BTSの公式Xより

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22日夜、ソウル中心部の光化門広場で開催された世界的人気アイドルグループBTS(防弾少年団)のカムバック公演は、懸念された事故もなく終了した。しかし、ソウル市と警察が見込んだ最大26万人を大きく下回り、実際の来場者は約4万人規模(韓国メディア報道)にとどまった。

過大な事前予測を前提に、周辺道路は30時間以上にわたり全面封鎖され、バスは迂回運行、地下鉄は会場最寄り駅を無停車で通過した。周辺自治体からは消防隊員や救急車が集められ、万が一に備えた厳戒態勢が敷かれた。

さらに会場では金属探知機による検査や厳重な手荷物チェックが実施され、高いフェンスが視界を遮った。

BTSのファン「ARMY(アーミー)」からは公演に感動する声が多かったものの「テロリスト扱いのようで不快」「公演ではなく警備を見に来た気分」といった不満の声も相次いだ。

日曜出勤で警備に動員された警察や公務員は約1万5000人にのぼり、超過勤務手当は「最低でも4億ウォン(約4000万円)」(聯合ニュース)と見込まれる。周辺商店街も通行規制の影響で客足が鈍り、期待された経済効果は限定的に終わった。総じて多難な再出発となった。

赤は野党「国民の力」の象徴色

批判は思わぬ方向にも広がった。BTSのシンボルカラーが紫であることは広く知られているが、新アルバム「ARIRANG」では赤がテーマカラーとして採用された。このため公演に合わせ、ソウル市内の橋や主要ビルが赤い照明でライトアップされた。

韓国では色が政治的意味を帯びることが多い。赤は保守系野党「国民の力」の象徴色であり、光化門公演を後押しした呉世勲(オ・セフン)ソウル市長も同党に属する。一方、青は与党「共に民主党」の色だ。

6月の地方選を控えた微妙な時期でもあり、若年層を中心に違和感や政治的意図を疑問視する声が広がった。

SNS上では「#BTSisPurple」のハッシュタグとともに、赤い照明への抗議が相次いだ。これを受け、所属事務所は「政治的意図は一切ない」と釈明に追われたが、「赤」をめぐる混乱が、一部ファンの熱意を冷ましたとの指摘もある。

兵役による空白を埋められるか

今回の集客低迷は、過剰警備や政治的連想、さらにNetflixによる独占中継など、複数の要因が重なった結果とみられる。加えて、4年間グループ活動が途絶えていたことも影響したとの見方がある。

韓国の成人男性には最低1年半の兵役が課せられ、BTSのメンバーも例外ではない。7人のメンバーは時期を分けて入隊し、残ったメンバーがソロ活動を続けるなど工夫を重ねてきたが、4年間という長い空白を埋めるのは容易ではない。

再始動したBTSは、新アルバムを携え、日本を含む世界34都市で大規模ツアー「ARIRANG」を予定している。
公演回数は最大80回、観客数は数百万人規模とされる。韓国政府も経済効果を期待し、支援を約束している。

空白の4年間で韓国や世界の音楽界には新たな人気グループが台頭し、表現手法も多様化した。BTSが世界的人気を維持できるか、今後が正念場となる。

文/五味洋治 内外タイムス