山口周氏の公式Xより

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日本の一人当たりGDPが世界で37位にまで下がったことがX(旧Twitter)で取り上げられ、過去の高順位からの急落が注目されている。著作家・山口周氏の投稿が1万以上のいいねを集め、日本経済の停滞をめぐる議論が広がった。

「日本の一人当たりGDPは2000年には世界5位で、ルクセンブルクやスイスといった小国を除けば、実質的に世界トップクラスでしたが、2025年には37位まで低下し、旧共産圏と同程度になっています」(4月2日10:10の投稿)

1人当たりのGDPは「GDP(国内総生産)」を「総人口」で割った指標で、国民1人が平均してどれくらいの付加価値を生み出したかを示す。この数字から何がわかるのかと言えば、「国民の平均的な経済水準(生活の“物的豊かさ”の目安)」「労働生産性」「国力や国際的ポジション」「為替やインフレ」などである。

ドル換算で評価するため、円安の影響が大きいのは間違いないが、そもそも円安自体が国力の低下を意味する。一般的に1人当たりのGDPが低下している国に共通している理由として、高齢化や労働人口減少、低付加価値産業への依存などが挙げられるが、北欧諸国やドイツも高齢化は進んでいるので、日本には他の理由があると考えるべきだ。

「非正規労働者が増えて1人あたりの所得が減った」との見方もあるが、そもそも欧米には正規(正社員)と非正規に賃金差はない。欧米では同一労働同一賃金が基本なので、正規であっても非正規であっても賃金は変わらない。日本も古い労働慣行を根本的に変えるべきである。

状況改善には労働人口を増やす

言論プラットフォーム「アゴラ」に投稿したストラテジスト永江一石氏によれば、状況を改善するには、①生産性を上げる政策(DX、投資、規制改革、教育、研究開発)②労働人口を増やす政策(出生率、女性就業、移民高齢者就業)が有効とのこと。永江氏は「両方だめだが、とくに②が決定的にだめ」と指摘し、外国人を入れるなとの主張を変えない“ネトウヨ”を批判する。

Xには「日本は全くオワコンではない」と擁護する意見も混在するが、まずはこの25年間の日本の歩みを直視しなければ復活はあり得ない。そして、ほとんどの期間で政権を担っていたのは自民・公明であり、主として自民党に大きな責任があるのは言うまでもない。

先の総選挙のときの第一声で「日本列島を強く豊かにするためには、何と言っても経済成長が必要だ」と発言し、成長投資の重要性を主張してきた高市早苗首相に期待と支持が集まったのは、日本凋落(ちょうらく)の社会背景と符合する。つまり、①を積極的にやろうということなのだが、②の方は腰が引けているようにしか見えない。

山口氏はアルゼンチンの例を挙げ社会不安の可能性を警告する。アルゼンチンでは経済的な停滞の中で人々の不満が蓄積し、その不満に迎合するポピュリズム政治が生まれ、それが最終的には軍事政権の成立を招いた。

経済的な地位の低下が社会や政治に与える影響について、さらに冷静な議論が必要だ。