◆スターバックスは「正念場」

ーー最近のスタバの不調をどう見ていますか?

岩田松雄:非常に危惧しています。アメリカのスターバックスに関しては、経営陣が「ミッション」を忘れ、ウォール街(株主・投資家)の方ばかりを見てしまった結果のように感じます。スターバックスの本質は「人々の心を豊かで活力あるものにする」というミッションにあります。しかし、売上や利益を追求するあまり、無理な出店や人員削減を行い、現場のパートナー(従業員)との信頼関係が崩れてストライキまで起きている。これではブランドが毀損してしまいます。日本はまだ堅調のようですが、アメリカからの出店圧力は相当なはずです。いかに日本で築いた素晴らしいスターバックスのブランドを守っていくのか。これからが正念場だと思います。

ーーそうした本国からの要求には、どう対抗していたのですか?

岩田松雄:ザボディショプでもスターバックスでも、欧米の本社から成長に対する強いプレッシャーがありました。もちろん業績さえ、きちんとあげていれば問題ありません。海外本社は日本のマーケットが分かっていないという感覚がありますが、とりあえず言われたことはやってみて、その上で数字的データで反証すれば、それなりに理解してくれます。

◆これまでのキャリアで一番大変だったのは…

ーー最後に、これからリーダーを目指す人たちへアドバイスをお願いします。

岩田松雄:リーダーシップとは、役職やカリスマ性ではありません。私がこれまでのキャリアで一番大変だったリーダー経験は、社長ではなく、実は「マンション管理組合の理事長」でしたから(笑)。会社なら「社長命令」で済みますが、管理組合は年齢も職業も価値観も違う住民たちを、権限なしでまとめなければなりません。これは本当に大変です。ですからどんなプロジェクトやサークル、飲み会の幹事でも良いのでリーダーの経験をすることが大切です。

リーダーに求められる資質は、洞察力やコミュニケーション能力など多くありますが、一つに絞るとすれば「無私の心」です。「自分の給料を上げたい」「出世したい」という私心をできるだけ小さくして、「部下のため」「お客様のため」「チームのため」に動けるかどうか。幕末、勝海舟が清水次郎長に「お前のために命を捨てる子分は何人いるか」と聞いた時、次郎長は「誰もいません。ですが、子分のためなら私はいつでも命を捨てられます」と答えたそうです。これこそがリーダーシップの真髄です。PTAでもボランティアでもいい。誰かのために汗をかく経験が、あなたを「ついていきたい」と思われるリーダーにしてくれるはずです。

<取材・文/菅原春二>

【菅原春二】
東京都出身。フリーライター。6歳の頃から名刺交換をする環境に育ち、人と対話を通して世界を知る喜びを学んだ。人の歩んできた人生を通して、その人を形づくる背景や思想を探ることをライフワークとしている。