高市総理の「首脳会談」呼びかけに「日本の狂態」と応じた北朝鮮の思惑
一読すると、ありがちな“反日プロパガンダ”に見える。だが、時期を考えると、そこには別の含意が浮かぶ。
ところが、その直後に飛び出したのが、北朝鮮側の「日本の狂態」論評だった。
注目すべきは、論評が高市首相を名指ししていない一方で、誰を批判しているのか隠そうともしていない点だ。
論評には「現在の日本執権者は『戦後最も厳しい安全保障環境の中で抑止力を高め、紛争発生を未然に防止する』と強弁した」とある。この表現は、高市首相が「防衛装備移転3原則」改正を説明した際の発言をほぼそのまま引用したものだ。
つまり、名前を出さない“実質名指し”である。
北朝鮮外交に詳しい関係者の間では、こうした表現は「窓を閉め切らない拒絶」のサインと解釈されることが少なくない。北朝鮮が相手国指導者との関係を完全に断つ場合、「反共和国敵視政策の首魁」「対決狂信者」といった人格攻撃を伴う露骨な表現が増える。今回はそうではなく、あくまで政策批判にとどめている。
では、なぜ今なのか。
最大の違和感はタイミングにある。
問題の「防衛装備移転3原則」改正は4月だ。北朝鮮が本気で反発するなら、普通は直後に声明が出てもおかしくない。しかし実際の論評公開は約1カ月半後。しかも、高市首相が首脳会談に言及した直後だった。
偶然と見るには、あまりに出来過ぎている。
北朝鮮の意図をあえて俗っぽく言えば、「会談したいなら、まず日本側が頭を下げろ」という“値踏み”に近い。
日本が対話を求めるタイミングで、「軍事大国化」「兵器輸出」「台湾有事介入」といったカードを並べ、「そんな相手と簡単に会う理由はない」という理屈を内外に示す。交渉前に相手の政治的コストを高め、自らを優位に置くのは、北朝鮮が繰り返してきた常套手段だ。
(参考記事:北朝鮮の金与正氏が”個人的に”高市首相を拒絶「旧態依然とした思考」)
北朝鮮は現在、ロシアとの軍事協力深化を背景に一定の外交余裕を得ている。一方で、慢性的な経済難や制裁疲れという現実も抱える。金正恩政権が日本との関係改善を切望している様子は見えないが、地政学的にも「対話カード」を完全に捨てる合理性は乏しい。
だからこそ、高市政権への最初の返答は「NO」ではなく、「簡単には会わない」という価格交渉だった可能性がある。
「対話をしたいなら、代価は何か」
平壌から聞こえてくるのは、そんな冷徹な計算の音かもしれない。
