筋トレ後は「関節のみ」をピンポイントで冷やす!「間違ったアイシング」が筋肉の成長を台無しにするワケ【鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ】
筋トレ後のアイシングで冷やすべきは筋肉ではなく「関節」
筋トレ後に身体を冷やすと筋肉はどうなる?
トレーニング後に冷水シャワーを浴びたり、タンクトップなどの薄着をしてほてった身体を冷やしている人も多いようですが、2019年、オーストラリアのディーキン大学から、筋トレ後の身体を冷やすことによる、筋肥大への影響を調べた研究が発表されました。
16名の男性トレーニーを対象に、週3回の筋トレを7週間行い、筋トレ後に10℃の水に15分間足をつける「冷水浴群」と何もしない「コントロール群」に分けて、タンパク質合成率や分解酵素の量、そして筋線維の横断面積の分析が行われました。
結果として、まず速筋線維であるタイプⅡ線維の横断面積は、コントロール群では有意に増大していたのに対し、冷水浴群では変化がないどころか若干減少していました。そして、タンパク質の分解酵素の量は、コントロール群では有意な変化は見られず、冷水浴群では筋トレ後に筋タンパク質の分解酵素が大幅に増えていることがわかりました。筋トレ後に身体を冷やすことで筋タンパク質の分解酵素の量が増え、筋肥大が抑制されたというわけです。せっかくのトレーニング効果を、冷水浴が台なしにしてしまっていたのです。
同様のデータは、2023年にニューヨーク市立大学が発表した、筋肉の成長に対する冷水浴の効果に関するメタ分析でも明らかにされています。冷水浴が筋肉の成長つまり筋肥大率に及ぼす影響について4~8週間分析が行われ、筋トレ直後に筋肉を急激に冷やすことで、わずかながらも筋肉の肥大率に悪影響を及ぼしたことが明らかになりました。つまり、筋トレ後に身体を冷やすことは筋肉の成長を妨げる、という結論です。
筋肉には、トレーニングによる筋線維の微細な損傷が回復する過程で起こる炎症反応やサテライト細胞の活性化によって再構築と成長が促され、筋肉が大きく強くなるというメカニズムがあります。筋トレ後に身体を冷やして炎症を抑えることは、筋肥大において重要な役割を担うサテライト細胞の活性化を抑制し、筋肥大率を減少させてしまうのです。
さらに、筋肥大率を向上させるためには、筋トレ後だけでなく筋トレ中に薄着をして身体を冷やすことも避ける必要があります。
体温と筋肥大の関係
2003年の西オーストラリア大学の研究で、筋肉の温度と収縮速度の関係について調査が行われ、筋肉の温度が高くなればなるほど、収縮速度もそれに伴って速くなることが明らかになっています。つまり、筋トレ中にタンクトップなどの薄着でいると、せっかくウォームアップやトレーニングで温まった筋肉が冷えてしまい、筋力の低下やケガのリスクの増大、そして筋肥大率の低下を招き、筋肉の回復スピードを遅らせることにもつながってしまうのです。
ただし、冷水浴すべてがマイナスに働くというわけではありません。冷水浴やアイシングにもメリットがあり、アスリートたちは筋肥大率を阻害せずに身体を冷やすアイシングを実践しています。
冷やすべきは筋肉でなく「関節」
2017年のシドニー大学の研究で、筋肉の冷却と筋肉痛への関連について調査が行われ、筋肉を冷やすことによる筋肉痛の発生率の低下とその軽度の減少が認められました。
そして、2022年にはスウェーデンのエルブルー大学から、運動の種類が冷却に及ぼす影響についてのレビュー論文が発表されました。「筋力トレーニング」、「スプリントトレーニング」、「持久力トレーニング」の3種類の運動を行った後に急性冷却を行い、疲労感やパフォーマンスの回復度の変化を分析したもので、筋力トレーニングと持久力トレーニングに関しては、冷却後も特に変化はありませんでしたが、スプリント運動では、冷却することで神経筋機能の回復速度の向上が認められました。つまり、身体を冷やすことには、筋肉痛の発生予防と高強度の運動の神経疲労の回復促進というメリットがあるというわけです。
基本的に高強度の運動は関節への負担が強く、関節周囲の炎症が筋肉痛の原因となります。そのため、正しくアイシングを行うには筋肉自体を冷やすのではなく、関節を冷やすことが重要となります。例えば、高負荷の脚トレをやってかなり疲労感が強いときは、太ももではなく炎症が起こりやすいひざを冷やすことが有効ですし、大胸筋を鍛えたい場合も、肩関節を冷やすことで筋肥大率への悪影響を抑えながら筋肉痛の予防、疲労感の軽減を促します。
2021年のセントラルランカシャー大学のアスリートを対象にした研究では、炎症を抑えるための冷却は10~15℃の温度で10~15分行うのが、もっとも効果的であることが明らかになっています。単純に冷水浴をしてしまうと関節だけではなく筋肉も冷えてしまうので、氷嚢を使って関節のみを冷やすようにしましょう。
結論
✓筋トレ後に身体を冷やすと、筋肉の回復を遅らせ筋肥大を阻害する可能性がある
✓筋肉の炎症を抑えるアイシングは、10~15℃の温度で10~15分を目安にし、筋肉自体ではなく関節を冷やすのがポイント
【出典】『鍛え方の最適解がわかる 10万論文筋トレ』著:理学療法士・パーソナルトレーナー 論文男

