今季11点目を挙げてMOMに選出された後藤。試合後の取材エリアではベルギー記者団の質問攻めに遭った。写真:中田徹

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 シント=トロイデン(STVV)のエースストライカー、後藤啓介が4月24日、アンデルレヒト戦で今季11ゴール目を記録した。2月15日のズルテ・ワレヘム戦(3−2で勝利)以来、2か月ぶりのゴールだった。チームは2対0で勝利。3位STVVは4位アンデルレヒトとの勝点差を一気に5まで広げた。
 
「(伊藤)涼太郎くんが持った時に顔が上がった瞬間、来るなと思ったので、あとは相手との駆け引きにしっかり勝てた結果のゴールだと思います」

 今季、ベルギーリーグの台風の目となったSTVVだが、レギュラーシーズン第29節のヘンク戦(1−3で敗北)からプレーオフの3節のヘント戦(0−0で引き分け)まで1分4敗という不振に陥っていた。その間、後藤は「俺にクロスが上がれば得点できる」、伊藤は「(交代させられて)納得いかない。自分があと10分、ピッチに残っていれば決定的な仕事ができたのに」と忸怩たる思いを抱えていたが、アンデルレヒト戦では両者が至極のプレーを披露。伊藤の素晴らしいクロスに対し、後藤が長いリーチを目いっぱい伸ばして爪先に当て、そのシュートはスローモーションのようにゴールに吸い込まれていった。

 この夜、最後までピッチに立ち続けた伊藤は後半アディショナルタイムに、アンデルレヒトの最終ライン背後を突くスルーパスで、メルレンのダメ押しゴールをプレアシスト。放映局「DAZN」は85分間プレーした後藤を、ネットメディア「スポルツァ」はフル出場した伊藤をマン・オブ・ザ・マッチに選出。有言実行のダブルエースが結果を残し、GK小久保玲央ブライアン、DF谷口彰悟を軸とする守備陣も堅い守りでクリーンシートを達成した。後藤は「自分にとっても、STVVにとっても、2026年のベストマッチに近かったと思います」と力を込めて言った。
 
 コーチングスタッフと話し合った時、後藤は「しっかりボックス内にいるように」と言われたことを意識し、それをゴールに結びつけたのだという。それでもアンデルレヒト戦でも後藤はピッチ上を幅広く走り回り、ときにはサイドバックのカバーをすることもあった。得点シーンでも、まるでセントラルMFのように中盤でスライディングタックルを敢行し、そのこぼれ球を味方が拾ってからSTVVはカウンターを発動し、最後は伊藤→後藤のホットライン貫通でゴールネットを揺さぶった。チームのために自分ができることは何か? そのことを自身に問いながら攻守に駆け回る191センチの異質な長身ストライカー、それが後藤啓介なのだ。

 かなり感情を素直に表現する。プレーオフで初めて勝利したこと、保有元のアンデルレヒトにようやく勝利したこと(レギュラーシーズンでは1分1敗)、しかも自身のゴールで勝利したことで、タイムアップの笛が鳴ると、両チームが健闘を称え合っているなか、後藤はバックスタンドの観衆に向かって喜びを爆発させた。アンデルレヒトの左SBアウグスティンソンは後藤に激しく詰め寄り、それを合図にしばらく両チームが揉み合った。STVVの番記者のひとりは「もう二度と啓介がアンデルレヒトがプレーすることはないな」と呟いた。

「6番と何があったのか」と尋ねると後藤は「『お前は帰ってきたくないのか』と言われた。俺は英語で何も言ってませんが、もう(アンデルレヒトに)帰るつもりもないですし、次のステップはドイツなのかなと思ってます」と答えた。
 同じことはベルギーメディアも聞きたがっている。日本メディアの取材対応中、彼らの目には「早く俺たちに啓介の話を聞かせろ」というギラつきがあり、いつものミックスゾーン(スタジアムのインタビューエリア)とは異質の雰囲気が漂っていた。それでも型通り、彼らはゴールの印象、アンデルレヒトに勝った思いを尋ねてから、本題の「最後、相手の6番と揉み合っていたようだが」という質問が飛んだ。