるのを鞍上の松山弘平が必死に手綱を絞って制御。
そのためスターアニスは口を割ってなかなか落ち着かないように見えたが、3コーナーに入るころには8~9番目の位置取りに付け、ようやく折り合って走る形になっていた。
前を行く3頭が激しく競り合ったためか、前半の4ハロンは過去5年の中でも最速となった45秒7。
この後も1ハロン11秒台の時計が連発するのは間違いないだけに完全な差し馬決着になることが予想される中、18頭は第4コーナーを回り、最後の直線に入った。
逃げていた3頭が軒並み失速する中、ここで動いたのが阪神JF2着のギャラボーグ。逃げ馬たちを見ながら4~5番手で進めていた彼女が早めに先頭に立ったが、その外から風のように飛んできた馬がいた。
それこそがスターアニスと松山弘平だった。
ゴールまで残り300mを過ぎたところで前を行くギャラボーグを並ぶ間もなく抜き去ったスターアニスは先頭に立つと、さらに加速して後続を突き放しにかかった。
後続馬が懸命に追いかけるのを尻目に、彼女はまるで別のレースを走っているかのようにスピードを上げていき、その着差を広げていく。
ゴールまで残り100m。スターアニスは追いすがるギャラボーグを完全に突き放し、その差は軽く2馬身以上に。
内を突いたジッピーチューンとアイニードユーの伏兵たちと大外から飛んできたアランカール、ナムラコスモスらが懸命に3着の座を狙っていたが、もはや彼女の眼中には入らないほどはるか遠くで行われていた。
そして迎えたゴール。松山弘平が左手を高く上げたように会心のレースだったのだろう。
レース後のインタビューでも「馬を信じ、彼女のリズムで走れれば負けない」と語ったように馬を信じていたからこその騎乗だった。
彼女の持ち味をフルに引き出した結果、上がり3ハロンはメンバー最速となる33秒7を叩き出し、勝ち時計は1分31秒5とレースレコードに匹敵する好時計を記録。
2着のギャラボーグには阪神JF時よりもさらに1馬身の差をプラスした2馬身半という決定的な差を付け、誰もが認める桜の女王となった。
桜の香りを身にまとった彼女は今後、牝馬二冠を目指してオークスへ挑むのか、それとも爆発的なスピードを生かしてNHKマイルCで牡馬とマイルの頂点を争うのか――風薫る5月がやってくるのが本当に待ち遠しい。
■文/福嶌弘
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