「落ち着きがない=ADHD」は間違いです! 心理学の専門家が指摘する「愛着障害」という新たな可能性

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「暴言、暴力をくりかえす」「構うと要求がエスカレート」「注意すると逆ギレ」「褒めたのに怒る」そんな手ごわい“不適切行動”をする子が激増している。その原因が「愛着障害」にあることをいち早く指摘したのが、米澤好史氏だった。わかりにくい「愛着」の概念から、独自の愛着障害論、そして効果的な支援の方法まで、渾身の力で書き切った新刊『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』より見どころを抜粋して紹介する。

愛着障害と発達障害の区別をどうつけるか

発達障害にはASDのほか、ADHD、SLDなどいろいろありますが、いずれも先天的な(生まれつき持っている)脳機能障害とされています。これに対し愛着障害は、後天的なもの、つまり生まれた後に生じる障害です。

であれば、両者の併存は当然あり得ることで、初めからその可能性を除外するのは不合理でしょう。不合理な基準に愛着、愛着障害への誤解が重なり、適切な支援が妨げられることがあってはなりません。

■行動・認知・感情の3つの側面から分析する

こどもを支援するにあたって、今後は目の前で起きている行動の問題が「愛着障害によるものか/発達障害によるものか」、発達障害によるものだとすれば「ASDに起因するのか/そうでないのか」などを、まず区別する必要があります。

愛着障害、発達障害に起因する不適切行動は、見た目はよく似ているのですが、では、どこに着目すれば区別できるでしょうか。心理学では人のこころのはたらきを、「行動」「認知」「感情」の3つの側面から捉えますが、「ADHDは行動の障害、ASDは認知の障害、愛着障害は感情の障害」なのだと覚えておくと、見分けやすくなります。

少し寄り道をすることになりますが、ここで行動、認知、感情とはどういうものなのか、そして互いにどう関係しているのかを、上の図を使って説明します。

たとえば、こどもが公園に遊びに来た場面を考えてみましょう。ブランコがあるのに気づいた(認知)こどものなかに、遊びたい! という思い(感情)がわいてきます。その感情がわいてきたとわかる(認知)から、こどもはブランコで遊びます(行動)。

その“遊んだ”という行動を自身で認知すると、もっと! という感情がわいてきて、その感情が認知され、また“遊ぶ”という行動が表出する─という具合に、3つの間の相互作用を表現したのが、こちらの図です。この図を念頭におくと、愛着障害と発達障害の区別がしやすくなります。

たとえばADHD、ASD、愛着障害いずれでもよく見られる「多動」という不適切行動を、行動・認知・感情の3つの側面から分析してみます。

多動の出方( 落ち着きなく動き回る原因で区別する)

ADHDの多動は、いつでもどんな場合でも生じます。場所、状況、場面、集団かどうか、誰といるか(対人関係)などは関係ありません。こども自身は〈ここでは落ち着いていなければ〉と思っていても、行動を抑えきれず多動が起こります。生まれ持った脳機能の特性によるものなので、本人にはどうしようもありません。これが行動の障害ということです。

ASDのこどもも多動を示すことがあります。ですがそれは、そのこども自身が〈居場所感が脅かされた!〉と認知したときに起こります。そのような認知は、見通しと現実の間にズレができたときに生じます。たとえば、

・急な予定変更

・やろうとしていることを不意に止められる

・一緒に活動するはずだった人が急に交代する

などは、居場所感が見失われやすいケースです(ただし、人の交代についてはそれがあまり影響しないタイプのこどももいます)。

ですから、いつも同じ場所、同じ人、同じモノを大人が用意してズレが生じないようにすれば、居場所感が脅かされたとは認知されにくいため、多動はほとんど出ません。諸条件が一定であれば行動が一定し、そうでなければ多動が出るのであり、「いつもではない」ところに特徴があります。そこを見逃さなければ、目の前の子がASDかどうか、判断しやすくなります。

これらに対し、愛着障害は「感情発達の障害」で、そのこどもがどんな感情を抱いているかで多動の出方が変わります。ポジティブな感情のときは多動が比較的出にくく、ネガティブな感情でいっぱいなら落ち着きをなくすといった具合に、感情の変化とともに多動も出たり出なかったりする「ムラ」が生じるのが特徴です。

なお、ポジティブな感情のなかでも、「興奮」「歓喜」といった強いポジティブな感情のときは多動が生じる場合があります。ネガティブな感情や強いポジティブな感情はコントロールが難しいからです。

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