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 日本相撲協会は25日、エディオンアリーナ大阪で夏場所(5月10日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議を開き、大花竜(24=立浪部屋)の新十両昇進が決まったと発表した。また、栃大海(26=春日野部屋)、白鷹山(30=高田川部屋)、炎鵬(31=伊勢ケ浜部屋)の3人の再十両昇進も決まった。

 炎鵬は2023年夏場所以来3年ぶりの関取復帰。幕内経験者が序ノ口まで番付を下げて関取復帰を果たすという大相撲史上初の歴史的復活劇を成し遂げた。体重100キロに満たない小兵ながら2018年頃から約5年間、十両や幕内の土俵でも活躍。しかしその小さな体にかかる負担の蓄積から、2023年夏場所中に脊髄損傷の大ケガを負った。即入院してそこから2週間は寝たきり状態。「すぐに手術しないと体が一生動かなくなる」「手術したら現役復帰は0%」と言われ現役続行不可能な状況になったが、手術せずに復帰するわずかな可能性に懸けた。「体が動かなくなった。1回死んだようなもの」。握力は10キロまで落ち、ひもを結ぶ練習など日常生活を取り戻すレベルから壮絶なリハビリを開始。ラグビー元日本代表の堀江翔太氏を脊髄損傷から復活させたことでも知られる凄腕アスレティックトレーナーの佐藤義人氏の指導を受け、正しい体の使い方を習得して筋力を少しずつ戻していった。

 1年間の休場で序ノ口まで番付を下げ、2024年名古屋場所でついに復帰を果たした。「明日が最後になるかもしれないので、後悔がないように命懸けで」と決死の覚悟で歩んできた復帰の道のり。幕下上位まで番付を戻した昨年名古屋場所では左腓骨の剥離骨折のケガも負い、再び勝ち越しを続けて番付を上げた今年の初場所は6連勝で関取復帰に王手をかけた取組で左足首を骨折と苦難が続いた。

 東幕下4枚目で迎えた春場所。左足首の状態は回復しきっておらず「めちゃくちゃ痛い」と本音を明かしていたが、土俵上では不安を全く感じさせない相撲内容で見事に5勝2敗の好成績を残した。関取復帰に大きく前進した6番相撲は十両の土俵に上がり、本場所では1031日ぶりとなる大銀杏姿で十両・荒篤山に勝利。「覚悟を決めて自分を信じて土俵に上がった。諦めずにここまでやってきてよかった」と万感の思いを込めていた。

 脊髄損傷の大ケガで現役続行不能と言われながら、ここまで関取復帰にこだわるのには理由があった。「“大相撲なんておまえの体じゃ絶対無理”と言われて始めて、それでもここまでやってこれたので、人間無理なことはないと思う」。前例のない挑戦は炎鵬にしかできないこと。それともう一つ。現在関取在位29場所のため、あと1場所関取を務めれば親方株取得の条件を正式に満たすことができるということも大きな原動力だった。

 「自分で切り開いて、誰も想像できないような未来を作りたい」「今日の自分より、明日また強くなる。その先に何が待っているかは分からないけど、希望がある」。脊髄損傷の大ケガから序ノ口の土俵で復帰を果たした2024年名古屋場所中に語っていた言葉は、想像を絶する努力によって現実のものとなった。