上坂樹里は立ち向かう役で輝く 『風、薫る』“猛々しさ”と透明感を併せ持つ新ヒロイン像
「いかにも、私がみなしごで耶蘇の貧乏女、大家直美ですが女学生の皆さま何か?」
参考:上坂樹里、『風、薫る』で“朝ドラ”の大舞台へ 『御上先生』などこれまでの軌跡を振り返る
継ぎはぎだらけの和装で堂々と悪意に立ち向かう。その猛々しい姿に一瞬で目を奪われた。
NHK連続テレビ小説の第114作目となる『風、薫る』が3月31日にスタート。日本の看護師の先駆者である大関和と鈴木雅をモチーフにした女性2人の友情物語が幕を開けた。本作で見上愛とW主演を務め、脚光を浴びているのが上坂樹里だ。
上坂は2021年にミスセブンティーンの一人に選ばれ、雑誌『Seventeen』(集英社)の専属モデルに。同年に俳優デビューを果たし、『いちばんすきな花』(2023年/フジテレビ系)では田中麗奈演じる志木美鳥の中高生時代役で、わずか1話の出演ながら秀でた存在感で関心を集めた。その後、『ビリオン×スクール』(2024年/フジテレビ系)、『御上先生』(2025年/TBS系)と若手俳優の登竜門である学園ドラマに次々と出演。3度目となる朝ドラオーディションで、応募者2410人の中から見事主人公の座を射止めた。俳優歴わずか5年目の大抜擢だ。今作で初めて上坂を知る人も決して少なくないのではないだろうか。
上坂が演じるのは、見上扮する一ノ瀬りんとバディとなって、医療看護の道を切り開いていく大家直美。生後まもなく親に捨てられ、保護された教会で育ったキャラクターだ。
教会の牧師で、直美の父親代わりの吉江善作を演じる原田泰造と、上坂は2023年に放送されたNHK特集ドラマ『生理のおじさんとその娘』にて親子役で共演している。同作は“生理に詳しすぎるおじさん”として有名になった幸男と高校生の娘・花の親子喧嘩を描いたもの。地上波ドラマ初出演となった上坂が、子どもから大人になろうとする思春期ならではの葛藤を軽快にもリアルに映し出していたのが印象深い。花が幸男に思いをぶつけるシーンではラップにも挑戦しており、その表現力にはすでに目を見張るものがあった。
■上坂樹里が持つ”砂漠に咲く一輪の花”のような透明感 NHKドラマでは、2025年に放送された『いつか、無重力の宙で』での好演も記憶に新しい。同作は高校時代に「一緒に宇宙に行こう」と夢を語り合った天文部の女子4人が大人になって再会し、小型人工衛星を開発する青春物語だ。天文部の中心的な存在だったひかりの高校時代を演じた上坂は、口調や声色を本役である森田望智に限りなく寄せて、ひかりの過去と現在を違和感なく繋いだ。しかし、ただのオマージュ演技ではない。好きなことにまっすぐで、周りに「この人についていけば大丈夫」と思わせるひかりの求心力を、あれほどまでに説明なしで語れる役者が他にいるだろうか。
『風、薫る』の制作統括・松園武大氏は上坂の起用理由について「凛とした佇まいと、奥底にあるたくましさ」(※)を挙げていた。『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 風、薫る Part1』(NHK出版)では、見上が「後ろが透けて見えるほど(笑)の透明感!と同時に、樹里ちゃんが演じる直美に通じる強さを感じました」と上坂の第一印象を語っている。底知れぬパワーを感じさせ、一度見たら目が離せなくなる。イメージで言えば、砂漠に咲く一輪の花。
そんな上坂は何かに立ち向かっていく役が似合う。『ビリオン×スクール』で演じた梅野ひめ香も、自分をいじめていたクラスメイトに対し、許せない気持ちを持ちながらも寄り添おうとする役柄だった。『御上先生』では、上野演じる東雲温がホームルームで、家庭崩壊の原因となった文科省作成の学習指導要領について問題提起するシーンが第3話の大きな見せ場となった。いずれの作品でも芝居に優しさと強さを兼ね備えてきた上坂は、直美を演じるのに適任だ。直美は過酷な環境で育ったがゆえに、捻くれたところや強かな面を持った女性。しかし、家族から愛情をいっぱい注がれ、マイペースでありながら心根のあたたかい女性に育ったりんとの出会いによって本来持っている素直さや優しさが引き出されていくという。そんな直美の多面的な人柄や成長過程を、上坂なら豊かに演じてみせてくれるのではないか。また直美は貧しいながらも流暢な英語を話す役柄で、上坂は撮影と同時に英語の稽古に励んでいる。現時点ではまだ短い単語で悪態をつくに留まっているが、そのうち稽古の成果を披露する場面も出てくるはずだ。これから半年間かけて、直美という役とともにさらに役者として成長を遂げていくであろう上坂を見守っていきたい。
参照※ https://realsound.jp/movie/2025/06/post-2044002_2.html(文=苫とり子)
