「月夜行路」第3話の魅力は“『黒蜥蜴』が導く二重構造の妙”と“縦軸を進めた締め”【第3話レビュー】

次回4月29日(水・祝)よる10時 第4話を放送 日本テレビ系水曜ドラマ「月夜行路 ―答えは名作の中に―」(毎週水曜よる10時放送)。
数々の名作ドラマレビュー記事を手掛ける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は、4月22日(水)放送の第3話をどう見たか?場面写真とともに紹介する。
(※以下、第3話のネタバレを含みます)
<極上の“幕の内弁当”のような本作の魅力>
本作は、家族から蔑ろにされ寂しさを抱える専業主婦の涼子(麻生久美子)が、文学オタクで洞察力に優れたバーのママ・ルナ(波瑠)と出会ったことから始まるロードミステリー。今回は特に満足度の高い、極上の“幕の内弁当”のような回であった。
このドラマの軸を改めて振り返ると、結婚していながら思いを馳せる涼子の“元カレ探し”、その道中で偶然起こる“一話完結のミステリー”、さらに名作文学をヒントに謎を解いていく独自のアイデンティティーが重なり合い成立している。
加えて舞台が“いつもの風景”ではない“大阪”であることも、絵的な新鮮さをもたらしている。縦軸の興味深さに加え、毎回楽しめる謎解きと知的好奇心をくすぐるエッセンス、そして映像的な魅力までが詰め込まれている――まさに正味50分の中で複数の楽しさを味わえる(月並みだが)“幕の内弁当”のような満足感がある作品なのだ。
しかし今回の第3話は、その“幕の内弁当”的満足度が一段と高かった。


<『黒蜥蜴(くろとかげ)』が導く二重構造の妙>
まず前回ラストの“引き”となっていた、涼子が家族に内緒で家を空けているという嘘がバレる!? という展開。その顛末が、ありがちなドタバタでごまかされるのではなく、母が娘を思う優しさによって乗り越えられるという意外性が心地よかった。
さらに今回の文学的要素は、通天閣をきっかけに江戸川乱歩の「黒蜥蜴」が紹介され、それが児童向けに「黒い魔女」としてリライトされているという示唆も含んでいた。そしてその構造をなぞるように、事件もまた“もう一つの物語”を内包していたのだ。
今回のミステリーパートである宝石店で発生した殺人事件は、あっという間に起こり、あっという間に解決する。おそらくわずか15分だ。しかしそれはあくまで表層に過ぎず、その裏にもう一つの真相が隠されていたことが明かされる。ノンストレスで颯爽と解決した!と見せかけて、その奥にさらに深い層が用意されている。いわば二重構造のミステリーであり、その展開の巧さとテンポの小気味よさが、視聴者に強い満足感をもたらしたのだ。
また通常、この手の一話完結ミステリーは、結末部分が“付け足し”のように感じられてしまうことも少なくない。しかし本作は違う。二重構造のもう一方の物語には今作らしい“人情”が封じ込められており、ラストではルナという人物の、核心に迫るようで迫らない謎も提示する。作品全体に通底するミステリーを、より強く印象づけたのだ。



<縦軸を進めた完璧な締め>
さらに大ラスでは、涼子の元恋人・カズトに似た人物(?)の存在を匂わせることで、縦軸の物語も確実に前進させた。
今回は連続ドラマとしての掴みの巧さ、一話完結ミステリーの二重構造によるお得感、そして“リライト”という分かりやすい視点を通して提示された文学的ヒント。それらに加え、作品全体を覆う大きな謎と次回への強い“引き”。そのすべてが高いレベルで噛み合った、完成度の高い一話――まさに極上の“幕の内弁当”だったのだ。
しかもこの満足度の高さは、ただただキャッチーな要素を詰め込んだ結果ではない。それぞれが過不足なく調和し、決して互いを邪魔しない。そのうえで、まとまり過ぎることによる物足りなさやチープさもない。むしろ“その先”を知りたくなる余白を残している。そしてそれだけの要素が重なり合いながら、やはり“嫌味がない”のだ。
だからこそこの作品は、肩ひじ張らずに“ながら見”できるカジュアルさがありつつ、涼子の恋のゆくえやルナというキャラクターの深層に思いを巡らせる、“じっくり見”の奥深さも備えている。“幕の内弁当”だからといって、侮ってはいけないのだ。



<番組情報>
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社)
脚本:清水友佳子
音楽:Face 2 fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
番組公式SNS、ホームページ
・X:@getsuyakouro
・Instagram:@getsuyakouro
・TikTok:@getsuyakouro
・ホームページ:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
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<原作情報>
『月夜行路』
四十五歳の誕生日、孤独な主婦の沢辻涼子は家を出た。偶然出会った美しいバーのママ・野宮ルナは、深い文学知識と洞察力を活かした推理で、かつての恋人への涼子の思いを言い当てる。最愛の彼はなぜ涼子のもとを去ったのか?二人が始めた元彼探しの旅先で、明らかになる秘密とは。涙のサプライズエンディング!
発売中 講談社文庫
『月夜行路 Returns』
元彼探しの旅から戻った涼子が再びルナを訪ねたとき、店に届いた古いノートパソコン。誰が、何のために送ってきたのか。涼子は、パソコンを開くパスワード探しを手伝うことに。行く先々で事件に巻き込まれながら、パスワードを試していく二人。願いを込めた仕掛けに挑めるチャンスは、5回。鍵を握るのは、1冊の本。
発売中 講談社
【秋吉理香子 プロフィール】
兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学大学院にて映画・TV番組制作修士号取得。2008年、第3回Yahoo! JAPAN文学賞を受賞し、2009年に『雪の花』でデビュー。主な著作に『月夜行路』『悪女たちのレシピ』『終活中毒』『無人島ロワイヤル』『暗黒女子』などがある。
