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政府は昨年12月末、本格的な洋上風力発電事業では国内初となる事業者公募の選定結果を公表した。圧倒的な売電価格の安さで、三菱商事を中心に構成する企業体が、対象となった全3海域を「総取り」。事業の脱炭素化に向けて再生可能エネルギー事業の拡大を目指す他の応札企業は、「勝負にならなかった」(大手電力幹部)と、唖然(あぜん)とした様子を隠せない様子だった。

 洋上風力では、公募や事業ごとに「ラウンド」と呼ばれるのが一般的だ。日本での第1ラウンドとなる今回は、政府が関連法に基づき洋上風力の「促進区域」に指定した千葉県銚子市沖、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、同県由利本荘市沖の計3海域が対象。選定された事業者は、30年間海域を占有して発電事業を営むことが可能となり、うち20年間は固定価格で電力を販売できる制度(FIT)が適用される。

 入札では、この売電価格の安さを競う「価格点」が最高120点、事業者や計画の信頼性などを評価する「事業実現性に関する得点」も同120点で、計240点満点で争われた。

 規模が最も大きい由利本荘市沖では、JERAや、再エネ開発のレノバなどがそれぞれ企業体をつくり公募に参加。だが、1位の三菱商事系連合は1キロワット時当たり11.99円という「太陽光並みの低価格」(大手電力幹部)で、2位のJERA系に40点以上、3位のレノバ系に50点以上の差を付けた。

 同様に、三菱商事系連合は他の2海域でも他社を圧倒。三菱商事は、中西勝也次期社長率いる電力事業部門が中心となり、買収した蘭電力大手エネコの技術力や、米アマゾン・ドット・コムへの長期売電契約などを背景にしたバイイングパワーをフル活用。「採算性に疑問が出るほどの低価格」(入札参加企業の関係者)という声が出るほどの価格を提示したことが評価された。

 一方で、結果について、「この価格で、国内の洋上風力産業育成につながるのか」(同)といった声も出ている。各社の戦略見直しも含め、第1ラウンドの結果は、次回以降の公募に大きく影響を与えそうだ。

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