【書評】『幽民奇聞』/恒川光太朗・著/KADOKAWA/1980円【評者】澤田瞳子(小説家)古しえより存在したと伝えられる、常ならざる者「キ」。本作は、鬼とも妖怪とも不明な彼らの足跡を追う若き民俗学者・鶯谷を通じ、明治中期に絶えたキ一族の因縁を描く連作小説である。あるいは動乱の幕末に、あるいは明治維新直後の混乱の社会に現れる「キ」は、人ならざる異能によって人間たちと関わる。ただ、彼ら以上にこの世の常識を裏