「超知能AIが誕生し、人類は議論する間もなく絶滅します」シリコンバレーAI研究者の諦めに近い警告
もはやアップデートに追いつくのが難しいほど、AIの進化が加速している。待ち受けているのは破滅なのか。驚愕の書の著者が警告する。
「一般公開できない」ほど強力なAIが登場
〈人工超知能がつくられたら、地球上のすべての人が必ず死ぬだろう。これは誇張ではない。(中略)人類絶滅という致命的結果は避けられない〉
衝撃的な言葉から始まる本が各国でベストセラーとなっている。邦訳版も発売された『超知能AIをつくれば人類は絶滅する』(早川書房)だ。
著者のひとりがアメリカのAI研究者、エリーザー・ユドコウスキー氏。彼はChatGPTなどが影も形もなかった'00年代から、人工知能の危険性を説いてきた。OpenAI創設者のサム・アルトマン氏らとも親交があり、シリコンバレーで多大な影響力を持つ人物のひとりである。
今回、ユドコウスキー氏が日本のメディアで初めて、本誌の独占取材に応じた。
―アンソロピックの新しいAIモデル「ミュトス」が、サイバー攻撃の性能が高すぎるために一般公開を見送られたことが大きな話題になっています。ミュトスは人間の能力を完全に超える「超知能AI」だと言えそうでしょうか。
「アンソロピックの発表によれば、研究者がミュトスを使用すると、使わない場合と比べて4倍の効率を発揮するとのことです。いまのところは『なんだ、4倍か』と思うかもしれません。しかし、その次のバージョンではどうなるでしょうか。さらにその次のバージョンは……?
現在のAIと半年前のAIを比べても、性能の差は歴然です。誰もAIがこれほどの速度で進化するとは想像していませんでした」
AIがより賢いAIを繰り返し構築するようになる
―ミュトスは現在アップル、マイクロソフト、グーグルなどアメリカの巨大企業だけが防御目的で利用できます(プロジェクト・グラスウイング)。高性能なAIへのアクセスを一部の企業や人物に限るのは正しいでしょうか。
「正しいとは思いませんが、アンソロピックも板挟みの状態でしょう。もし全機能を一般公開して、誰かがインターネットをダウンさせたら、彼らが責められる。しかし一方で、OpenAIが先日公開したばかりのGPT−5・5など、今後は競合他社の高性能なAIを悪用して、政府や企業を攻撃するハッカーが現れるおそれもある。その対策を事前に練るには、ミュトスを使うしかないでしょう。
アンソロピックは難しい立場に置かれていますが、少なくとも警鐘は鳴らしました」
―プロジェクト・グラスウイングのような試みは、人類の破滅を防ぐために有効だと思いますか。
「ほとんど無意味です。
高性能なAIの問題点は、もはや『人間が手に取って使う道具』ではなくなるということです。AI自体が知性を持ち、独自の欲求を持つようになる。例えるなら、私たちはいま、自分たちよりはるかに賢くて強いドラゴンを育てているようなものです。一人一人が自分専用のドラゴンを飼うとして、すべて命令に従わせられると思いますか?」
―確かに、各社のAIはかなり高性能になっています。でも、まだ「超知能」を獲得したとは言えないですよね。
「X(旧ツイッター)などSNSでは、もう人間はAIに凌駕されていると感じます。人々が議論を交わすとAIが登場し、人間より分かりやすく物事を説明してくれる。
重要な問いは、『AIがAIの研究開発を行えるようになるのはいつなのか』ということです。そのとき、再帰的な自己改善が始まる―すなわち、AIがより賢いAIを繰り返し構築するようになる。その過程では、超知能が実現したか否か議論が交わされるかもしれません。しかし最終段階、つまりAIがあらゆる面で人類を超える瞬間には、私たちは議論をする暇もなく滅びるでしょう。おしまい(End of game)です」
【後編を読む】「もうすぐ人間が『時代遅れ』になる日がやってきます」超人工知能に警鐘を鳴らすAI研究者が予告する「人類滅亡の瞬間」
「週刊現代」2026年5月25日号より
【つづきを読む】「もうすぐ人間が『時代遅れ』になる日がやってきます」超人工知能に警鐘を鳴らすAI研究者が予告する「人類滅亡の瞬間」
