形成外科医として長年肌と向き合ってきた落合博子さんは、世の中にある美容情報は科学的ではないことが多いと指摘します。例として挙げるのが化粧水の効果の意外な低さ。なぜ、化粧水はあまりメリットがないのでしょうか。またその代わりに塗るべきものとは?

※本稿は、落合博子『美容常識の9割はウソ』(PHP研究所)の一部を再編集しました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

■化粧水はむしろ使わなくていい

「洗顔後には肌が乾燥しないように化粧水をたっぷりつけるのがよい」と、みなさん当たり前のように思っているかもしれません。

でも、化粧水を使うことのメリットはあまりないというのが、正直なところです。

化粧水はたっぷりとつけることが前提ですから、ほぼ水分からできています。そこにほんの少し保湿成分が配合され、油分はほぼ入っていません。

たくさん使えば多少しっとり感が得られるかもしれませんが、そのしっとりの正体は、肌に残ったじゃっかんの保湿成分。肌自体がうるおっているわけではありません。ですから時間が経てば、肌自体は元どおりに乾燥してしまうのです。

■化粧水を使うとかえって肌が不調になることも

わたしたちはよく、「肌にうるおいがある」と表現しますが、このうるおいがどこで保たれているのかといえば、肌表面の角質層。ですから角質層で水分が適度に保たれていれば、肌はうるおっているということになるわけです。

さて、角質層はもともと、水分や油分を適切に保つ機能を持っていますから、角質層の本来の機能を妨げずにいれば、肌はつねにうるおいを維持できます。

化粧水をおすすめしないのは、この角質本来の機能を乱して、肌を弱めてしまうリスクがあるからです。

化粧水で疑似的に水分が補われると、角質層の構造が崩れ、細胞間脂質であるセラミドや保湿因子が保持できなくなります。

結果的に、キメも荒れて艶を失います。毛穴や小じわ、ニキビなど、さまざまな不調が起りやすくなってしまうのです。

■では、何を塗ればいいのか

こうして、わたしたちの肌の調子や美しさは、角質層の状態に大きく左右されるわけですが、角質層の表面はもともと、肌がつくる天然のクリームともいえる皮脂で保護されています。

常在菌である表皮ブドウ球菌は、保湿力のあるグリセリンに似た成分をつくることで肌の水分をしっかり守ると同時に、抗菌ペプチドをつくって悪玉菌の増加も防いでいます。

このような作用のおかげで、肌は日々のトラブルをまぬがれて、健康を維持できているわけです。

ただ、やはり洗顔すると皮脂は汚れとともに落ちてしまうため、一時的に乾燥しやすい状態になります。そこで補っておくべきは、化粧水ではないことはもうおわかりですよね。

皮脂に近い成分を補って、一枚保護膜を作ってあげるほうが自然です。

また、そもそも角質の細胞間隙は、セラミド、コレステロール、脂肪酸という脂溶性物質から構成されています。ですから水溶性のものよりも、脂溶性のもののほうが浸透しやすいのです。

化粧水よりも油分が入ったクリームや美容液、オイルのほうが肌に馴染むのはそのためです。

わたしたちはもともと、からだを正常な状態に保つための調整力を持っています。

けれども洗うほど、化粧水で保湿するほど、角質層の機能が落ちて、つねに外からの保湿が必要になるという悪循環を引き起こします。

角質層の保護や修復を最優先にするなら、化粧水は必要ありません。

肌が本来あるべき状態にしてあげるだけで、肌は負担なく健康な状態を維持することができるようになるのです。

■いますぐできる最強の「アンチエイジング」とは

肌本来の機能を保ちながら美しく歳を重ねていくために、どうしてもみなさんにやっていただきたいことがあります。

それは“毎日かならず日焼け止めを塗ること”。

肌を老化させる最たる要因は、「紫外線」です。その紫外線を防御することが、長い目で見ると肌の機能にもっとも大きな効果を発揮します。

なんともシンプルな方法ですが、肌の老化をできるかぎり抑えるためには、とにかく毎日欠かさずに、日焼け止めを塗ってください。

■唯一の老化防止策

肌老化の原因の約8割が紫外線だといわれます。UV-Aは皮膚の奥に届いてシワやたるみの原因となりますし、UV-Bは色素沈着を引き起こしますから、シミや黒ずみの原因となります。

落合博子『美容常識の9割はウソ』(PHP研究所)

皮膚がんのリスクにもつながりますから、そうした意味でも予防は大切です。

そして数々ある化粧品のうちでも、この肌老化に充分な効果を期待できるのは、じつは紫外線対策のみだといえます。「日焼け止めを塗る」というシンプルなケアが、光肌老化を予防するために自分でできる唯一にして、最大のアンチエイジング法なのです。

どんなに「若返り」や「アンチエイジング」をうたった化粧品を使っても、化粧品によって肌が若返ることは、残念ながらありません。化粧品の目的は「肌を健やかに保つ」ことでしかないからです。

でも、紫外線対策は誰にでもいますぐできて、かならず効果を発揮します。

ですから、とにかく一年を通して日焼け止めを塗るよう心がけましょう。

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落合 博子(おちあい・ひろこ)
国立病院機構東京医療センター形成外科医長、再生医療研究室室長、日本抗加齢医学会専門医
1991年東北大学医学部を卒業。医師免許取得後、形成外科、創傷外科の専門医としての勤務を経て、2003年より国立病院機構東京医療センターで形成外科医長を務める。
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(国立病院機構東京医療センター形成外科医長、再生医療研究室室長、日本抗加齢医学会専門医 落合 博子 写真=iStock.com)