上場間近の「スペースX」に投資家が大注目…需要が高まり続ける「宇宙開発の現在地」

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スペースXの上場が間近に迫る

現在、米国と中国を筆頭に、世界の主要国の間でロケット打ち上げ競争が激化している。イーロン・マスク氏率いる米スペースXは、今のところ赤字が続いているものの、ロケットの打ち上げペースは加速している。すでに同社は上場申請の手続きを進めていると報じられており、今年6月に上場するとの見方は強い。

世界全体では、様々な用途のロケットが大幅に不足している。その背景には、いくつかの要因がある。

まず、世界経済のデジタル化がロケット需要を押し上げた。通信速度の向上のために、複数の小型衛星を一体化して運用する必要性が高まっている。

また、AIの性能向上もロケットの需要増加要因だ。AI開発の激化により電力需要は急増している。特に、データセンターのサーバー冷却のための電力を、いかにして賄うかは重要課題だ。

問題解決に向け、イーロン・マスク氏などは“宇宙データセンター構想”を提唱した。宇宙でAIデータセンターを運営できると、消費電力は太陽光などで賄える可能性がある。電力不足懸念が解消に向かう可能性は高いと言われている。

さらに、イラン戦争も、ロケット打ち上げの追加的な増加要因になった。

この戦争は、人類史上初めてのAI戦争だと言われている。AIで作戦をシミュレーションし、攻撃目標を策定するため、ロケットで打ち上げた衛星が敵の情報を収集、送信するデータ活用の重要性は高まった。ドローンを活用した安全保障体制の整備の点でも、ロケット打ち上げ回数は世界的に増えるはずだ。

世界のロケット打ち上げは、経済面だけでなく安全保障体制においても重要性が高まっている。激化するロケット打ち上げ競争にわが国がいかに対応するのか、中長期的な経済状況に大きな影響を与えるだろう。現在の宇宙開発政策のままでは、米国、中国など海外との差を縮小することは難しい。

世界のロケット業界の現状

ここ10年間で、世界のロケット打ち上げ件数は急増した。

ロケット打ち上げの目的は、主に通信衛星の打ち上げにある。内閣府の宇宙開発戦略推進事務局によると、2018年の世界のロケット打ち上げ件数は85件で、昨年は316件だった。内閣府では、軌道投入用ロケットの打ち上げ成功のみカウントしている。

国別にみると、米国は192件、中国は91件、ロシアは17件だった。わが国は3件とインドより少ない。

過去にも、有力国が宇宙開発を競った時代はあった。1950年代後半から70年代にかけて、旧ソ連と米国はロケット打ち上げを競った。スプートニク計画を開始したソ連を追い抜くため、米国は有人宇宙飛行計画“マーキュリー計画”などを実施した。

象徴的だったのは、1961年のケネディ大統領の発言だ。議会演説で「いつ我々が世界トップに立てるか保証はできないが、(ロケット開発などの)努力をしなければ最下位になることは確実」と述べた。この考えは依然として有効だ。

今のところ、米国は宇宙開発で世界トップを走っている。

米国では、イーロン・マスク氏率いる民間企業“スペースX”が“ファルコン9”などのロケット打ち上げを急増させ、“スターリンク計画”を推進中だ。2025年、世界のロケット打ち上げ数に占める、同社のシェアは52%だった。スペースXは早ければ今年6月に上場するとの見方は強く、将来性に期待する投資家は少なくない。

ほかにも、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏の“ブルーオリジン”は、再利用可能な大型ロケットの“ニューグレン”を打ち上げた。米国などの宇宙開発競争は、国家が主導したものから、民間が積極的に関与する体制にシフトしている。

アメリカを猛追する中国勢

現在、米国を猛追しているのが中国だ。

中国の宇宙開発戦略の特徴は、政府主導で宇宙開発の基盤を構築し、そこに民間企業の参画を取り込んでロケット打ち上げなどを増やしていることにある。米国が民間企業主導であるのに対し、官民結合型との見方もできる。いずれにしても、国家主導だけでロケット開発、打ち上げなどを進めている状況とは異なる。

小型の衛星を結合して通信能力などの向上を目指す、スターリンク計画に対抗する計画の一つとして、中国は“国網”と呼ばれる政府主導の衛星システム計画を推進している。同計画は、少なくとも約1万3000機の衛星を運営し、6G通信など次世代高速通信技術の確立につなげる考えだ。

2021年には、国網計画の国策企業である“中国衛星網絡集団”を設立した。同社は、中国航天科技集団などと連携してロケットの打ち上げと衛星運用を進めている。

国網計画には、民間企業(混合所有も含む)も積極的に関与している。

ロケットの開発では、藍箭航天(ランド・スペース)が世界初のメタン燃料ロケットの朱雀2号を打ち上げ、軌道到達に成功した。天兵科技(スペース・パイオニア)などの民間企業も、政府の支援をとりつけて低コストのロケット研究・開発に取り組んでいるようだ。

中国の侮れない実力

試算すると、2024年、米国は中国より2.3倍多くロケットを打ち上げた。昨年の米中の差は2.1倍(米国が192件に対して中国は91件)に縮小した。

中国では、衛星開発企業も急成長している。

2016年設立の銀河航天(ギャラクシー・スペース)は、公称、3日に1基のペースで小型衛星を製造している。このスピードは、スペースX(週45基、1日当たり6.4基)を下回っているようだ。

しかし、その実力が低いとみるのは適切ではない。同社の能力は、1990年代に米国の衛星開発を主導したイリジウムのピーク時の生産能力(月間約6基)を上回った。中国の宇宙関連技術は急速に向上している。

では、なぜ各国はロケット競争を加速させているのか。

つづく記事〈宇宙開発に出遅れた日本で大化けするかもしれない「繊維メーカーの名前」…市場規模は驚愕の175兆円に〉で、詳しく解説する。

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