見上愛さん

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2019年に俳優デビュー。映画、ドラマ、CMと活躍の幅を広げてきた俳優の見上愛さん(25)。大河ドラマ『光る君へ』の藤原彰子役では帝への秘めた思いをあふれさせるシーンで演技力の高さを印象づけた。3月30日に放送が始まった連続テレビ小説『風、薫る』では、主人公の1人、一ノ瀬りんを演じる。明治期に看護師という職業の確立に貢献した大関和と鈴木雅をモチーフにしたバディドラマで、見上さん演じる一ノ瀬りんと、もう1人の主人公、上坂樹里さん演じる大家直美の2人が共に看護婦養成所で学び、患者や医師との向き合い方に悩み、ぶつかり合いながら成長し“最強のバディ”になる物語。連続テレビ小説初出演で主人公を射止めた見上さんに、作品に込めた思いを聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部 撮影:武田裕介)

【写真】幼なじみの虎太郎と話すりん

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那須に帰りたい

<制作側からのオファーを受け、『風、薫る』のりん役に決まった。2025年1月に発表され、9月に栃木・那須のロケでクランクインした>

撮影が始まって半年が経ちました。ほぼ毎日撮影をしているので、見上愛でいる時間よりも、りんとしてセリフを話している時間のほうが長いくらい。今はドラマの中盤を撮影していますが、第1週で起こる出来事を思い出すことも多くあります。

先日、第1週の試写を見ました。那須のロケは天候に恵まれない日もありましたが、映像がすごくきれいで「那須に帰りたいな」と思う気持ちになりました。

連続テレビ小説は初めての出演です。月曜がリハーサルで、火曜から金曜に撮影。セットが日々ものすごい速さで変わることに驚いています。

たとえば、金曜まで、りんの家のシーンを撮影していたかと思うと週が明けて火曜日にはもう病院のセットが出来上がっている。また、スタジオセットって「お部屋の中」を作るイメージだったので、街自体までセットで作られていると知ってすごく感動しました。

のびのび育ったりん

<りんは明治維新の直前、栃木県・那須地域の家老の家に生まれた。りんがものごころつくころには一家は帰農。りんは、天真爛漫に育つ。やがて村でのコレラ感染拡大などを経験し…>

りんは、まっすぐでのびのびと育ってきた子です。直美に対してはとてもおせっかいを焼きます。台本を読んでいても、感情の揺れ動きが激しくて、喜怒哀楽の感情をしっかりと持っている子だと感じました。実際にお芝居をする時も、相手役の方から受け取るものをすごく繊細に感じながら演技をしています。

りんは、第1週である出来事が起きて、自分が何もできなかったという無力感を経験する。困っている人に手を差し伸べられなかったことが、その後、りんが看護婦を目指す上でキーになっていきます。

<上京したりんは、上坂樹里さん演じる直美と出会い、看護婦を目指すことに。愛情豊かな環境でまっすぐ育ったりんと違い、教会の前に捨てられていた直美は生きることに貪欲で、信じるものは自分の力と運だけ。まったく異なる2人がバディになり、看護婦という職業を確立していく>

りんと直美は、よくバディになれたなと思うくらい何もかも違っている。生まれや育ちでいろいろなことが決まっていた時代だからこそ、お互いに自分のいる場所の価値観や景色しか知らない。

最初は自分が正しいと思ってぶつかり合うこともあります。ですが、お互いの大切にしているものや、なぜそんなふうに考えるのかを理解し合っていきます。寄り添いすぎず、時には遠くから見守り合うこともある。2人の関係性はすごく独特で、やり取りのかみ合わなさは第三者から見たら面白く映る瞬間もたくさんあると思います。

バディものは、どちらかが太陽みたいな性格で、もう1人が月のようなタイプに例えられることが多いと思いますが、りんと直美は、お互いが月にも太陽にもなりながら支え合います。決まった役割や立ち位置がないからこそ、お互いのいろんな感情を出し合っていく。

最初は2人の凸凹が合うのかもわかりませんでしたが、2人で共に成長するなかで世界が広がっていく、そういう関係性だと感じました。

看護服をまとって

<『風、薫る』のメインビジュアルは白い看護服をまとったりんと直美が軽やかに前に飛び出す瞬間を捉えたものだ。時代が大きく変わっていく空気は、衣装からも感じられる>

りんと直美が生きていた明治時代は、まだみんなお着物をあたり前に着ていたし、りんは日本髪でした。それが、看護婦を目指すことになり、服も髪型も変化していきます。

髪の清潔さは看護の世界ではとても大切。直美以外の看護婦養成所の仲間は、厳しい家で育った女の子もいます。みんなで一斉に服や髪型を変えるシーンの撮影をした時は衝撃でした。西洋の新しい価値観を取り入れる、これから看護の世界で生きていくぞという決意を表現した気合の入るシーンだったので、色濃く覚えています。


『風、薫る』/(c)NHK

看護服は衣装さんが、1人1人の身体にぴったり合うように作ってくださいました。採寸の際に初めて袖を通したのですが、その時に「これから看護の仕事をしていく」という高揚感がありました。撮影が進み、りんとして完成した看護服の衣装をまとった時は「元武家の娘」として生きてきたりんとは違う、「看護の道で人のために生きていく」りんになったと強く感じました。

撮影に入る前から医療従事者の方のことは尊敬していましたが、実際にりんたちが看護婦養成所で学び始めてからは、よりリスペクトが増しました。一つのミスをも許されず、緊張感の中で看護とは何なのか、人としての正しさとは何か、を考えながら働くのはものすごいことだと感じています。

彰子役で感じた難しさ

<連続テレビ小説の撮影は1年弱に及ぶ。1人の人間の半生を長期間かけて撮影するのは日本では連続テレビ小説と大河ドラマならではだ。『風、薫る』では17歳のりんから演じることになった>

2024年の大河ドラマ『光る君へ』では、藤原彰子役を務めました。当時の私は23歳でしたが、11歳の彰子から出産して国母となるまでの長い年月を演じて。1人の人間が成長して、年を重ね、肩書が変わって親になる。順番に撮影しているわけでもない中で、組み立てていくことの複雑さを感じました。

『風、薫る』では、年齢の変化が大きく出るような部分の撮影はまだしていません。今後、りんは出産し、直美と出会い、いろいろな経験を積み重ねて新しい価値観を持つようになり、今までと違う変化が訪れます。その成長をやりすぎない程度に自然に表現できたらと意識しています。

心に残るセリフや表情を

<3月には連続テレビ小説のバトンタッチセレモニーに出席。『ばけばけ』主人公の高石あかりさん(高ははしごだか)から、バトンを受け取った。4月には栃木でのトークショーに参加するなど連続テレビ小説ならではのイベントも多い>

映画は、舞台挨拶があったりして、お客様の顔を直接見る機会がありますが、ドラマは視聴者の方と直接お会いする機会があまりありません。ですが、連続テレビ小説は、トークショーやイベントがあるので、実際に『風、薫る』を楽しみにしてくださっている皆さんと直接お会いできるのを楽しみにしています。


見上愛さん

朝の大切な15分に『風、薫る』を見ようという選択をしてくださった方を元気づけるだけではなくて、何か心に残るセリフや表情を届けられたらいいなと思っています。