「警察がその気になれば暴力団なんて簡単につぶせる」…メンツを潰された警察がメディアと共謀して乗り出した「強引捜査」

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かつて20万人もの構成員を擁した暴力団。

覚せい剤の輸入や賭博、みかじめ料の徴収で莫大な収益を上げ、1980年代の年間収入は推計8兆円に達したと言われる。だが平成に入って以降、暴対法の制定や警察の行き過ぎた捜査、メディアによる批判的な報道が原因となり、暴力団は衰退の一途をたどってきた。

では、暴力団が社会から消えていくことは、我々一般国民にとって「良いこと」だけなのだろうか?しばし「必要悪」として語られてきた“やくざ”の実態を、『やくざは本当に「必要悪」だったのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。

警察がその気になれば暴力団なんて簡単につぶせる

北九州市のアングラ社会は工藤會が独占的に仕切っている。他の暴力団は排除され、市内では活動できない。よって当初から工藤會が元警部を撃ったと見られていたが、とはいえ目撃者も物証もない状態で工藤會の特定組員を逮捕できない。

私がこれで思い出すのは、事件後、暴排運動で知られた弁護士にインタビューしたことである。福岡の地元テレビ局に頼まれた仕事であり、弁護士は福岡県警の言い分を代弁する役割で登場した。

筆者が、暴力団とはいえ、証拠もなしに逮捕できない。法の下の平等は暴力団でも例外ではないというと、この弁護士は憎々しげに答えた。警察がその気になれば暴力団なんて簡単につぶせる、法の下の平等なんて暴力団には関係がない、と。

法で飯を食っている弁護士がこういうことをいうのか、と筆者は唖然としたが、工藤會に対するその後の捜査はまさしくこの弁護士の言明通り、超法規的に進行した。

法治主義を置き去りにする警察とメディア

工藤會総裁・野村悟容疑者は6回目の逮捕となるが、1回目はその16年前の1998年に発生し、犯人も逮捕され、服役もしている元漁協組合長射殺事件に関してである。多くの人が決着済みの事件をほじくり返すのは無理と判断しただろうが、福岡県警はあえて同事件で総裁以下首脳部を逮捕した。引き続き2013年発生の看護師刺傷事件、14年発生の歯科医襲撃事件、上納金(月会費)脱税事件と連打し、そして元警部銃撃事件に結びつけた。

明らかに工藤會は虎の尾を踏んだ。ハードボイルドでお馴染みの教訓だが、とにかく警官を痛めつけると、とんでもないしっぺ返しを食う。警官だけは襲撃するな、と。退職警官でも警官は警官だ、と。たとえ完全犯罪だろうと、警察にはでっち上げてでも摘発という手があることを忘れるな、と。

私には、警察はメンツをつぶされると、超法規的に、というよりむしろ、法が存在しないかの如く、敵に襲いかかり、メディアもそれを当然視して、異を唱えない風習があることに恐ろしさを感じる。憲法も法も一度曲げると、とんでもない禍根を残すのだから、法はどのような場合にも厳格に運用すべきだ。

警察庁の金郄雅仁長官は2015年、全国刑事部長会議で工藤會幹部への摘発を「優れた先例」として挙げ、暴力団の壊滅に向け「徹底検挙」を指示した。

金郄長官は同年6月末、都内の日本記者クラブでも会見し、工藤會対策について「組織のトップを死刑や無期懲役に持っていき、二度と組に戻れない状態を作り、恐怖による内部支配を崩していこうという戦略。徹底した捜査を遂げるということで臨んでいる」「工藤會は凶暴性を剥き出しにした犯罪を繰り返してきた。全国から警察官を送り込み、事件化を目指してきた」などと述べた。

物証なし、目撃証言なし、なのになぜ?

こうした発言に対して、「長官発言のほうが怖い」「求刑を行うのは検察の仕事。警察庁長官が死刑だ、無期懲役だというのは越権行為」など、ネット上で批判された。

たしかにこうした批判は一部当たっている。長官が「工藤會は凶暴性を剥き出しにした犯罪を繰り返し」という以上、それらの犯罪は工藤會組員の犯行と立件され、犯人を手配するなり、逮捕していなければならない。

だが、従来、福岡県警が押し通した理屈は、北九州市で起きた事件だから工藤會がやったにちがいないという粗雑・乱暴なものだった。物証なし、目撃証言なしが圧倒的だった。

首脳部を6回も逮捕した仕掛けはまず強引にパクり、ガサ入れし、そうした中で証拠を掴み、組織を動揺させて組員の忠誠心を挫き、自供を誘い、という手法である。暴力団であるからには叩けばホコリが出る。法的に厳密に争えば、工藤會有利と出るだろうが、工藤會が最終的には、膝を屈することで終わろう。

情況証拠に推認を重ねれば、暴力団組長に死刑さえ宣告できるというやり方は抗争中の暴力団双方の組長にも簡単に応用できる。つまり相手側への攻撃は組長や若頭の指示の下に行われた。それ以外の者は命令、指示できないからだ。よって組長あるいは若頭に対して殺人教唆、あるいは殺人の共謀共同正犯に問うという理屈である。

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