22日、防衛力強化に向けた有識者会議の報告書が岸田総理に手渡された。報告書には、防衛費増額分の財源確保について「“幅広い税目”による負担が必要」と記載された。つまり増税だ。

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 今年度の防衛費は当初予算で約5.4兆円。政府はこれを5年後に年間約11兆円に積み上げたい考えだ。

 北朝鮮の度重なるミサイル発射、台湾海峡の緊張やロシアによるウクライナ侵攻など、国防に関心が集まる中、防衛費増額の影響は国民に何をもたらすのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では元防衛大臣政務官と共に議論を行った。

 MCを務めるEXITのりんたろー。は「増税しなくていいならそれが一番いい」とした上で「たぶん必要だし、しなくちゃいけないのかな。だとしたら、税金が何に使われるのか知りたい」とコメント。兼近大樹は「ある所から税金を取る分にはもうしょうがないのかな。どこから取るのかにもよるが、そもそもいまの防衛費約5.4兆円を細かく何に使っているのか、それも分からないし、倍にするなら何にどれくらい使うのか算出を出してくれたら、ある程度納得できると思う」と述べる。

 元防衛政務官の自民党・松川るい参議院議員は報告書について「書いてあった財源の確保の1位は歳出削減だ」と補足。「今ある国家予算の中で削れるもの、移動や節約できるものがあるかという観点で、まず検討される。ただ、防衛費は非常に重要な予算で、安定的に継続できないと意味がない。そういう意味で『国債頼みはダメだ』と報告書は言っているが『国債は絶対ダメだ』とも言っていない。これをご理解いただきたい」と説明した。

「昨日スーパーマーケットに行ってお買い物をした。野菜が高くなっているなと思った。賃金が上がれば物価高は怖くないが、賃金が上がる見通しやこの先いけるなと思えるものが何もない。その中で増税をすぐして、経済を冷やすのはどうかと私は思う。多くの自民党国会議員もそう思っている。私は増税という言葉を中長期的な意味では否定できないが、おそらく今このタイミングで、すぐに増税にはならない。防衛費もいきなり2倍にするわけではない。5年かけてだ」

 慶応義塾大学名誉教授、経済学者の竹中平蔵氏も「増税はいきなりできないし、政府も自民党も当然増税を考えていないだろう。ただ、逃れられない事実として、やっぱり防衛費は増やさなくてはいけないと思う」と発言。

「数字の問題で、GDP(国内総生産)の1%を2%にするというが、これはNATO基準の2%だ。NATO基準というのは要するにコーストガード(沿岸警備隊)なども入るので、防衛費の定義によって実は数字がかなり違ってくる。だからそんなに高い財政負担にならない可能性もある。もう1つは、松川さんも言ったように、歳出削減をまずやるべきだ。その姿勢を政府に示してほしかった。たとえば、社会保障費が30兆円だとして、もし1割減らせたら、かなり違ってくる。今の社会保障はご承知のように、経団連会長にも年金を渡していて、本当に必要なところに行っていない代わり、不必要なところに行ってしまっている。若い人に『増税やむなし』と理解してもらうのは、おかしい。まずは目標を決めて『この期間で1割削減する』というプランになってほしい」

 一方で、リディラバ代表の安部敏樹氏は、松川氏の回答に「非常に不誠実だ」と指摘。「やっぱり増税しなければダメではないか。風見鶏のように『“増税しない。他のことがある』ではなく、正面切って増税の話はするべきだ。風見鶏にやってきた政治の積み重ねが現状なのではないか。余剰分の社会保障の話をせずに『国債でいけるかな』は違うと思う」と意見を述べた。

 松川氏は「別に逃げているつもりは全然ない。増税の品目についての議論だが、その前にまだやることがあるし、タイミングもある。少し先走っている気がしたから、申し上げただけだ」とコメント。

 竹中氏は「経済は生き物だ」と指摘。

「財務省の人はこれを絶対に言わないし、政治家の皆さんもほとんど触れてくれないが、2002年から2007年までの5年間、日本の基礎的財政収支は増税せずにほとんど黒字になった。歳出にキャップをはめて、それで構造改革して経済を活性化させれば、税収は上がっていく。これが普通の財政運営の仕方だ。これを今ちゃんとやっていない」

「先ほど松川さんは『1兆円を削るのは大変だ』とおっしゃったけれども、黒字になった当時は毎年7000億円くらいずつ削っていた。だからできるはずなのに、最近はそれをやっていない。経済は生き物で、財政はその中の重要な一部。まず、歳出削減の中身について議論をして、その上で増税の話をするならいいが、その話が一般論しか書かれていなくて『税目はたくさんある』というと『増税するのではないか?』とやはり思ってしまう」

 一方で、増額した防衛費を何に投じていくのか、優先順位を含めてどのように考えているのだろうか。

 松川氏は「北朝鮮や中国、ロシアは、みんな弾道ミサイル防衛システムでは捕捉しきれないタイプの極超音速のミサイルを開発している」と話す。

「継戦能力も必要だ。なぜウクライナがロシアと9カ月戦えているか。侵略されずに押し返すことができているか。それは西側が武器を供与し続けているからで、弾が切れたら終わりだ。量だけで対抗するのはなかなか難しいが、量も必要ではある。例えば、中国の国防費は公表数字で今25兆円だ。今は日米同盟があるから一国で考える必要はないが、GDPも中国は日本の2.7倍ある。ここから先、要するに相手と量で戦うのではなく、ドローンや無人機、サイバー攻撃技術などを阻止するための非対称な能力が必要だ。民間技術が防衛に生かされないといけない。そのためには研究開発費がめちゃくちゃ重要だ」

 自衛隊員の不足も指摘されている。防衛省によると、24万7154人の定数に対し、実員は23万3341人。現状、1万3813人の自衛隊員の不足が生じている状況だ。

 松川氏は「待遇を良くしたら若い志望者は増えると思う」と回答。

「もう一つは自衛官の地位を上げる。例えば自衛官に転職したら、高い給料がもらえるくらいの、そういう処遇や誇りのある仕事にしていかないとダメだ。お給料もそうだし、ボロボロの隊舎や官舎もいっぱいある。こういうところをまず変えていかないといけない。本当の意味で実際に戦ってくれるのは人間だ。もちろん無人機などもあるが、それを使うのも含めて、人間が本当に重要なところだと思う」

(「ABEMA Prime」より)