今回のオイルショックで日々高まる《日本の食糧危機》の可能性「トイレットペーパーパニックより恐怖」

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半世紀前のようなパニックを避けたい――政府は原油高の悪影響を抑え込もうとするが、危機が長期化すれば、再びショックが列島を襲う。

【前編記事】『70年代とは大違い「令和のオイルショック」が引き起こす過去最悪のシナリオ…「モノの値段が上がる」だけじゃない』よりつづく。

「肥料が無くなれば」日本は終わる

ナフサやメタノールの供給が細れば、特に深刻な影響を受けるのが医療分野だ。点滴や透析用のチューブ、ゴム手袋などの医療資材がなくなり、包装資材や原料不足で医薬品の供給も滞る。最悪の場合、医療機関がストップすることも考えられる。

介護現場も混乱する可能性がある。紙おむつの品薄が予想されるためだ。経済評論家の鈴木貴博氏が指摘する。

「紙おむつに使用されている吸水性樹脂は石油由来の製品であり、原油高の局面で品薄になる可能性があります。すでに素材大手の三菱ケミカルは吸水性樹脂の原料を値上げしています。介護施設で紙おむつを布おむつに切り替えるのは現実的ではなく、仮に切り替えたとしても、洗浄に必要な洗剤も石油由来のため、入手困難になります。八方塞がりになりかねません」

何よりも恐ろしいのは、今回のエネルギー危機が長期化することで、日本も食糧危機に陥ることだ。政策研究者で早稲田大学招聘研究員の鈴木崇弘氏が警告する。

「食糧危機の起点となるのは肥料です。日本は化学肥料のほぼ全量を輸入に依存していて、その中心である窒素肥料は天然ガスから作られています。つまり、ホルムズ海峡の封鎖が続くと、石油だけでなくLNGの供給も揺らぎ、肥料そのものが作れなくなります。実際、イラン戦争の影響で肥料価格はわずか1週間で約4割も上昇しました。

問題は時間差です。春の作付けは在庫でなんとか乗り切れても、秋の作付け用の肥料を確保できなければ、野菜や穀物の収穫量は確実に落ちていきます。さらに飼料も輸入に依存しているから、畜産にも波及します。結果として、国産の野菜穀物乳製品が静かに枯渇していく。島国の日本にとって一番恐ろしい事態です」

SNSのせいで“パニック”が加速する

混乱が長期化することで、日本国民の生活もどんどん苦しくなっていきそうだ。

「生活者の視点で最も深刻なのは、食料と電気代の値上げです。食料品については、すでに10%のコスト押し上げ圧力がかかっています。そのうち5%が価格に反映されると、年間で100万円以上を食費にあてる一般的な家庭では、5万〜6万円の支出増になる計算です。

電気代については、燃料費調整制度の仕組み上、過去3ヵ月分のコストが2ヵ月後に反映されるため、夏場にかけて危機的な状況になっていくでしょう。このまま資源高が続けば、1世帯あたり、月1500〜2000円の値上がりは避けられません。冷房の使用が不可欠な夏場に負担増が重くのしかかることになります」(未来調達研究所の坂口孝則氏)

ここ数年来の物価上昇で家計の節約はもはや限界に達しているはずだ。これ以上の値上げが予想されると、人々は我先に物品を確保しようと店先に走る可能性がある。

経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦氏が先行きを憂える。

「私が一番警戒しているのは供給不足よりも、パニックです。オイルショックのときにトイレットペーパーがなくなったようなことが再び起きるのではないかと心配しています。あのときも実際にはトイレットペーパーが不足したわけではなかったにもかかわらず、なくなるのではないかという不安が一気に広がったことで、品不足を引き起こした。いわば『予言の自己成就』というものでした。

現代はさらにこの構造がSNSによって強化されています。SNSで『無くなる』という情報が流れた瞬間に、人々が一気に動き出す。そうすると、本来は足りている商品でも一気に市場から消える。コロナ禍のときのマスクと同じことが、より広範な商品で起きるかもしれません」

誰しも「生存戦略」を考える時がきた

振り返れば'20年のコロナ禍以降、スエズ運河での座礁事故、ロシアのウクライナ侵攻、トランプ関税、そして今回のホルムズ海峡危機など、グローバルなサプライチェーンを脅かす事態が毎年のように生じている。

「もはや、平時と有事を区別すること自体が難しくなるほど、混乱が続いています。経済的には有事が常態化していると認識すべきでしょう。その前提で生存戦略を考えることが重要です。

とはいってもできることは限られています。準備をするなら、命や生活の質に関わる最低限のモノに絞って、現実的な『4ヵ月分』を目安に備えるのが賢明です」(物流ニュースサイト『LOGISTICS TODAY』編集長の赤澤裕介氏)

まずは落ち着いて、自宅にあるストックを確認することから始めよう。

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「週刊現代」2026年4月27日号より

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