バフェット後のバークシャーが狙う「東京海上の次」を予想…「日本株6銘柄」を実名公開

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バークシャー・ハサウェイの新CEOグレッグ・アベル氏が日本株に求める条件は、本業とのシナジー、投資サイズに見合う規模感、そして相対的な割安感の3つだ。

前編記事はこちら→「バフェットの後継者」が東京海上に2874億円出資の狙い…バークシャーがこれから日本株に求める「3つの条件」

この条件に加え、バフェット氏が商社を「バークシャーに似た多角経営体」と評した視座を重ね合わせると、次の投資先の輪郭が浮かび上がる。参入障壁の高い事業を複数持ち、その複雑さゆえに過小評価されている日本企業とは具体的にはどこなのか。

筆者が考える最有力銘柄

現時点の投資指標と事業構造から、筆者は6つの名前を挙げたい。

なお、東京海上との提携には最初の5年間、バークシャーが競合損保と同様の提携を結べない排他条項が付されているという。

そのため、アベル氏の次の一手は保険以外のセクターに向かわざるを得ない。

筆者が最有力と見るのがホンダ(7267)だ。時価総額約5.7兆円でPBRはなんと 0.40倍(株価等はすべて2026年4月7日時点、以下同)。ごく単純に例えるならばPBRが0.40倍というのは、10,000円入りの財布が4000円で売られているようなものだ。そのような破格のPBRで世界最大の二輪メーカーが買えるとするならばアベル氏の眼鏡にかなう可能性がある。

ホンダの株価が沈んでいる理由は明白だ。トランプ政権が日本車への関税を引き上げ、四輪事業が直撃を受けた。ホンダの四輪は米国への輸出依存度が高く、営業利益が急減したからだ。

しかし、市場が見落としているのは二輪事業の圧倒的な強さだ。ホンダの二輪は世界シェア約4割を握っており、独自の競争優位性を保持している。

バークシャーとの接点も太い。バークシャーは傘下にディーラーフランチャイズ企業を擁しており、全米10州で103のディーラーを運営している。

バフェット氏の有名な投資格言のひとつに「他者が恐怖に駆られるときに貪欲になれ」というものがある。関税ショックで株価が叩き売られ、PBR 0.40倍にまで沈んだホンダは、その鉄則が最も鮮明に適用できる銘柄だ。

二番手はトヨタ自動車(7203)だ。時価総額は約51.3兆円と極めて大きいが、PBR は1.12倍でPERも11.85倍とホンダと同様に近年では稀に見るほどの割安さだ。流動性は日本株で最大級であり、数千億円規模のポジション構築にも全く支障がない。

トヨタの本質は「自動車メーカー」ではなく、商社と同じく「多角経営体」だ。トヨタファイナンシャルサービスは世界有数の自動車金融を展開し、トヨタホームは住宅事業を手掛け、ウーブン・シティ構想はモビリティとスマートシティの融合を志向する。バフェットが商社を「バークシャーに似た多角経営体」と評した論理は、トヨタにもそのまま適用できる。

バークシャーと相性がいい「準国策企業」

三番手はINPEX(1605)である。時価総額約5.8兆円、PBR 1.12倍、PER 16.1倍。日本最大の石油・天然ガス開発企業であり、エネルギーの上流権益を世界20カ国以上で保有する。

アベル氏が自身のキャリアで培った資源・エネルギー事業の知見と直結する領域であり、バークシャーが米国でシェブロンやオキシデンタル・ペトロリアムに大型投資してきた文脈とも一致する。

加えてINPEXは政府が黄金株を保有する「準国策企業」であり、敵対的買収のリスクがない点もバークシャーの長期保有スタイルと相性がいい。目先ではイラン情勢に伴う原油価格の変動リスクはあるが、キャッシュフローは安定しており、経営危機に直結するリスクが高いとはいえない。

四番手は中部電力(9502)である。時価総額約2兆円、PBR 0.67倍。電力セクターは全体的にPBR1倍割れが常態化しているが、中部電力の特異性は連結純利益の半分近くを稼ぎ出すJERA(東京電力との合弁)にある。

JERAは東電と中部電力の火力発電までを垂直統合した世界有数のエネルギー企業であり、IPO観測時の想定時価総額は3〜5兆円とも囁かれる。アベルがBHEで手掛けてきた発電・送電事業との親和性は極めて高く、JERA経由で日本のエネルギー・バリューチェーンに入り込む「裏口」として中部電力は興味深い選択肢だ。

IPOの値付け次第ではあるが、仮にJERAが観測通りIPOした場合は、相対的に原発リスクが小さいJERAの方とバークシャーが組む可能性についても頭に入れておきたい。

バークシャーの日本戦略のハブ

五番手は三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)である。時価総額は約32.8兆円と国内金融で圧倒的な規模を誇り、流動性の問題は皆無だ。PBR 1.45倍は銀行セクターとしてはやや高く映るが、日銀の利上げサイクルが続く限り、利ざや拡大による業績改善が見込める。

アベル氏が書簡で示した「エネルギー・インフラ・物流での商社との協業拡大」の文脈で言えば、資金の出し手である三菱UFJは、バークシャーの日本戦略のハブとなりうる存在でもある。

最後にJR東海(9022)をピックアップする。時価総額約4.3兆円、PBR 0.81倍、PER 8.06倍、ROE 10.2%。これだけの収益力を持ちながらPBR1倍割れという事実は、東海道新幹線というほぼ独占的なインフラ資産の価値が株価に反映されていないことを意味する。

リニア中央新幹線の建設費負担が重荷とされるが、裏を返せばそれは日本の次世代インフラへの巨額投資であり、完成後のキャッシュフロー創出力は現在のバリュエーションが織り込んでいないとも解釈できる。

もちろん、これらはあくまで「条件に合致すると筆者が推定する候補」に過ぎず、バークシャーが実際に投資するかは別の話であることは重々注意していただきたい。

最後に、個別銘柄ではないが「TOPIX コア30やラージ70に連動するETF」も検討候補になる。これはTOPIX算出対象銘柄のうち、時価総額、流動性の特に高い30銘柄・70銘柄のETFだが、バークシャーの投資サイズの基準と合致する。例えるならば「ボックス買い」に近いイメージで広めに網を張る戦略も有効だろう。

「直感」から「仕組み」へ?

バフェット氏の投資には人柄がある。新聞への愛着、コカ・コーラの味への信頼、アメリカン・エキスプレスのブランドへの敬意。その判断の根底には、人間味の溢れる直感があった。

CEOとしての最後の投資にNYTを選んだことは、自身の原点に立ち戻る最も美しい幕引きだったといえるだろう。

そんな生ける伝説、バフェット氏の後継者であるアベル氏の市場からの視線は鋭い。

流石に「アベル氏の直感」で投資するのは憚られるだろう。株主がアベル氏に求めているのは、バフェット氏の直感をいかに構造化し、組織として仕組み化するのか、ではないだろうか。

一方で、アベル氏の年次書簡にはバフェット流の考え方が息づいているようにも思われた。感情ではなく、仕組み。しかし仕組みの奥に、師の直感が宿る。それがポスト・バフェット時代のバークシャーハサウェイなのかもしれない。

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