夢と現実が衝突する「結婚相談所」の最前線! SNSで話題の漫画『運命など存在しないので』が描き出す男女の残酷なすれ違い
「あなた 本当に結婚したいのですか?」
この一言から始まる物語に、戦慄を覚えない婚活男女はいないだろう。マッチングアプリの普及で出会いが手軽になったにも関わらず、日本人の生涯未婚率は年々高まっている。そんな日本の婚活市場を舞台に、綺麗事一切抜きの「現実」を突きつけるマンガが、ヤンマガWebで連載中の『運命など存在しないので』(作・井原タクヤ)だ。
「20代美女」を追う52歳男性の絶望的なピント外れ
本作は、成婚率90%を誇る結婚相談所「はぴえば」の凄腕アドバイザー・柏木と、新人アドバイザーの町田ユナの視点を通し、現代の結婚事情を浮き彫りにする 。特に読者の心を抉るのは、婚活という戦場における「男女の埋めがたいすれ違い」の描写だ。
結婚相談所「はぴえば」には、自身の「市場価値」を見誤った男女が次々と現れる。 例えば、52歳の男性・目黒は、「子供が3人ほしいから、奥さんは20代がいい」と悪びれずに語る 。
これに対し柏木は、「夢を語らないでもらえますか?」と一蹴 。さらに、「あなたの申し込みは若い女性にとって苦痛を与える」とまで言い切る 。男性側が「好意を寄せられたら嬉しいはずだ」と思い込んでいる一方で、女性側にとって興味のない年上男性からのアプローチは「恐怖」や「不快」でしかないという、残酷なまでの認識の相違がここでは描かれている 。
「元CA」のプライドが招く、マチアプという名の“地獄”
一方、女性側のすれ違いも深刻だ。38歳の元CA・大塚由美は、自分を「ただのアラフォー」とは認めず、高年収のイケメン年下男性を求め続ける 。彼女は相談所の紹介に満足できずマッチングアプリに手を出すが、そこで待っていたのは、スペックの高い男性に「都合のいい女」として消費されるだけの現実だった。柏木は、これをスーパーの「試食」に例えて解説する 。
ボタンひとつで関係を断ち切れる。スペックを餌に「タダ食い」され、自分は選ばれる側の人間だと勘違いしたまま、年齢だけを重ねていく 。そんなアプリ特有の「構造上の落とし穴」によって、彼女の婚活は泥沼化していくのだ 。
「運命」という言葉は、努力から逃げるための言い訳
結婚をロマンチックなファンタジーではなく、互いの利害が一致し、努力によって継続させる「ビジネス」や「現実」として描く本作 。耳を塞ぎたくなるような辛辣な意見の数々は、実は迷える男女を救うための「真実という名の処方箋」なのかもしれない。
井原タクヤ/読み切り作品『アルビレオの軌跡』で第91回ちばてつや賞ヤング部門 期待賞を受賞。「ヤンマガWeb」で連載中の『運命など存在しないので』にて連載デビュー。現在も同作を連載中。
