U−17日本代表に見る、若年代の“バルサ化”を手放しで喜べない理由とは?
逸材と言われたボージャン・クルキッチ(現アヤックス)やガイ・アスリン(現エルクレス)の現状を見れば一目瞭然。バルサのトップチームにいればそれなりの活躍ができたかもしれないが、今は欧州サッカー界のメインストリームからは外れている。もしシャビがキャリアの半ばで他のクラブに移籍し、そこでは中盤をフラットにした4−4−2の布陣がもっぱら採用されていたとしたら、どうなるだろうか。今のような稀代のゲームメーカーに成長していなかった可能性が高い。
バルサのカンテラーノと対極にあるのが、ライバルであるレアル・マドリードの下部組織出身者たちだ。“銀河系軍団”と呼ばれるトップチームはまさに狭き門だが、彼らの中には他のクラブに新天地を求め、才能を大きく開花させた選手が驚くほど多い。ロベルト・ソルダードやアルバロ・ネグレド、フアン・マタ、アルバロ・アルベロアなど、スペイン代表の主力に上り詰めた選手も多数いる。彼らはカンテラ時代に様々なスタイルを体験しているため、それぞれ異なる道に進む中で新たな戦術に自分をアジャストさせ、たくましく成長を遂げている。
バルサのサッカーは確かに魅力的で理想的なスタイルだが、その追求に固執しすぎるのは危険が伴う。“外の世界”に出て様々なスタイルに触れた時、そこにうまく適応できるかどうかは、若年期にどれだけ幅広い経験を積んだかによって決まる。ショートパスを繋ぐだけではなく、自陣を固めるのも、前線にロングボールを蹴って一気に走るのもサッカーだ。様々なスタイルを身に着けておくことは、自身の可能性が広がることを意味している。
文●池田敏明
大学院でインカ帝国史を専攻していたはずが、“師匠”の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。専門誌の編集者を経験したのちにフリーとなり、ライティングの他に編集、スペイン語の翻訳&通訳、カメラマン、そしてなぜか動物番組のロケとジャンルを問わないユーティリティー性を発揮する。中南米サッカーとジャングル探検をこよなく愛する一方、最近は“育成”にも関心を持ち始め、試行錯誤する日々を送っている。
