現在、約30%に留まっている「養育費の受給率」。支払いが止まった場合、10人に9人以上が泣き寝入りしている現実があるという。ニュース番組『わたしとニュース』では、今後需要が増えるとみられる「養育費の保証サービス」について考える。

【映像】マンガでみる「共同親権」で何が変わる?(複数カット)

 4月から「共同親権」の制度変更だけではなく、「養育費の未払い」対策も強化される。イラストレーターでコミックエッセイスト・ハラユキ氏による「共同親権」についてのマンガ(※)がSNS上で話題になるなど注目が集まっているが、今回新設された「法定養育費」とはどのような制度なのだろうか。離婚問題に詳しい佐藤みのり弁護士は、次のように解説する。

「養育費について当事者間で決めていなくても、子ども1人につき月2万円を請求することができ、もし支払われなければ差し押さえもできるという制度。ただ養育費の適正な金額は、父親と母親の双方の収入によって違うため、適正な金額を後できちんと決めるが、それまでの間、とりあえずは月2万円をもらえるというところに意味がある制度だと思う」(佐藤みのり弁護士)

 今、養育費をめぐり現場で起きている問題について、養育費未払い問題を手掛けるチャイルドサポート代表の佐々木裕介弁護士は、次のように語る。

「養育費の合意をするというところが一番最初のハードル。その後15〜20年支払いを受け続けるというところが2つ目のハードルという中で、きちんと合意をした人であっても3分の1超は養育費の支払いが止まる。止まったときに差し押さえをしたかというと、泣き寝入りしたという人が93%に」(佐々木裕介弁護士、以下同)

 「養育費が突然滞るかも…」といった不安を取り除くサービスが、養育費が途中で支払われなくなった場合に当事者に代わって「立替」と「回収」を行う「養育費保証サービス」だ。

 佐々木弁護士は、今回の法改正で「養育費保証サービス」を利用する当事者が増えるとみている。

「養育費の取り決めがされる率も増える。ただそこから20年間取り立て続けるというところに対する精神的な負担や、経済的な負担などは正直変わらないところがある中で、そこを第三者として伴走支援していく。皆さんトラウマを多かれ少なかれ持っており、連絡をすることを考えただけでも『じんましんが出ます』という人も世の中にたくさんいる。そういう人に対する連絡を、(養育費の支払いが)止まったらしなければならない。『子どものためにはしなければ』と考えたときの心理的なプレッシャーを第三者が代替していく」

 離婚後も協力して子どもを養育するという意識が強まることが期待される共同親権だが、途中でトラブルが起きた場合のリスクはこれまでと変わらないと指摘。その上で、離婚するときの“最初の取り決め”が肝心だと話す。

「しっかりとした合意を夫婦間でした上で、『離婚後はこういうふうにやっていこう』と再スタートを切ることが、本当は全員が取った方がいい手続きである。“夫婦の別れ=親子の今生の別れ”のような状況を生み出さないことにより、その後の15〜20年の子どもの生活を守っていくところが初めて生まれる。やはりこの一番初めのボタンの掛け違いというものが、その後20年尾を引く」

「共同親権」で養育費保証サービスの需要増?

 このサービスについて、東京大学-IncluDE准教授の中野円佳氏は「良いとは思うが、これにまたお金がかかる。本当は国の社会保険料や年金の仕組みのように、(相手の)給料から天引きされるなど、養育費が確実な形で取れるといいのに」と指摘。

 これに対し佐藤弁護士は次のように話す。

「例えば(養育費が)支払われなくなったときには国が養育費を立て替えて回収もしてくれるなど、制度まで踏み込めれば問題は解決したと思うが、現状ではそこまでいかなかった。取り立てることはしやすくなったが、逆に、同居している親が取り立てなければ支払わないという負担感をずっと抱え続けるというのは本当にきついと思う。だからこそこういったサービスがあると思うし、一定の需要がこれからも続くのかなと思う」(佐藤みのり弁護士、以下同)

 「共同親権」なら養育費の不払いや途中で連絡がつかなくなるなどの問題が軽減されるのではといった意見もあるが、佐々木弁護士は「そもそも子どもの権利を担保するプロセスの部分がないのは何も変わっていない。共同親権が実際に子どもの利益につながるかどうか、これから注視しなければならない」と話している。

 これを受け佐藤弁護士は「共同親権」についての自身の見解を、次のように語る。

「本来は親権の問題と、親が子どもに向き合って責任を持つという問題は、別の問題である。ただ事実上、単独親権になってしまうと親権がなくなった方は親でもなくなったような気になり、子どもに対する関心も薄れていき、養育費も支払わなくなるという現実がある。やはり共同親権にすることにより、意識が変わるというプラスの面はあるのかなと思う」

 また中野氏は次のように懸念を述べる。

「共同親権で今後も介入することを盾にされると、それが嫌で離婚しにくくなるようなことをどう避けるか。夫婦が揉めたまま婚姻関係は続けるといったことも起こりかねないと思う」(中野円佳氏、以下同)

「養育費を確実に取れるなどプラスの変更もあると思うが、当事者からすると余計に考えることが増えた上に手間も増えそうという印象は拭えない。これから判例などが出てくるのかもしれないが、いろいろと積み重ねながら見えていくところもあるのかなという印象だ」

(『わたしとニュース』より)

※東洋経済オンライン「ほしいのは『つかれない家族』」​ハラユキ(イラストレーター・コミックエッセイスト)